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生意気なアイツにムカついた




ため息をついて目を瞑る。今日は全く仕事に集中できていなく、ミス連発で色々な人に迷惑をかけていた事に反省中。


「アルさん…はい」


『…なにこれ?』


「俺からのプレゼント。エナドリ」


『私…飲めないから。君が飲みなさい』


「えぇ…可愛い後輩からのプレゼント、受け取ってくれないんですか?寂しいです…」


『おい…自分で言うな。まぁ…でも…確かにね。一応貰っておくわ。ありがとう』


仕方なく鞄にしまった。


『所で…さっきお願いしたコピー出来てる?』


「はい。これっすよね」


『ありがとう。そしたら、もう上がっていいから。お疲れ様』


「え…嫌です。アルさんの仕事手伝います」


『は?なに言ってんの!帰りなさい』


「嫌です」


『はぁ!?先輩命令!帰れ!』


「だから!嫌です!目の下いっぱいにクマ作ってる人こそ早く帰ってほしいです。なので、僕も手伝います!」


痛いところをつかれるとなにも言えず、納得せざるおえなかった。一人で仕事をしたかったけど、後輩の熱意にやられ、気づけば19時を超えていた。


『ふぅ…終わったね』


「そうっすね。流石に疲れました」


『今日はありがとう。よかったら飲みに行かない?』



机に突っ伏していた後輩は勢いよく起き上がって、目を見開いていた。


「え?いいんすか?まじでいいんすか!?」


『なんでそんなに嬉しそうなのよ…』


「行きたかったんです。アルさんと」


『あっそう。じゃあ…行こっか』


後輩より一歩だけ前へ。生意気でムカつくけど、こういう無邪気な一面があって憎めないんだなと思う私。会社を出て飲屋街へと向かっていった。




「あ…おはよう。アルさん」


『岡本君…ここは…どこ…。頭痛い…』


「俺の部屋です。そこに水置いてますから、飲んでください。」


『ありがとう。私…』


「大丈夫っすよ。なにもしてないっすから。泊まってください。今は一人でいるより誰かといた方がいいですから。」


唾を飲み込んだ。この言葉で全てを思い出した私。恥ずかしくて、今すぐこの場から消えたい。でも、今だけは後輩に甘えてもいいよね?




『なんで電話でれなかったの?』


「ごめん。先輩を介抱してて…」


『ふぅ〜ん。女性?』


「はい」


『正直でよろしい。手は出してないよね?』


「はい」


『わかった。信じる。だから、今度会ったらたくさん愛して』


「うん。任せて。今度は週末にする?」


『そうだね。仕事終わったら〇〇の家に直で行く!』


「わかった。そしたら、カレー作っておくよ。」


『本当!?やった〜!めっちゃ楽しみ!』


「じゃあ…電話切ってもいい?」


『…うん。あ…待って。〇〇…好きだよ』


「俺も。』


電話を切り、待ち受けを見て複雑な気持ちになった。


大好きな彼女のはずなのに、ずっとアルさんの顔が重なる。


今だって、早く電話切りたかった。アルさんが心配で。放っておくとなにをしでかすかわからない。それほど、彼女の心境は穏やかじゃ無いはず。


「起きてる?」


『…ん。そろそろ帰らなきゃね』


「泊まってくださいよ。危ないっすから」


『そういうわけにはいかないの。明日。もう今日か。仕事だし。』


「別にいいじゃないですか…」


『女の子には色々あるの。アルノだけにね』


「アルさん…今言う雰囲気じゃ無いでしょ…」


『冗談じゃん。それに…彼女いるでしょ?』


「え…なんで…それを?」 


『そこの写真。大事に飾ってあるからさ。ね?」


「……でも」


『気持ちだけもらっておくから。今日はありがとうね。岡本君がいてくれて助かったよ』


去りゆく背中を見て僕は彼女を抱きしめた。


「アルさん。ちょっとこのままでいさせて…」


彼女の返事はないまま。


やけに心拍音が聞こえてきた。











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