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エンジニアやモノづくりする人はレゴビルダーに学ぼう #ほぼ日の學校

「ほぼ日の學校」アドベントカレンダー21日目の授業紹介は、
三井淳平さんの『好きなことを仕事にする。レゴブロックで学んだ”失敗力”。』です。

授業紹介・視聴動機

好きなことを仕事にする。レゴブロックで学んだ”失敗力”。
三井淳平 (レゴ認定プロビルダー)

世界で約20名、日本ではただ一人のレゴ認定プロビルダー・三井淳平さん。
一度就職をしてから、本格的にレゴブロックの仕事をするために独立を決めたときには、迷いや恐れはなかったそうです。
それは、レゴ制作の中で経験した”失敗力”が糧になっているから。
小さな失敗を乗り越え、大きな成功へたどり着くことの楽しさを、三井さんに伺いました。
大人も子供も楽しめる「きほんの作り方」も教えていただきました!
公開日:2022.10.17

三井淳平(みついじゅんぺい)
レゴ認定プロビルダー

1987年生まれ。2005年、TV番組の「レゴ®ブロック王選手権」準優勝で注目を浴びる。東京大学在学中、「東大レゴ®部」を創部。2010年、レゴ®ブロックを素材とした作品制作や課外活動における社会貢献が認められ、「東京大学総長賞」を個人受賞。2011年、レゴ®認定プロビルダーに最年少で選出される。2015年、レゴ®作品制作を事業とする三井ブリックスタジオを創業。

2年くらい前まで息子がレゴが好きでした。今では興味を失っているものの私にはない能力、ちょっと説明書を見るだけで、さくさく形を組み上げる息子に関心していました。得意で好きなことかと思い、レゴスクールの体験にも二度行きましたが、ま、興味は体験教室で満たされる程度に終わりました。でも、息子が好きだったかもしれない、レゴというものに関心がありました。まだ少し私の中に息子が残してくれたレゴの熱が残っています。熱がなくならないうちに、レゴのことを知っておきたいと思い、視聴しました。

三井淳平さんの言葉

エンジニアやモノづくりをする人には見ていただきたい授業でした。

基本的で応用が利く機能の実装

まず、何かを作る時に、どういうことができるようになると、いろんな機能を実装できるようになるか基本の話です。レゴではそれが球体を作ることになるそうです。

基本的には この四角いブロックを使って組んでいくのが
レゴブロックの基本にはなってるんですけど
この四角いブロックを使って いかに
いろんな形を表現するかというのが
まずスタートラインになるという感じです
そういう意味でいうとこの四角いブロックって
例えば同じ形のものを組み合わせると
四角いものを作るのは簡単ではあるんですけど
これをいかに
いろんな形を作るかって考えていくと
四角いものばっかり作ってちゃ
ダメだってことになりますよね
何を作れるようになると
いちばん作品の幅が広がるかというと
まず 丸い形を作ることなんです
ちょっと想像していただきたいんですけれども
世の中にあるものを何か形を表現したいと思ったときに
球体を作れるようになると結構いろんなものが再現できます
例えば 人とかでも頭って球体に近いですし
肩とかも球体に近かったりするし
球体を組み合わせれば人間っぽい形って
作りやすいと思うんですね

球体だと いろんな大きさの球
例えば 顔を作るときとかでも
大きい球と ちょっと小さい球を組み合わせて
お互い めり込ませたりとかすると
ちょっとドクロの形というか
想像できたりすると思うんですけど
そういう感じで
四角いものだけ作れるだけだと
できないものが
球を作れるようになると
一気に表現の幅が広がる
というのがあって
それで 球を作れるというのが
まず基礎的な技術になります

いろいろと ものの形を作るときに
断面を想像するのって
大事なんですけど
球の場合は 断面が必ず円になるので
考える要素が減って
シンプルに考えることができるのが
すごく大きな特徴なんです

試行錯誤

エンジニアでも、どのようにしてあたりをつけて、正解を探していくかという作業があるでしょう。レゴの話ではありますが、

例えば 私も作品を作るときに
よくやるんですけれども
とりあえず 仮で
「こんなもんかな」という
ラインを探していきます
例えば こういうドーム状というか
アーチを作ってあげると
たぶん球としてうまくいくだろうなと
こういうラインを探していくんですね
こっち側でも
アーチになっていてほしいし
これと同じものが 90度
今は こうついてましたけど
これが90度回転しても
ちゃんとドーム状になっているという
両方が成り立つ場所を探していく
みたいな感じになっていきます

結局は レゴブロックって
ある程度デフォルメをして
形を ある意味で妥協していかないと
表現ができないっていうところがあるので
四角い形を使って 丸い形を作る以上
完璧な球 本当にツルツルの球と
いうのは作れないんですけど
この大きさでベストな球を作ると
したら 自分だったらこう作るという
そういうのを求めていくわけですね
そこが 制約があるなかで
限られた条件のなかで
ベストなものを目指すという意味で
すごく本質的な部分が詰まってる
という感じだったりします

さらに考えるべきこと

全体の強さ、全体のバランスについて。これもエンジニアなら考えたことがあるでしょう。これもレゴの具体的な話ではありますが、どうやってシステム全体として、安全な仕組みを作るかということを考えることは大事になってきます。

作品が大きくなってくると
さらに「強度を出す」というのも
考えないといけなくなってくるので
より建築に近い話にはなってきますね
強度は レゴブロックで作る作品に
関しては 経験則的なところは結構大きいです

いくつか強度にも基準があるというか
レベルがあるんですけど
まず 自重で壊れないレベルの強度
というところと
あとは 長い時間置いていても
確実に壊れない強度だったりとか
あと 人が触っても壊れない強度
だったりとか
そういうのは いろんなレベルで
あったりして
作品の展示場所の条件とかに合わせて
どのレベルで強度を出すか
決めていくというところはあります
それこそ パックマンなんかは
かなりの負荷がかかっても大丈夫な
ように作ってあるという感じですね

そこは 作品のコンセプトに合わせて
解像度を選んでいくという作業に
なっていきますね
例えば 生き物とかを作るときは
体とか大きい部分は
粗い解像度でいいんですけれども
例えば 顔とか
もっと細かく言えば目玉とか
そういう細かいところを
表現するときには
細かいテクニックが必要になって
それで解像度を使い分けてあげると
作品として
全部の解像度が高いわけじゃないけど
すごく目力がある作品が作れたり
メリハリのある作品づくりが
できたりしますね

他の作り手のことを意識する

自分だけじゃない。他の作り手のことも考えます。どうすれば、意欲を持って、他のメンバーや他の作り手のやる気を引き出すのか。自分でもやれると考えてもらうために、方法も選びます。勉強になりますね。

できるだけ 基本的なパーツを
よく使うようにして作品は作ってます
私の作品は見てもらうために作ってる
というところがあるんですけど
見た人が「このパーツ持ってないから
自分は作れないや」と思われて
しまうのは
ちょっともったいないなと
思うところがあるので
「このパーツ 僕も持ってるかも」
みたいなことだったり
「これだったら家にあるパーツで
作れるかも」と思ってもらえる
ような作品のほうが
より私の作品としては意味があるかと
思っています

私は組み立て説明書を作る時があって
一般の人が どういう手順で
組み立てるかっていうのが
分かりやすい資料を
作ったりするんですけど
そういうときは 中の色を
あえて変えることは結構あります
それは いま自分が使ってるパーツが
どこだったのかっていうのが
色でパッと見て判断できるので
分かりやすいというのがありますね
実際 レゴの製品でも使われている
テクニックで
レゴの製品でも
見えない部分に使う色っていうのは
あえて派手な色を使ったりとかして
この部分がこっちにつけるのか
こっちにつけるのかっていう
その1個の違いが
パッと見て判別がしやすいように
色を変えてというふうには
してるみたいですね
言葉で説明しなくても
見た目で分かりやすくするというのも
レゴの すごく大事な要素のひとつ
ではあります

レゴブロックの良さって
再現性の高さだと思っていて
再現性の高さというのは
何か同じものを作ろうと思ったら
全く同じものが作れるという良さで
例えば 粘土細工とかだと
手先の器用さとかが
必要になってくるんですけど
そういうのが レゴの場合は
ある意味 必要ない

もっと表現をつきつめる

ものを作品にするっていうのは
何かを表現したいという思いがあって
やるんですけど
作品を作るときに表現したいっていうので
「自分はこう表現したい」というのが
やっぱりあるわけなんですよね

それを表現するための技として
こっちでいくか こっちでいくか
自分で選んでやっていくわけ
なんですけれども
選んだときに ドンピシャ
自分が表現したいものが
うまく表現できると
いちばん楽しいっていうのがあるので
こういう細かい技
どっちを使うかみたいな
どっちの選択肢も残しつつ
自分でそれを選んでいく
それで自分の作品を作り上げていく
というのが レゴの楽しさかなと思います

やっぱり レゴで作品を作るのって
必ずデフォルメをしていく作業
というのが あいだに入ってきて
そのデフォルメを積み重ねて
作品として仕上げていくわけですけど
それはレゴブロックっていうものが
必ずベストなものが存在してる
わけじゃなくて
あるパーツを使って表現をするって
ことをやってる以上
制約があるなかで作っていくので
デフォルメっていうのは
もう切っても切れない関係には
なるんですけど
デフォルメをするって
どういうことかっていうと
特徴を切り取って
それをより強化するというか
そういう過程が必要になるんですね
そういう意味では そもそも
その作品の作品らしさとは
なんなのかっていうのを
常に意識して
その作品と向き合う必要は
出てくると思います

作品のテーマに対しての
そのバックグラウンドを
必ずすごく調べるようにしているので
それは 作者であり
作る実際のものもそうなんですけど
歴史とかもちゃんと調べて
やってあげることで
その作者が 何でこの作品を作るに
至ったのかみたいなところまで
調べることで
作品のデフォルメすべきポイント
というのが 引き出せるというのは
あると思います

インプットが大事だなという
意識は持ってるので
常に ある程度はとるようにして
というのはあります
やる以上は やっぱり何かしら
新しい要素を毎回入れたいというのは
かなり強い思いとしてあります
自分がやりたいことと
お客さんがやって欲しいことの
折り合いになってはくるんですけど
100%やらないといけないことは
当然 お客さんがやってほしいことを
やるというのは 必ずやってます
そのなかに
自分が前からやりたかったことを
どれだけ入れられるかは
プロジェクトの予算だったりとか
期間だったりのバランスを見ながら
そこに取り込んでいくみたいな
そういう感じになってますね

まとめ

作り手のイロハから、奥義まで教えてくれる話でしたね。
エンジニアにとっては、さらに、いい道具、いいツール、いいプログラミング言語に関する話でもありました。

実際に、レゴブロックを組みながら、
・何を実現したいか(より球体に近づけたい)
・実現するために、どの問題を解決しないといけないのか
 (こちらの面が球に近くない)
・そのために何を使うか(平たいプレートを貼り合わせる)
みたいな話もよかったですね。

まったく期待していた授業とは違って、勉強になったし、自分の仕事の向き合い方、仕事の仕方、考え方への示唆がありました。こういう話は、仕事をはじめてすぐ、そして3年目くらいで聞いておきたかったです。

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