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豊嶋康子展に見つけた日常に横たわるアート
私は普段、現代の作家、特に絵画以外の作家の作品を見に行くことがありません。
絵画は、これまで、過去の作家の作品を少しは見て、その都度、過去の作家のチャレンジしてきた歴史、流行、作家のことを少しは知って見に行くので、展示に好きな作品が見当たらなくても、理解はできるかもしれないと思えます。
でも、白い壁にピンだけ刺してある広い空間があったとして、そこに何を感じていいかわかりません。この例えは、現代アートに関する偏見かもしれませんが…。でもピン一つでも展示スペースにあるのであれば、そこに何か意味を読み取ろうとするでしょう。
それでももし、テーマや作家の視点がインプット情報としてあれば、何かを理解できるかもしれません。
そもそも、作品の意味を来場者に強制的に読み取らせようとするのはどうなん? いや、難解な文学作品、映像作品には、読み解くおもしろさもあるので一概に否定もできない。しかし、美術館に行って「何してたんだろ?」を感じる時間は少ないほうがいい。極端ではありませんが、私も、コスパ重視の現代人です。
が、知り合いのツイートを見て、俄然、行ってみたくなりました。
東京都現代美術館(MOT)の豊嶋康子展がめちゃくちゃ良かった。天才だった>>豊嶋康子インタビュー | Tokyo Art Navigationhttps://t.co/ShDZD6is0F
— Kent Ishizawa (@agnozingdays) January 28, 2024
今回は、有休の日の午前中、以下の記事なども読まず、予習なしで東京都現代美術館に伺いました。
作品とコメント
作品は、動画も写真撮影もOK。個人のSNSにも投稿OKとのことだったので、こちらで紹介します。
最初の展示室の四方の壁面の上部、うねうねしたものがある。ナニコレ?
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よく見るとジグソーパズル!
そう、ジグソーパズルって、隙間なく、構成されてるようで、あれ、むりやりハマるんですよ! ジグソーパズルのこの特長に気づくとは…。豊嶋さんの視点に急に近しいものを感じます。
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次の展示室に行く通路に、茶器らしいものが…。飲みにくいかと思ったけれど、頭の中で口につける想像をしてみたところ、案外飲みにくくはない。でも茶器なら、手のひらの上で回しにくそうですね。どこが正面かを定義すれば、飲み口の位置はわかりやすくて、客は口をつけやすいかもしれません。でも洗いにくいので、家庭用としては絶対NGです。
(なんでケースに割れたシールが貼ってあんだ…?)
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そして天井からは、くす玉。
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「くす玉のひもは引かないでください」の注意書き。これ、子どもが見たら、絶対引くと思います。アンケートにも書いたけど、これ引かれなきゃ嘘です。これは、豊嶋さんも、東京都現代美術館さんも、覚悟してください。子どもにひもを引かれなかったら、くす玉としての魅力はゼロです。くす玉として失敗しています。
次の展示室。
なんか並んでんなー、と思ったら、碁石!
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で、よくよく見ると、、
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黒白半々じゃん! 囲碁不成立!
でも、これ二者が交互に打つものなら、ゲームとして争ってそうな雰囲気。領土を広げるゲームではないのかな。
領土を取り合うことが無意味なら、ゲーム的には、オセロのほうがもっとわかりやすいかもしれない。他の方はどんなことを思って、このゲームらしい盤を見たんでしょうね。
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実際には、自作の碁盤に名人戦の棋譜を再現したものだそう。白の碁石の半分を黒く塗り、黒の碁石の半分を白に塗り。
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そして、壁にずーーーっと続いてるこの長いやつ、ソロバンです。
(エンドレス・ソロバン)
展示の合い間を塗って、隣の部屋まで続いていて、隣の部屋の隙間から、またこちらの展示室につながってます。エンドレス
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問題集を解いたもの。
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あー、哲学って章なのに、回答するのは、漢字の書き問題なのね。ここだけ切り取るとこのページの違和感。
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よく曲げられた安全ピン。確かに手持無沙汰な時に、ちょっと曲げたことはあるけれど、ここまで徹底的に曲げられたものを初めて見ました。
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隣には、炙った分度器ですね。あー、これも似たことをやったことある! でも、ここまで徹底的に炙ったことはありません。それに、いい形に炙られたものばかり。この形、豊嶋さんが納得いく形まで自分で炙ったかと思うと、そこに執着する豊嶋さんという人に、うっすらとした狂気を感じます。
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こちらは定規。
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そして鉛筆ですよ。よく見ないとわからないかもですが、一本の鉛筆の真ん中だけ削ってあるんです。これも似たことやったことありますよね。授業中に暇を持て余したことある小学生時代があった人にはわかるはず。でも、ここまで徹底して、丁寧にやると、見ごたえあります。
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これ何だと思います?(↓) すりガラスを重ねて、構成したものに対して、同じように見えるように、同じ比率のキャンバスに、色を塗ったものです。小さいほうがすりガラス、大きいサイズが、色を塗ったものですね。なんでそんなことするの? 見える色、見え方、実現の仕方には、いろんな方法がある。同じだけれど、やっぱり違う。それを確認してみる必要は、普通の人にはありません。
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こちらは、いろんなところに書いたご自身の名前を切って、貼り合わせたものです。
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実は、この展示の近くに、豊嶋さんが子どもの頃にもらった通知表、賞状、そして、大人になってから契約した生命保険の契約内容、株式投資の取引履歴なんかが、丁寧に並べられてるんです。今は利用していない個人情報かもしれませんが、個人情報なのでここには掲載しませんけど…、なるほど、こういうものは一括してしまっておくし、自分で床に広げたこともあります。わかります、この生活履歴、数値化、記号化した自分の歴史が並んだ感じ。それを丁寧に並べると、こうなるんですね。小学生の頃から、私も同じようなことをやったことがありますが、それを丁寧に、授業中か放課後か、子どもの時か大人になってからかに関わらず、続けて、見せると、他人に得も言われぬ印象を与えるんですね。
こちら、板の情報(厚さ、高さ、素材、塗料の説明)が書いてあるものです。こちらも普段、見ることがない情報の羅列です。展示は、生活の記録とは違う見せ方ですね。
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裏側には、何も書いてない。こっちから見たら、こりゃなんだ? ってなります。
ショッキングだったのがこの下のやつです。
これ、わかるかなー。彫刻刀で、板を削ると出てくるやつですね。これもちょっとはやったことあるけど、徹底的にやって、並べるとおもしろいです。
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この下は板に正方形。この周りの模様は、全部、彫刻刀で削られています。
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感想
見に来てよかったです。日常、自分もやったことがあることを突き抜けた先、キモかったり、エモかったり…、あー、これを集めるとこうなんのね! という驚きがありました。日常の中に誰かの感情を刺激するアートの種がこんな風に存在してるなんて!
でも、そこに受験生が使う参考書だったり、社会、経済とつながる素材に、どこかに社会性を感じるから、豊嶋さんの一人よがりとは感じません。
自分もやってみよう! とはなりませんが、そういう種を保有して、育てたい気持ちは少し湧きました。とてもおもしろそう。
展示を見た時間は1時間ちょうどくらい。いい休日のスタートになりました。
あー、そういえば、このパフェ食べたかったなぁ。
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いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。