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この冬を振り返る 2021~2022年

この冬はどのような気象条件だったでしょうか。気象庁のまとめを使って振り返ってみたいと思います。

この冬の概況

まず最大の特徴は気温が低かったということです。下図は各地域ごとの気温の平年差のグラフです。

出典:気象庁

特に年末年始にかけてと2月後半に大きく低下していますし,沖縄・奄美以外は12月中旬以降ほとんど平年より気温が低い(青い領域)状態でした。

一方で日照時間は多くの地域で長くなっています

出典:気象庁

農業の視点から見ると,この時期の主力生産地の西日本~関東で,気温は低いけど,日射は十分にあるという条件になっていました。どちらも植物の成長にには欠かせない要素なのですが,気温は低く成長を抑制する方向,日射は多く成長を促進する方向とそれぞれ逆方向の条件でした。
つまり,この冬の条件下での成長具合を分析すると,気温と日射がそれぞれどれくらいの重要度があるかが分かります。

今年の野菜の市場化価格を見ると全体的には昨年同時期に比べて高くなっているものが多いので,日射に比べて気温の方がより植物にとっては重要なファクターであるのではなでしょうか。

降雪量が多かったのも一つの特徴です。

出典:気象庁

日本海側を中心に平年よりも降雪量の多い地域が見られます。特に西日本の山沿いではかなり多くなっているところがあります。
ところが西日本では,降雪量が多い地域と降水量が多い地域は合致していません。

出典:気象庁

雨自体は少なかったものの,気温が低かったので降れば雨ではなく雪になったということです。

原因

気温が低かった直接的な原因は偏西風の蛇行です。本州付近で大きく南側に蛇行して,北の高緯度地域にある寒気を引き込んできました。

この偏西風の蛇行にはラニーニャ現象が関係しています。
ラニーニャ現象は南米ペルー沖の太平洋の海水温が通常より低くなる現象です。ラニーニャ現象によりペルー沖では海水が蒸発して雲になる対流活動が低調になりますが,それをバランスするかのようにインドネシアあたりの対流活動は活発になります。そして,そこで発生した低気圧を目指す形で北から寒気も南下してきます。

現状ではラニーニャ現象自体は解消に向かっています。

気温が低かった一方で日射が多くなった理由としては,冬型の気圧配置の強さがあります。冬型の気圧配置と言えば西高東低,日本の東側に低気圧がある形ですが,この東の低気圧があまり発達しませんでした。2月下旬にかけてはかなり発達したケースもありましたが例年はもっと回数があります。
風に関するデータはまとめていませんが,おそらく風は平年にくらべて弱かったのではないでしょうか。風が弱くその結果として雲もあまり発生しませんでした。

この原因は日本の北東にあるアリューシャン低気圧の活動が弱かったことです。日本海で寒気から切り離された低気圧が太平洋まで進んでも,寒気があまり供給されず発達できませんでした。

春は?

この冬の特徴的な状況を作り出したラニーニャ現象,アリューシャン低気圧ともに平年の活動状況に戻りつつあります。ただ,このような地球クラスの大規模な活動はその変化の速度はゆっくりです。ですから,この冬の余韻を残して春に向かっていきます。
ということで,近年の冬から春に一気に変わるような感じではなく,少しづつ春に向かうような天候になるのではないでしょうか。

季節が移り行く情緒的な時期を長く楽しめそうです。


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