青春物語⑥
「〇〇君〜」
「お待たせしました」
目の前で敬礼のポーズをしながら登場したいろはにドキッとする
「そのコート初めて見たかも」
「そうなんです!」
「この日のために買ってもらったやつなので!」
嬉しそうに微笑むいろはを見て
自分の方へと抱き寄せる
「〇〇君…みんなに見られて」
「恥ずかしいです…」
困った様子を見せられたら
余計に意地悪したくなる
「いろは…」
「はい?」
こっちを見上げた瞬間
唇を奪った
「好きだよ」
思いを伝え
もう一度唇を重ねた
…
「…いろは?」
「怒ってる?」
さっきからずっと目線が合わない
今だって返事なしでそっぽを向くだけ
「やっぱり」
「人前は恥ずかしかった?」
足が止まり
腕を引っ張られ
人の少ない所へ連れて行かれた
「…〇〇君」
「私も好きです」
「いや…大好きです」
「でも人前でするのは恥ずかしくて」
「嫌です」
「なので…」
肩に手が置かれ
唇に軽い感触がした
「二人っきりの時にお願いします」
やらかした
全くいろはの気持ちを考えていなかった
「ごめん」
「…謝らないでください」
「…嬉しいですから」
今度は目を見て唇を重ね合う
寒くて手を握り合う僕達
少しづつ暖かくなっていく感じは
まるで二人の絆が深まっていく様で
一緒に微笑んだ。
…
でも神様は悪戯好きらしい
手を繋ぐ一組のカップルが
僕達の前を歩いていたから
さっきまでとは打って変わって
手は暖かったのに
心が冷えていく。
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