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安いテンプレデザインでビジネスを行う弊害を啓蒙して本当のデザインの価値を伝えるべき

近年、ある程度のかっこいいデザインがネットでお安く、または無料で手に入る時代になり、そのお安いデザインを「よし」とするデザインの重要性のことがあんまりわかっていない人たちが大勢いるようです。

「その曲線の角度を右に1ミリ動かそうが、動かすまいが、どっちでもいいよ。どっちもかっこいいから。デザインなんてその程度でいいんだよ。」という人は昔から大勢います。デザインはお金がかかるもので、〝腕の良いデザイナーに作っていただくもの”でした。だからデザイナーも職人として熱心に腕を磨いていました。しかし今はそれが安く簡単に手に入ってしまうために、「そこまでハイスペックなデザインは必要ない」という人達と「そこまでかっこいいデザインを作れなくても仕事発注サイトで割と喜んでもらえてお小遣いも稼げるぞ」というデザイナーの需要と供給バランスが成立してしまっているのです。
加えて言えば、デザイナーではないけどイラストを書くのが好きな主婦や素人が小遣い稼ぎに参入しており、ますますデザインの価値が見えにくくなってしまう危機を感じています。

もちろん、自由経済なので需要と供給が成り立っている市場に対してとやかくいうつもりはありません。安くてもそこそこおいしい吉野家の牛丼があったっていい。世の中の飲食店が全て高級フランス料理店や高価な専門店にならなくたっていい。お金がない人はスーパーの390円の激安のり弁を食べててもいい。自由ですよ。砂糖たっぷりのコーラをがぶ飲みしてもいいし、コスト削減のための添加物たっぷりの加工食品を食べたっていい。安いし、そこそこうまいしね。

でもそんな加工食品の恐ろしさを訴える人たちもいます。医者や母親の市民団体、栄養士の健康のプロの人たちです。そんなものを大量に食べていると病気になるよ、子どもがキレやすくなるよと啓蒙活動をしています。自由は尊重されるべきですが、社会にとって、人の暮らしにとって脅威となるものは啓蒙していくことも必要です。

一方で「思想のない形だけのロゴマークを使っていてはビジネスはうまくいかないよ」などと啓蒙活動を行なっているデザイナーはいるのだろうか?
企業の個性をどこにでもあるようなテンプレートの類似品で形取っていてもブランドはできないとか、著作権侵害すれすれのパクリデザインを使用することは経営的リスクがあるとか、原価が3000円のものを5万円で売る非適正価格のビジネスモデルで手に入れたデザインを命かけて行うあなたの事業に使うことの精神性だとか、そういう事をプロのデザイナーが社会に啓蒙していくことは真っ当な経営者に対しての誠意だと思っています。

高価格な専門店が吉野家と対抗しようとはしないのと同じように、料理人としてのプロ意識を持ち、違いのわかる本物のグルメ客に喜ばれて長年ご贔屓さんに支えられるようなお店のような、そんなプロのデザイナーを目指したいですよね。

ここでは吉野家を揶揄するつもりはありません。僕も好きでたまに無性に食べたくなりますし。吉野家は外食ビジネスとしては素晴らしいと思いますが、料理人かといえばちょっと違いますよね。そもそもコンセプトとターゲットが違うので比較するのは困難なのですが、ファーストフードばかり食べていると健康を害するのと同じように、安いテンプレデザインだけでは会社の経営の健康も害してしまうのだと思っています。

さらに言えば「デザインなんて安くていいんだよ」というデザインの本当の価値がわからない人達が増えて欲しくない。プロのデザイナーならば、そう思いませんか?

料理は個人の嗜好なのでわかりやすいのですが、デザインは非常にわかりにくい。だから専門家である違いのわかるプロのデザイナーが経営者に対し、広く社会に対して啓蒙していく必要があると感じています。

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