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航空整備士の仕事に見る機械と人間のファンタジーと、エンジニア倫理 #ほぼ日の學校

「ほぼ日の學校」アドベントカレンダー6日目の授業紹介は、
ANA 航空整備士 福田さんの「航空整備士が大切にする「正直さ」」です。

航空整備士が大切にする「正直さ」
福田拓生 (ANA 航空整備士)


飛行機が空を飛ぶためには、機体の安全を確認した一等航空整備士のサインが必要です。いわば「機体の安全を保証する仕事」。それはいったいどんな仕事なのか? ANA整備部の福田拓生さんにお話を聞きました。
公開日:2022.09.26

福田拓生 ふくだたくみ
ANA 航空整備士
2017年ANA入社。整備基礎訓練を経て、ANA整備センター機体事業室ライン整備部、ANAラインメンテナンステクニクス成田整備部勤務。2021年ANAに帰任し、ドック整備部に勤務。格納庫にて定時整備の業務に従事しながら、B777の一等航空整備士資格を取得するため勉強中。

今、NHKの朝ドラで『舞いあがれ!』をやってる最中、空を飛ぶ人たちとその仕事に少し目が向いています。その中の航空整備士さんという仕事、航空整備士だけではありませんが、整備士という仕事に対して、昔から不思議な能力の持ち主だな、と感じていました。

個々の機能が違う部品、精密な部品を集めて、つなぎ合わせて、動かすことができる。一部、魔法がかった能力を感じていました。

福田さんの気になったコメント

福田さん:
前の飛行から次の飛行までの短い間に整備をする ライン整備
格納庫におさめて時間をかけて整備するドック整備
コンピュータなどを担当する装備品整備
エンジンを専門とするエンジン整備
部品や工具を24時間体制で供給する整備サポートといった
様々な担当があります。

当たり前ですけど、一括りに「航空整備士」と言えないくらい仕事が分かれてるんですね。

『天空の城ラピュタ』ではパズーがいきなり乗った飛行船で、機械群の中ににもぐりこみ、やるべきことがわかるみたいなシーン。ああいうシーンに憧れます。人類が機械を手にし、それを手なずける側の人間に、自分が持っていない、すごい能力を持っている人たちという目で見てしまいます。

いろんな仕事に分かれてはいますが、きっとこういう人たちは、いきなりボロボロの飛行船に乗せられても、その日のうちに自分の仕事、やるべきことを見つけ出し、冒険に貢献できる人たちでしょう。

ネジを締めるにしても、正しい締める順番、道具の持ち方を知っています。「こういうルールと決まっています。なぜなら~」とすぐに理由も答えることができます。この一つ一つの理由の積み重ねが、飛行機の安全を担保するのでしょう。

インタビュアー:
例えばここに高校生がいて
「整備士になりたいんですけど」
と言った時に
向かない人っていますか 性格的に

福田さん:
とっさに嘘をつく人とか
正直でない人は
ちょっと難しいかもしれません
逆にいうと それ以外であれば
ちゃんと嘘をつかずにまっすぐ
生きている人であれば
どんな人でもできると思うので
しっかり勉強してほしいなと思います

インタビュアー:
“嘘をつかない”というのは
失敗した時にすぐに言えるというか…

福田さん:
そうですね

インタビュアー:
工具をどこかに忘れたとか

福田さん:
そうです はい
結構その葛藤の連続ではあると思います
ちょっとミスしちゃった時に
「すみません やってしまいました」
と言えるかどうかが
すごく大事だと思います

“これぐらい いいや”と
思っちゃう時もあるんですけど
そこをいかに相談して
「すみません やっちゃいました」
と言えるかどうかが
すごい大事だと思います

これは、エンジニアあるあるですね。
ITのエンジニアも同じです。相手がコンピュータ、物質、機械だから、正直に対応しないといけません。機械は指示した通りの動きません。人に対するよりも、正直に、正直に向き合う必要があります。人には嘘はつけますが、機械につくことはできません。機械にしたことを共有するためには、関係者にも嘘はつけません。

我々は、機械ばかりの工業社会の成果の中に生きていますが、そこには、気持ちをもった注意深い人間が介在していることに驚かされます。ジブリ作品の『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『紅の豚』に見られるように、機械と人間が一緒に呼吸をして、そして、機械がすごい力を発揮する姿をあらためて想像すると、その人間と機械のファンタジーがあるように感じます。遠い未来、いやそれは近くにあるのかもしれませんが、機械と機械の間に人間が介在しなくなるかもしれませんが、この整備士の気持ちと技術は倫理規範として、残していきたいと思いました。

機械の間に想いがあるから、人間は空だって飛べる、宇宙にだって行ける、そう思いたい… 残したいという気持ちは、人間側のノスタルジーかもしれませんけど。少しですが、整備士の仕事を垣間見れて、魔法の仕組みを知れた気分になりました。

インタビュアーのくさおいさん、インタビューおつかれさまでした。
ありがとうございました。

いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。