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天使と悪魔



「なんでこんな事になったの…」心の中で呟く川崎桜



普通に学校から家まで帰っていたはずなのに、気がつくと視界が真っ暗。口をテープで塞がれ、手は縄で縛られていた。



「〇〇のやつこれで、本当に来るんですか?」


「大丈夫だ。なんせ、こいつが彼女だからな。助けに来るだろう」



耳だけは何もされてなかったので、川崎桜は今の会話をちゃんと聴いていた。しかし、〇〇は川崎桜の彼氏じゃない。同級生一ノ瀬美空の幼馴染なのだ。


「ってか、もし来なかったら、この女どうします?」


「そりゃあ決まってるだろ。やっちゃおうぜ。〇〇の女を取ったとなれば、街の奴らは皆んな驚くぜ」


聴きたくない会話に心が不安でいっぱいになった時…


何か大きな音が聴こえてきた。


そして、「うっ…」「うっ…」と呻き声の様なものが聴こえ始める。



〇〇:おい…卑怯な真似しないで、正々堂々と仕掛けてこいよ



「やっとか…遅いぞ〇〇。ここにいる彼女ちゃんも、待ちくたびれてるぞ」



〇〇の目の前に差し出される桜。



〇〇:お前ら…まじで許さないからな。関係ない人まで巻き込んで




「はぁ?何言ってんだ。まぁいい…囲め!」




多くの人に取り囲まれ、喧嘩が始まる。




その現場を見ることしかできなかった川崎桜。肩を叩かれ振り向くと同級生の一ノ瀬美空がいた。



一ノ瀬:桜…静かにしててね。今縄解いてあげるから。



やっと解放され、二人でその場から逃げようとと提案する美空



川崎:まって…でも彼が…



一ノ瀬:大丈夫!〇〇なら!外で待ってよう。



桜の手を引き、その場から離れた二人。



不安と緊張から解放された桜はその場にへたり込んでしまったが、目線だけはずっと〇〇達がいる場所に向いていた。



そして、この騒ぎは近隣の住民により通報が入り、警察が止める形で終わりを告げる。



中から出てきたのは、主犯と〇〇だけが警察に取り押さえられている。現場にいた犯人達はサイレンの音に気付き逃げ去っていた。



川崎:待ってください!



警察:はいごめんね。近づかないように



川崎:待ってください!彼は悪くないんです!



警察は聞く耳を持たず、声をかけても目を合わせない〇〇。そして、そのままパトカーに乗って川崎達の目の前から消えていった。



川崎:美空…私、どうしよう…



一ノ瀬:大丈夫。桜は悪くないんだから…



川崎:でも、彼が…



一ノ瀬:〇〇なら大丈夫。絶対帰って来るから!



桜は納得出来ずにいたが、とりあえず一ノ瀬美空の言葉を信じて空を見上げ星に願った。





川崎:はぁ…



重苦しい雰囲気が桜を包む



喧嘩に巻き込まれた日から数日…心のモヤは晴れずにいた。



一ノ瀬:桜!起きて!やばいって!



川崎:寝てないよ。どうしたの?



一ノ瀬:〇〇…自宅謹慎だって…



川崎:え…どうして…彼、悪くないじゃん。



一ノ瀬:そうなんだけどさ…学校から忠告は受けてたの「次問題を起こせば、退学だって」でも今回は、相手が非を認めたみたいで、自宅謹慎で済んだみたい



川崎:そうなんだ…



一ノ瀬:ところでさ。〇〇から伝言なんだけど…桜に謝りたいって。どうする?



川崎:謝ってほしいわけじゃないけど、私も会って話したい。




一ノ瀬:そっか。じゃあ決まりだね。放課後〇〇の家に行こう



話に夢中でチャイムに気づかなかった二人。



放課後が待ち遠しく感じる川崎だった。






一ノ瀬:おじゃましまーす♪



川崎:お…お邪魔します。



「お茶持っていくから、案内しといて」と頼まれ行き慣れた様子で〇〇部屋へと入っていく。


その光景を見た桜は少し羨ましく感じた。



川崎:ねぇ美空?



一ノ瀬:なに〜?



川崎:中西君とは、いつからの仲なの?



一ノ瀬:産まれた時からじゃない?病院も一緒だったし、気づいたときには隣にいた感じだよ。



川崎:そっか。…桜、周りにそういう幼馴染いないから…ちょっと羨ましいかも



一ノ瀬:そんなことないよ。〇〇なんかね…幼稚園の頃なんかよく泣いててさ…「美空がいないと幼稚園行けない…」とか「おっきくなったら美空と結婚する」とか言ってて、可愛かったのに…


川崎:え…なんか意外かも…



一ノ瀬:今なんか、昔の可愛さはどこへやら…喧嘩ばっかりで…



〇〇:こら…美空。嘘つくなよ。



一ノ瀬:嘘なんかついてません〜



持ってきたお茶を二人に差し出す〇〇。


どこか機嫌が悪く、ちょっと強めに自分のベッドに腰掛けた。



〇〇:まぁ…とりあえず。二人とも喧嘩に巻き込んでしまってすいませんでした。



頭を下げ重苦しい雰囲気が部屋に流れると、川崎が口を開いた。


川崎:中西君?頭を上げて。



〇〇:あ…はい。



〇〇の目を見つめる桜



川崎:私こそ、助けてくれてありがとう。二人が居なかったら、今私はここに居ないと思う。



二人の目を見て桜は、もう一度頭を下げた。



一ノ瀬:もう…二人ともかしこまっちゃって…



美空:(喧嘩しても、謝ることがなかった〇〇が素直に謝るなんて…)



素直に謝る姿を見て、美空は涙ぐんだ。





〇〇:楽しんでるところ悪いけど、二人とも時間は大丈夫なの?


スマホを見ると19時を回っていた。



美空:そろそろ、帰ろっか…


川崎:う、うん。



〇〇:駅まで送っていくよ



一ノ瀬:駄目。謹慎中なんだから…大人しくしてなさい。



川崎:桜からもお願いします。



〇〇:わかったよ。じゃあ玄関までは行くわ



階段を降りて、お別れの挨拶をして〇〇の家を出る。


駅に向かう途中、どこか寂しそうな表情を見せる桜



一ノ瀬:もうちょっと居たかった?



川崎:ん…まぁ…



一ノ瀬:まさか…〇〇に惚れたりして…



川崎:えっ!?いや!?その…



一ノ瀬:桜、動揺しすぎ!



川崎:あの、そのね。楽しかったの。また会いたいなって思っちゃって。変かな?



一ノ瀬:そんなことないよ。美空も楽しかったし。それは〇〇も同じだと思う。だから、変じゃないよ。



川崎:なら、よかった。



空を見上げる桜の横顔を見た美空は思った。



一ノ瀬:(桜は〇〇に惚れたかもな…)



一ノ瀬:(ちょっと、モヤっとするけど…桜ならいいかな?)



美空はそんなことを思い、桜と一緒に駅まで向かった。



桜と〇〇が付き合うのはもうちょっと先の話。






























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