軽出版とそれを支えるサービスについて

noIDという実装を提案するために、noteのアカウントも取り、説明をしてきたが、noIDを使って欲しい領域について書いていなかった。

noIDは、 new object ID for lightweight publishing の new object IDを略したものだが、forに書かれたlightweight publishingというキーワードがその領域である。

lightweight publishingとは、日本語にすると「軽出版」となる。この概念は、2023年の10月ごろ、フリー編集者・文筆家である仲俣暁生氏によって提唱された。その経緯は下記のウェブサイトに書かれている。

その定義は最初の一行に書かれている。

軽出版とは何か。それは、zineより少しだけ本気で、でも一人出版社ほどには本格的ではない、即興的でカジュアルな本の出し方のことだ。

軽出版者宣言より

ZINEというのは個人やチームが作る小冊子である。A4にコピーしたものを折ってホチキス留めした簡易なものから、A5サイズで16ページ32ページなどの内容を作り、印刷してもらって作る本格的なものまでさまざまだ。

こういったものも、配布したいという意図があれば「出版物」と呼んでよいだろう。

しかし、従来の「出版」というジャンルは、出版社が作った本を、流通ルートに載せ、書店で販売するという枠組みを前提としていて、ZINEのような、少部数のものを取り扱うには不向きであった。

「軽出版」というジャンルを提唱したとしても、それはすでに行われている活動に名前を付けたものであって、誰かに知ってもらいたい、読んでもらいたいということを解決するものではない。しかし、既存の「出版」の世界とは違う部分があることを世に示すには充分である。

そして、noIDはその動きと呼応して、「軽出版物」にIDを付けようという活動として始まった。

「出版物」にはISBNというIDがあるが、発行に費用がかかることや、書籍の情報を正確に登録する手間がかかるなど、「軽出版物」に適用するのは難しい。

IDは本の存在を世に知らしめ、また、その本を誰が読んでいるかを作り手にも示す灯台のようなものである。ISBNを「軽出版物」に適用することが難しいのであれば、新しいIDを作ればよい。それがnoIDである。

インターネットも普及し、オンライン上にIDを載せ、参照できるようにする、それがnoIDの基本的なアイデアだ。インターネットはバラバラな情報と、それをリンクする仕組みでできあがっている。noIDもその様式をまねて、本の制作者やや本そのもの、本どうしに意味のあるつながりを持たせるなど、今の時代でこそできるID体系を目指している。

軽出版による創作活動がが誰でもできる時代になる。創作者は自由にnoIDを発行し、それを本の灯台として利用できる。そういう時代が作れればと思っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?