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「世界と世界をつなぐもの」第3話 ①

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【第3話 学祭テーマ】

 陰キャ全開の私が、なぜか前学祭実行委員長の長谷川さんからは高評価を得ている。

 なぜ?

 そんな疑問を抱えながら、美羽が持ってきたプリントに目を落としていた。
 学祭テーマはいつもみんなのアイデアを持ち寄って決めているらしい。

 『1人1つテーマを考えてくること』

 それが今度の会議までの宿題だ。
 会議が間もなく始まるのに、まだ決めていない。

 テーマかぁ……。

 そうは思いながらも上の空。プリントを見るたび、あのゆらぎを思い出す。
 考えに集中できないでいるとお馴染みの声が聞こえた。
「青葉〜、お待たせ〜」
 一緒に会議に行くために待ち合わせをしていた美羽の登場だ。
「ああ、私も今来たとこだから」
「それなら良かったぁ。ねぇ、学祭テーマ書いた?」
 現在の私の思考回路は『学祭テーマ』より『ゆらぎ』の方が勝っている。もうすぐ会議なのはわかっているけどスイッチが切り替わらない。
「それよりさ、このプリントをもらった日に揺れたのって何だと思う?」
「あれね! あの揺れって、花火の時のに似てない?」
「私もそう思ってた。やっぱそうだよね!」
「うんうん。でもさぁ誰に聞いても『知らない』って言うからおかしいなって思うんだよね」
 交友関係の広い美羽のことだから、色々な人に聞きまくったのだろう。それでもみんなが『知らない』というのか……。
 不思議というより違和感を感じる。
「なんで私たち2人だけ揺れを感じてるんだろ?」
 私が発したその問いに美羽も悩んでいた……と思ったら、
「う~ん……。あたしたち感受性が強いのかな?心が豊かというか」

 ———って、おい!!  ふざけんのかい!これは乗るしかないでしょ。

「せやね〜。私ら感受性の塊ですから」
「だね!」
「……ってちゃうやろ!」
 ノリツッコミに美羽は大爆笑。ちょっと嬉しい。
「でも今は会議でしょ。青葉、学祭テーマ書いたの?」

 ———ああ……現実に引き戻された。

「ううん、まだ。美羽は書いた?」
「え? まだなの? ヤバいじゃん! あたしは書いたよ!」
 私の手にある白紙のテーマ投稿用紙に美羽の視線が注がれいる。
「なんてテーマにしたの?」

 ———そうだ、美羽のアイディアをパクったらダメかな?

「え、聞きたい? 渾身のテーマだよ」
 自信があるのか、美羽は聞いてもらいたいみたいだ。
「聞きたい聞きたい」

 ———しめた! 教えてもらえる! 『偶然同じになった』でいいよね。

「教えてあげよう! あたしが考えたテーマ!」
「うんうん」
 美羽はバックの中からテーマ投稿用紙を出した。そして仁王立ちになって堂々と見せつけてくる。
 そこに書いてあったテーマは……。

『金網デスマッチ』

 美羽は生き生きした顔をしている。
「……なんで金網デスマッチ?」
「ノリ!」
 ドヤ顔の美羽。
「……ある意味美羽らしいよ」 
 さすが『感受性の強い人』は違う。
 多分インパクトの強い言葉を思いついて、そのまま書いたんだろう。
 まさに美羽らしい。
 本当に学祭テーマらしい言葉ならいざ知らず、『金網デスマッチ』が

 『偶然同じ意見でした』

は絶対にない。

 私の心は希望が閉ざされ、灰色の世界になった。

 私もこれくらい感覚的に書ければ楽なのに、色々考えちゃうんだよね。
 感覚的かぁ……。
 その時ふと思いついた言葉があった。

 ま、これでいっか。


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