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近くて見えない場所がある

近距離



五百城:いや〜あぶなかったわ〜



〇〇:重い…背中に体重を乗せんな…



五百城:いいじゃん。別に…



〇〇:アホか…寝坊しといて学校に間に合わないからって自転車にまで乗せてんだから、ちょっとは遠慮しろ



五百城:へいへい。わかりましたよ〜けちんぼ〇〇さん。



〇〇:よしわかった。



五百城:へ?何がわかったの?



その瞬間から奇声のような声が聞こえたと登校中の生徒は言っていたらしい。



ペダルを漕ぎまくって速度を上げた〇〇



それにビビって大声を上げていた茉央



五百城:あほ!殺す気か!



〇〇:人を馬鹿にした人への罰だ!



なんとか時間に間に合い自転車を止めて、言い合いをする二人



五百城:〇〇のちんちくりん!



〇〇:うるせぇ!寝坊したやつが悪いだろ!



目的の階に着き、各々の教室へと入っていった。







正源司:おはよう。また茉央ちゃんとなんかあったの?二人の言い合いが教室内にめっちゃ聞こえてきたけど



〇〇:うぃっす。茉央のやつが寝坊してな…自転車に乗って早く漕いだら大絶叫してして、それで怒られた。



正源司:あらあら…それは朝からご苦労様です。



〇〇:はぁ…疲れた。もう幼馴染やめたい。




正源司:またまた。どうせ本当は思ってないくせに。



〇〇:お?バレてる?



正源司:そりゃあね?毎回言ってるしそのセリフ。



〇〇:はぁ…それは失礼しました。



正源司:うむ。でもさ…本当は茉央ちゃんの事どう思ってるの?



〇〇:知らん。考えたことないわ。そんな事



正源司:ふぅ〜ん。お似合いだと思うけどね。二人は



〇〇:うっせ。とりあえず、トイレ行ってくる。



正源司:あ…ちょっと…



〇〇に逃げられてため息をつく陽子。


本心を聞きたいわけじゃない。


私に勝ち目があるかどうか知りたかっただけ。




昼休みは決まった面子でご飯を中庭で食べる。



先に来ていた陽子に飛びつく茉央。〇〇は後で合流すると言っていた。



五百城:陽ちゃん!聞いて!〇〇がね!



正源司:なになに〜



五百城:〇〇がいじわるしてくるのよ。陽ちゃんからも怒って欲しい…



正源司:本当?茉央ちゃんが寝坊したからじゃなくて?



五百城:あり?まさか…バレてる?



正源司:そりゃあね?大きな声で言い合ってるの聞いてましたから



五百城:あちゃー。それはいかんです…



正源司:ねぇ…茉央ちゃん。



五百城:はいはい!なんでしょう。陽子ちゃん!



正源司:正直さ。〇〇のことどう思ってるの?



五百城:うぇ!?どうって言われても…



正源司:好きなの?



五百城:す、、、スキ!?



正源司:異性としてね?



五百城:あ!茉央、先生に呼ばれてるんだった。じゃあね…



正源司:そうはいくかい!!



手首を掴んだ時、茉央の顔は真っ赤になっていた。



これは、多分脈アリで



私に勝ち目は無いと思いました。





茉央ちゃん達と出会ったのは中学一年生の時



クラスは違ったけど、茉央ちゃんとは同じバレー部に所属していた。でも、思いの外に練習がキツく続けられる気がしなかった私は、夏合宿の前に退部届けを持って職員室に入るとそこに茉央ちゃんがいた。「正源司ちゃんも?」と持っていた退部届けを見せ合い、そこから仲良くなった。



「陽ちゃんに紹介したい幼馴染がいるんだけど、会ってくれない?」とお昼ご飯を食べていた時のこと。


特に疑うこともなく頷くと「今から呼ぶね」と言われ、中庭に現れたのが〇〇君だった。



「〇〇です。よろしく」



私も自己紹介をしたら「呼び方さ、陽子でいい?」と聞かれ馴れ馴れしいなと思った。けど、悪い気はしなかった。



"いつ好きになったの"と聞かれたら間違いなくこの時からだろう



私が〇〇に惚れたのは





〇〇:お?早いね



正源司:〇〇こそ。まだ三十分前だよ。



〇〇:ソワソワしちゃってな



正源司:私も…。でも、茉央ちゃんがいないの寂しいね。



〇〇:なんかな、「茉央は家で寝てます」ってな



正源司:〇〇は寂しい?



〇〇:は?別に…



正源司:素直じゃないやつめ



〇〇:はいはい。ほら、いくぞ?



正源司:は〜い。



本当は茉央ちゃんが居なくて、嬉しい



一緒に歩いている姿がガラスに映ると彼氏彼女に錯覚する



〇〇はいつも茉央ちゃんのことばかり見ているから



今日は…私だけを、見ててほしいな。




正源司:〇〇ありがとう。服見るの付き合ってくれて



〇〇:いえいえ。楽しかったなら何よりです



正源司:ねぇ〇〇にもう一つお願いしてもいい?



〇〇:どうぞ。なんなりと、陽子お嬢様。



正源司:ふふふ。〇〇とプリクラ撮りたい!



〇〇:プリクラ?俺とでいいの?



正源司:〇〇がいいの…。二人だけの思い出が欲しくて…



〇〇:お、おう。おやすい御用です。



正源司:うむ。では、参ろう!!





プリクラを撮り終えた二人。ハサミで上手に切り分けている。



〇〇:プリクラ機の中初めて入ったわ…



正源司:そうなの?茉央ちゃんともないの?



〇〇:ないない。



正源司:…ねぇ〇〇。この事さ茉央ちゃんには内緒して?



〇〇:いいけど…なんかあるの?



正源司:ごめん。今は言えない。でも、このプリクラ大事にしたいから。



頭の中は謎に包まれけど「これ以上聞いたら野暮だな」と思い、陽子の言う通りにした。


そして、そろそろ帰る時間に。



〇〇:楽しかったな。今日



正源司:私も…なんかあっという間だったね



〇〇:本当に。最初は緊張してたんだけどな。陽子の笑顔を見てたら、どっか行っちゃったよ…



正源司:…ズルい。そんな事言わないでよ。帰りたくなくなるじゃん。



〇〇:ごめん。



正源司:ねぇ…帰り道…手…繋いでくれない?



どこか恥ずかしくて、陽子の目が見れない〇〇。



正源司:…繋いでくれないなら。勝手に繋ぐから



〇〇は、陽子の行動に圧倒されてしまって、されるがままだった。




帰り道、〇〇は一度も私の目を見てくれなかった。



改札で「バイバイ」と言っても、どこかぎこちない



少しは意識してくれたかな?



そうだったら、私は嬉しいよ。





「茉央ちゃんへ。私は〇〇が好きです。なので明日は二人っきりにしてください。お願いします」


「いいよー。応援してるね」と連絡したけど、何故か胸が痛かった。


ベッドに横たわって、スマホを見ていたら


画面に"〇〇着信"と表示され、勢いよく飛び上がって、連絡に出た。


五百城:…もしもし



〇〇:おっす。元気になった?



五百城:なんの用…



〇〇:土産渡しに行くから、下開けといて〜



五百城:え…あ…。勝手に切るなし…。人の気も考えないで



ため息をつきながらも、扉の鍵を開けておく茉央



程なくして、〇〇が到着した。



〇〇:茉央〜元気?



五百城:まぁまぁ。



〇〇:そっか。パン買ってきたけど食う?



五百城:…いる。入って



〇〇:おじゃましまーす



五百城:そこ座ってて。コーヒー淹れてくる。



〇〇:あいよ。



五百城:ミルクは?



〇〇:たっぷりで!



五百城:ずうずうしいやつめ



少し笑顔の茉央見て、内心ホッとした〇〇でした。





五百城:お待たせ。はい!ブラックが飲めない〇〇ちゃん。



〇〇:うるせ、、、苦手なの。



五百城:へへへ。どれ食べたらいい?



〇〇:好きなの食べたらいいじゃん。



五百城:じゃあ、このチョコのかかったやつにしよ。



五百城:食べる前に…陽ちゃんとのデート楽しかった?



〇〇:は?デートじゃないわ。



五百城:……なにしたの?



〇〇:なにって…別に普通だよ。



五百城:言えないこと?



〇〇:はぁ!?んなことしないわ。普通に陽子が行きたい服屋に行って、ご飯食べて……帰ってきただけだよ。



五百城:本当に?



〇〇:本当だよ。なに考えてんだ



五百城:はぁ…心配して損した。



〇〇:よくわからんやつ。食べないならもーらい!



五百城:あー!!〇〇のバカ!



〇〇:さっさと食べないやつが悪いわ。



五百城:もぉ…〇〇のアホ…



〇〇:え…あ…ちょっ…泣くなって。それ、もう一個買ってあるから。な?



五百城:別に、そうじゃなくて…


陽子の言葉から解放された様な気がして、茉央の涙はしばらく止まらなかった。



〇〇:落ち着いた?



五百城:うん…ごめん。〇〇の服汚しちゃった。



〇〇:いいよ別に…。じゃあ、そろそろ帰るわ。



五百城:……嫌。帰らないで。泊まって。



〇〇:はぁ!?



五百城:お願い…一人は寂しい…



〇〇:…わかったよ。とりあえず、親に電話してくるから。




親の了解を得て、今日は茉央の家にお泊まり。しかし、着る服がない為一度家に帰ることに。


〇〇:で、なんで茉央まで着いてきてんだよ!


五百城:いいじゃん!一人は寂しいの…


〇〇:今日おかしいぞ。陽子との誘いは断るし。寂しいなら一緒にくればよかったのに…


五百城:それは嫌。


〇〇:はぁ!?よくわからん。


五百城:いいの。わからなくて。それより早く戻って来てね。ここで待ってるから


〇〇:へいへい。


一つ問題が終われば、また新たな問題が起き、二人の言い合いが終わる頃には日付けが変わろうとしていた。



五百城:なぁ…〇〇寝た?


〇〇:寝た


五百城:嘘つき…起きてるやん。


〇〇:茉央こそ寝れないのかよ


五百城:さっきコーヒー飲んだから…眠れない。


〇〇:そっか…でも、なんか懐かしいな。こうして同じ部屋で寝るの


五百城:そうだね。恥ずかしい?


〇〇:う〜ん。わかんない


五百城:そっか…でもな?茉央は嬉しい。


〇〇:なんで?


五百城:二人でいる時間が減ってたから。クラスは違うし


〇〇:確かにな…こうやって二人で居るのも久しぶりか…


五百城:そうなんよ。休日は陽ちゃんと3人やし。朝ぐらい。茉央が寝坊した時ぐらいだもん。だから、嬉しい。


〇〇:まぁな。言われてみたら、そうだな


五百城:なぁ…〇〇は好きな人とかおらんの?


〇〇:はぁ!?随分、急だな。


五百城:おらんの?


〇〇:今は…別に…


五百城:…陽ちゃんは?


〇〇:陽子?なんでだよ…


五百城:どうなの?


〇〇:別に…どうって言われても…


五百城:はぐらかさんとちゃんと教えて!


〇〇:わかんねぇよ。それに、同じことを陽子にも聞かれたわ。「茉央ちゃんのこと好きなの?」って…


五百城:え!?そうなん!?じゃあ…なんて…


〇〇:……寝る。


五百城:え!ちょっと!教えてよ!


〇〇:うるさい。この話は終わり。


五百城:ばか。教えろし


この後何度声をかけても〇〇の返事はなかった。




五百城:おはよう


正源司:うん。珍しいね…茉央ちゃんから呼び出すなんて


五百城:そうだね。今日は陽ちゃんに伝えたい事があって


正源司:なに?絶交とか?


五百城:違う!そうじゃなくて…私も……〇〇の事が好き。だから、陽ちゃんの気持ちを応援はできない


正源司:…知ってた。


五百城:え…なんで?


正源司:やっぱりね。〇〇と茉央ちゃんだけだよ気づいてないの。周りはみんな知ってるし。


五百城:そんなぁ…恥ずかしい…


正源司:まぁ…なにはともあれこれでやっとだね。


五百城:どういうこと?


正源司:こっからは、恋敵ってわけ。正々堂々と勝負できるってこと。それに、茉央ちゃんとは友達をやめる気はないから。これからもよろしくね?


五百城:陽ちゃん…


涙を浮かべ陽子に抱きつく茉央。心に溜めていたモヤモヤが晴れていった。


この先の話はまたどこかで、、











































 


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