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数学の文章問題を「解読」する

問題文

たかしさんの家から1.2km離れたところに郵便ポストがあります。たかしさんの弟は手紙を出すためにポストへ分速60mの速さで歩いて向かいました。弟が出発してから15分後に、たかしさんは弟がもう1通手紙を忘れていることに気付いて、分速190mの速さで自転車を踏んで追いかけました。その途中で手紙を出してすぐに引き返してきた弟と出会いました。たかしさんが弟と出会ったのは、たかしさんが家を出てから何分後かを求めなさい。

この文章題を解読します!

 まず数字的なものから解読していこう。
 家から1.2km離れたところに郵便ポストがある。恐らくこれが最寄りのポストであろう。日本の国土は約378000㎢。ポストの設置数は17万5145本(2022年調べ)なので、約2.16㎢に1つはある計算となる。2.16㎢の正方形を考えると、1辺の長さは約1.47km。最も遠い対角線で考えてみても、約2.08kmに1つのポストが存在する。家から1.2km離れたポストが最寄りなのであれば、日本の平均値よりも距離が長いと言える。これを平均と割合で試算すると、たかしさんの家は人口約39000人程度の市または町である。国道沿いにある程度の繁華街があり、駅周辺に旧市街地などが存在して、そこから少し離れると田んぼや畑、山や海などがある比較的田舎の方にあることが推察される。
 たかしさんの弟に注目してみよう。弟は、1.2km離れた場所に徒歩で向かおうとしている。これだけ離れたところに自転車などの交通手段を使用せずに行こうと考えているところを見ると、家に自転車がないか、自転車に乗る習慣がないかのどちらかであろう。
たかしさんが自転車で追いかけているので、家に自転車がなかったわけではない。だとすると、弟は自転車に乗る習慣がないのだ。1.2kmという、ある程度遠い道を歩いて行こうとする弟はおそらく小学校低学年である。
小学校では、3年生で交通安全指導講習があり、その講習を受けた後から自転車に乗ることが学校または親から許可される場合が多い。弟はその前段階であろう。しかし、「手紙を出す」というおつかいを頼まれる程度に信頼を受けていることから、未就学児とは考えづらい。つまり小学校1,2年と推察される。分速60mで歩いているという速さも、小学校低学年の平均歩行速度と合致するので、その可能性がかなり高いと言える。
それでは、兄のたかしさんはどうか。
①弟の年齢だけで判断するのは危険であるが、多くの場合、兄弟は年が2~3年ほど離れている。
②分速190mは時速11.4km。小学校高学年の平均は時速10~12kmであり、ほぼ合致する。
③低学年の弟がおつかいを頼まれているところを見ると、両親等は不在である。それなりに頼りになる人がいなければ、低学年の子供1人で留守番をさせるのは不安がある。その点から、たかしさんはそれなりに思慮分別がある年齢である。
①の観点から、たかしさんはまだ小学生であり、③の観点から小学校中学年ではないと類推。つまりたかしさんは、小学校高学年であろう。
②の観点がその類推を裏付けている。
ここまでをまとめてみると、
たかしさんは小学5年生、弟は小学2年生で人口密集地ではない比較的自然豊かな環境で生活している、と問題文から推測できることになる。
さて、年齢考察の時にも出てきたが、弟の歩行スピードは一般的なもので、特に急いでいるようではないし、道草しているようでもない、至って普通の歩き方だ。それは特に問題ない。
問題はたかしくんの自転車走行スピードだ。弟が1通忘れているのに気付いて追いかけたわりには、走行スピードは「一般的な小学校高学年の速さ」なのだ。ここに、「速く追いつこう」という意思は見当たらない。忘れ物をした人を追いかけるには不自然な行動だ。
①たかしさんは焦ってはいない。(自転車のスピードが通常より速くないから)
②手紙を忘れた弟にいら立ちを感じていない。(自転車のスピードが通常より速くないから)
③だが手紙を「どうでもいいもの」とは考えていない。(気付いてすぐに追いかけているから)
④「面倒くさいな」とも思っていない。(自転車のスピードが特別ダラダラしたものでもないから)
これら行動パターンから推測すると、
たかしさんは任務を淡々と遂行している、と考えられる。
たかしさんに課せられた任務とは何か?
それは手紙を出しに行く弟が無事手紙を出して帰って来れるかどうかを確認すること、だったのではないだろうか。
まず、小学校低学年の少年が「手紙を出す」という行動自体が異例である。よほどのことがない限り自分で手紙を出そうとは思わないだろう。しかも、ポストに投函するだけであることを考えれば、切手はすでに貼ってある。つまり親が用意していたものだ。
本当は親が仕事の行き帰りにでも投函すれば話が早いのにわざわざ子供に頼み、しかも自転車という交通手段を持っていない小学校低学年の弟に頼んだところから考えると、「はじめてのおつかい」的な任務を弟は受けたのではないか。しかし、弟だけでは心配だったので兄であるたかしさんが見守り役を課せられたと推察される。
弟が出発してから15分の間忘れた1通に気付かなかったところから考えると、たかしさんは弟が出かけるときに一緒にいなかった。部屋にいてゲームでもやっていたのだろうか。しかし1通忘れて追いかけたのが15分後であると認識していたことから、弟は出かける際に「行ってきます」などの挨拶をしていったのであろう。それにたかしさんは応答し「おお!気をつけてな」などと言いつつ時間を確認していたのだろう。もしかしたら、親に報告をするため、何分で弟が任務を遂行できるかの時間を計測していたのかもしれない。だからこの問題の答えとなる「何分で弟に追いつけるか」。これがたかしくんの最も気にしていたところなのだろう。
親に報告する手前、あまりタイムロスをさせたくはない。弟の評価が悪くなるのはかわいそうだ。
しかし、急いで行って息をハァハァさせながら弟に追いついたら、弟は「僕が忘れてしまったから…。お兄ちゃんごめんなさい。」などと思ってしまうだろう。
だから平然を装って
「お~い、1通忘れてたぞ~。」
とのん気な感じで持っていこうと考え、わざと普通に行ったのではないだろうか。
そうすれば、弟も大した失態ではないと考え、「はじめてのおつかい」を気分よくやり遂げることができるし、数分程度のタイムロスなら親も何とも言わないだろう。
このようなことから、報告の手前、何分で弟に追いつくかは気になるところではあるが、平然を装い何事もない普通のペースで進み、淡々と任務を遂行させたたかしさんの物語なのだと解読することができた。

以上を踏まえて問題文を作る

小学2年生の弟に「はじめてのおつかい」として、ポストに手紙を投函させる計画を立てた親は、そのお目付け役としてたかしさんに監視の任務を与えました。
たかしさんの家はのどかな田園風景が広がる自然豊かな立地なので、最寄りのポストまででも1.2kmも離れています。たかしさんの弟はまだ公道を自転車に乗って出歩くことを許可されていないので、手紙を出すために小学校低学年の平均的な歩行速度である分速60mの速さでポストへ歩いて向かいました。たかしさんは弟がもう1通手紙を忘れていることに気付きました。はじめてのおつかいを気分よく終わらせてあげたいと考えている優しい兄のたかしさんは、家の戸締りをして、弟が出発してから15分後にその1通を弟に届けるため、分速190mの速さで自転車を踏んで追いかけました。親への報告をする関係上、弟が出発した時間をメモしていたたかしさんは、自転車の出発時刻も正確に把握することができました。本当はもっと飛ばして追いかけたいところなのですが、急いで追いかけてゼェゼェした息で弟に会ってしまったら、弟が自分のミスを重く受け止めてしまうかもしれないという配慮で、平然を装うことにしました。だから自転車も普通の速さで漕いでいくことにしたのです。弟が適度な時間のうちにおつかいできれば、数分くらいの遅れは何の問題もありません。そして、たかしさんは途中で手紙を出してすぐに引き返してきた弟に涼しい顔で出会うことができました。たかしさんが弟と出会ったのは、たかしさんが家を出てから何分後かを求めなさい。

と、こういう問題文になります。笑
これを小説調に書けば、国語と数学の融合問題もできそうです。
こんな想像をしながら数学の問題を考えるのって、私よくやってたんですよねー。本当の解答をしないで横道にそれてばかりで。
皆さんはこんな想像したりしませんでしたか?

本来の問題の解き方(ついでに)

戻ってきた弟と出会う時間を知りたいのですから、弟の戻りだけを考えましょう。
弟は分速60mで進んでいます。たかしさんが家を出たときには15分経っているので、
60×15=900
弟は900m進んでいます。同じ速さでポストまで進むと、
残りの距離 1200―900=300(m)
となるので、ポストまでの残りの距離を進む時間は
300(m)÷60(m/分)=5(分)


つまり、たかしさんが家を出発して弟と出会うまでの時間をx分とすると、弟がポストに投函してからたかしさんと出会うまでの時間は(x-5)分となります。

たかしさんは分速190mでx分進んだので、進んだ道のりは
190xm
弟は分速60mで(x-5)分進んだので、進んだ道のりは
60(x-5)m
2人の進んだ道のりを合わせると1200mになりますので
190x+60(x-5)=1200

x=6

よって6分後が答えになります。

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