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「世界と世界をつなぐもの」第2話 ②

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 私は美羽に手を振った。
「美羽? どうしたの?」 
「青葉~! は~い、これ! とうとう来週から始まるからね!」と、美羽は笑顔で私に一枚の紙を渡してくる。

『次年度学園祭テーマについて』

という表題。

 確かに昨年、欠員補充で臨時の学祭実行委員として活動をした。でもそれは昨年だけの話のはずだ。
「私、前の学祭の助っ人だよ? 3年生の送別会まではいた方がいいと思っていたけど、今度のには関係なくない?」
 
 『友達が実行委員長でさ、何とかしてほしいって頼まれたんだよ。今年だけ頼む!』
 そうセンチョーに言われて、その時は渋々引き受けた。昨年の学祭の終わりには、
———来年もやってもいいかな?
……なんて思ったりもしたが、時が経てば過去の話だ。

「え? だって長谷川さんが言ってたよ。『桜小路は欠かせない戦力だから今年も手伝ってもらうことになった』って」
 美羽の上に疑問符が3つくらい見えるようだった。

 美羽の言う『長谷川』とは、長谷川瞬太はせがわしゅんたという名前の前学祭実行委員長のことだ。

 ということは……。
 2人の間ではもう取引が成立していたに違いない。
 それなのに、私は知らされていない。
 センチョーは私に断られるのが怖かったのか?
 それともある日、突然言うつもりだった?
 問い詰めなければならない。
 

「学祭のときの青葉、マジヤバだったもんね! 青葉のお陰であの忙しさを何とか切り抜けられたんだから。長谷川さんも……って、青葉聞いてる?」

 美羽、悪いけど今、私はセンチョーへの怒りが込み上げてきて、言葉が耳に入る状態ではないよ。

「センチョー、どういうこと?」
 逃げようとしていたのだろう。いつの間にか扉の付近まで移動していたセンチョーはビクッとした。
「え、何? なんのこと? どうかした?」

 典型的な『まずい』と思っている人のとぼけ方。

「学祭実行委員のことに決まってるでしょ? 去年だけって言ったよね?」
 私の言葉にセンチョーは明らかに気圧されていた。
「悪い!長谷川に頼まれてさぁ。『桜小路は働きが良いから是非来年もお願いしたい』って」
 必死の言い訳。手がまごまごしている。
「それで『いいよ』って言ったわけ? 私に無断で?」
「『俺はいいけど』って言っただけだよ。『桜小路に聞いてみて』って言った……はず!」
 少し目をそらし気味に発するその言葉には怪しさが漂っていた。
「私、聞かれてないよ。それなのにいきなり美羽がプリント持って来るわけないでしょ?」
 完全に言葉に詰まっている。それなのに強引に口を開いた。この期に及んで何をいうつもりか。
「でも『桜小路は学祭で楽しそうだった』って聞いたぞ。実は名残惜しいんじゃないのか?」

!!!

……まさか心情に語りかけてくるとは。

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