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独占インタビュー!話題の言葉の魅力に迫る!

記者:本日はよろしくお願いします。

ヤバい:お願いします。

エモい:お願いします。

記者:今回は史上初の試みである「言葉」へのインタビューということになりますが、いかがでしょうか?

ヤバい:初めての経験すぎてヤバいですね。

エモい:たしかに。こうなるとは思ってなかったんで、なんというかエモいです。

記者:さて、まずはお二人の生い立ちについてお聞きしてもよろしいでしょうか?

ヤバい:はい。俺が生まれたのは結構前で、江戸時代です。

記者:それは長生きですね。

ヤバい:はい、ヤバいでしょ?その頃は形容動詞として「やばなことをしでかす」みたいに使われてました。法に触れるとか危険とかいう意味がありました。

記者:昔から同じような意味で存在したとは驚きですね。

ヤバい:はい、ヤバいです。

エモい:私は生まれた時期とかはあんまり覚えてなくて、でも英語の「emotional」が語源となってるらしいです。

記者:感情的な、という意味ですね?

エモい:はい、エモいって意味です。ただ一説によれば1980年代のアメリカで広まってたロックミュージックのジャンルで「Emo」ってのがあって、そこからとも言われてます。

記者:「Emo」というのはどのような音楽なんですか?

エモい:感傷的だったり情緒的だったりで心情を吐露するような音楽らしいです。まあ、エモいってことですね。

記者:そうなんですね。では続いて、お二人の最近のご活躍についてもお尋ねできればと思います。

ヤバい:そんな活躍してますかね?(一同笑う)

記者:してますよ。あちこちでよく名前聞きますし。

エモい:そんなエモいこと言わないでください。

記者:すみません(笑)。でもヤバいさんについてはすでに広辞苑にも載っていますし、もはや一般語と言っても過言ではないですよ。

ヤバい:それはヤバい。最高の褒め言葉です。

エモい:いいなぁ。私はまだ広辞苑に載ってないんで。早く私もエモい言葉になりたいです。

記者:でも2022年にはとうとう新明解国語辞典に名前が載っていましたよね?それだって十分立派なことですよ。

エモい:それは確かにエモかったです。私も最初に載ることを知ったときは「エモっ!」と思ってお母さんに電話かけて、「エモいことが起こったよ!」って報告しました。

ヤバい:ヤバっ!

記者:お母さんもさぞかし喜んだことでしょう?

エモい:はい。「エモいね」って言ってくれました。

ヤバい:それはヤバいね。

記者:とても感動的ですね。

ヤバい:ほんとにヤバいね。

エモい:はい、エモいです。

記者:では続いて、お二人の今後の目標についてお聞きしてもよろしいでしょうか?

ヤバい:はい。俺はやっぱり国会とかにも進出したいです。

記者:政界進出ということですか?

ヤバい:やっぱり政治家とかの口から出るところ見てみたいじゃないですか。これ、ヤバい。

エモい:そんなこと言ってるとまたアンチがうるさいよ。

ヤバい:それ言うのヤバいって(笑)。確かに俺に対する一定数のアンチいるけど。

エモい:それは私も一緒だから。だいたい新参者なんてそんなもんだよ。言葉っていうのは、いつも最初は批判を受けるものだよ。

記者:お強いんですね。

エモい:まあ強いっていうか、当たり前のことっていうか。でも言葉は時代と共に移り変わるものだし、古いものを守り抜くよりは変わりゆくものを愛してもいいんじゃない、その方がエモいんじゃない、とは思うね。

ヤバい:ヤバ、めっちゃ良いこと言うじゃん。

エモい:私だってたまにはエモいこと言えるんだから(笑)。私みたいな言葉でも多様性を認めて、世代を問わず飲み込んでいける世の中を作ること、それが私の目標ですかね。

記者:ありがとうございます。では最後に、何か一言あればどうぞ!

ヤバい:ヤバい、何も思いつかない(笑)。

エモい:それはヤバいね。

記者:確かに、ヤバいです。


『週刊ことのは』六月号掲載より抜粋

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