別れ際はいつも寂しい
別れ際、いつも喉から血の味がする。
本当はもっと一緒に居たいけど…
「なぁ…〇〇…いつものして?」
最後はハグをして別れていく。
一緒に居たいの入れない
それは…
…
サークル飲み会で居酒屋に来ている。今日は女子大の子と合同で、周りは皆んな息巻いていた。
女子大の人達が到着し、皆んな席に着く中、一人の子と目が合う。恥ずかしくてすぐ逸らしてしまったが、本当は少し可愛いなと思っていた。
そして、飲み会が始まると僕は少しして、席の端へ移動する。元々人数合わせ要員なため、今の席だと余りにも真ん中すぎて、主役の人達が輝けないからだ。
『あの…よかったら一緒に飲みませんか?』
顔を上げると、さっきの目があった人に声を掛けられる。
『さっき目があったのに、すぐ逸らされたから。声を掛けてみようと思って…隣いいですか?』
断る理由はないけれど、こんな可愛い人といたら絶対に先輩達にいじられる。それだけは避けたかったので、少し怪訝な顔をして他の席に行って貰おうとしたら
『もぉ…そんな怖い顔しないでください。他の席空いてないので、隣失礼します』
僕の作戦は簡単に突破されてしまい、あとは先輩達からいじられないようにと祈るしかなかった。
『じゃあ…私は五百城茉央って言います。お名前は?』
「奥田…〇〇です」
『奥田君か…何年生?』
「今2年です」
『一緒じゃん!じゃあ、タメ口でもいい?』
「あ…はい…わかりました…」
『ねぇ!タメ口!』
「ご、ごめん」
僕の肩を軽く叩きながら微笑む姿を見て、グラスに入っていたお酒を飲み干した。
『奥田君?そんな一気に飲んで大丈夫?』
「…うん。多分」
『多分って…すいません〜お水くださ〜い』
「五百城さん…ごめん。ありがとう」
『いえいえ。ちょっと待っててね』
水なんてどうでもいい。今はただ、五百城さんに酔っているのかもしれない。
程なくして、『茉央〜』と別の席から呼ばれてしまう。
『奥田君ごめん。呼ばれちゃったから、行ってくるね。また戻ってくるから!』
「う、うん」
グラスを持って、席から離れていく。本当は行ってほしくない。もっと話していたいし、五百城さんを見ていたい。でも、僕にそれを止める権利はない。もう一度、お酒を飲み干した。
…
『お、お、だ…奥田君。起きて…』
「う、う〜ん。五百城さん?どうしたの…」
『またお酒一気飲みしたでしょ?潰れて寝てたよ』
「あれ…みんなは?」
『帰った…ほら、私達も帰ろ?』
「ご、ごめん」
『もぉ…奥田君…謝ってばっかりだから、次謝ったら、茉央の彼氏になってな!』
「う…うん……え?」
『嘘!冗談!ほら、はよ帰ろ!』
差し出された手を掴んで、僕達は居酒屋を後にした。
「じゃあ…僕こっちだから…」
『……茉央もそっち』
「じゃあ…一緒に帰ろっか…」
『いいけど…歩ける?』
「た、多分、大丈夫。ほら、歩けるよ」
『もぉ…ふらふらやん。しょうがない…茉央が肩貸してあげる』
「は、恥ずかしいよ…」
『そんなこと言ってる場合じゃないよ。絶対顔から転ぶもん』
「じゃあ…失礼します」
今度は五百城さんの肩を借りて、歩き出す。その後僕は気がつくと自宅のベッドに寝ていた。頭が痛くて昨夜のことが思い出せないけど、やたらと心臓の音がうるさかった事だけは覚えている。
また五百城に会えたらいいなと思いながら瞼を閉じた。
…
五百城さんと出会った日から一週間後。会いたいと思っても、会えないもどかしさに悩んでいる。連絡先を聞かなかった事を後悔しながらも、酔っていたせいにして、気持ちを抑えた。次の授業に出るため学食から出ようとしたら
『おはよう。奥田君』
「うぇ!?五百城さん!?どうして大学に!?」
『えへへ。連絡先教えてほしくて、聞きに来ちゃいました』
背後を振り返るとそこには会いたい人がいた。
『スマホある?はいQR。読み取ってよ』
「う、うん。ありがとう」
『今日授業何時まで?』
「お昼には終わると思います」
『そっか。じゃあ後で連絡するね。ご飯食べに行こ!』
「あ…はい…」
あっという間に目の前から消えて行って、驚きと楽しみで僕は次の授業に集中することが出来なかった。
…
『お待たせ…』
「う、うん」
『じゃあ…行こっか。』
「あ、ちょっと待って。今日は大学に来てくれてありがとう。僕も五百城さんの連絡先聞きたかったから…」
『本当?ならよかった…引かれたらどうしようと思ってたから』
「ううん。あれは自分のせいだから。今日は絶対お酒は飲みません」
『うふふ。ならよかった。じゃあ、改めて行きましょうか』
出会った頃のぎこちなさは消えて、知り合いから友達になった気がする。そして、五百城さんからこんな提案をしてくれた。
『ねぇ…〇〇君って呼んでもいい?』
「え…いいの?」
『うん。そしたら、茉央も下の名前で呼んでほしい』
「わかった。茉央さん…」
『あ…顔…紅くなってる』
「そんなこと言わなくていいって…」
恥ずかしくなりながらも、本当は嬉しくてたまらなかった。
そして、ここから僕達の仲は一気に加速していく。
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