雑記【 手相詐欺 】
多くの人が行き交う駅前、ロータリー。
友人との約束があるため、地下鉄から地上に出て歩き出そうとした時だった。
「すみません、私、手相の勉強をしていて、手相を見させて頂きたいんですが…」
化粧っ気のない、いかにも真面目そうな、年齢不詳の女性だった。
突然話しかけられて驚いたのと、なんだか無げに断ることも出来ない気弱な性格の私は手のひらを差し出した。
巷に転がる占いと同じく、誰にも当てはまるだろうなぁみたいな言葉を並べる。
はい、ああ、そうですねー
なんて相槌を打っていると、もう一人の、これまた真面目そうな女性が近づいてきた。
どうやら、占い学校の友達らしい。
「今手相見せてもらってたのー」なんてキャッキャする。
すると突然、後から来た真面目が顔色を変える。
「えっ、これって…!」
んん?
この時点で、なんだか怪しい。
「そうだよね?」
「うんうん、そう!」
どうやら私の手のひらには
大きな転機をあらわす何らかの線が入っているらしいのだ。
「これは、〇△※(知らん)といって、大転換を表す手相なんです」
2人はもう、興奮している。
「“今”先生に見てもらってアドバイスを聞かないと、悪い方に転換してしまいます、“今”行きましょう」
は?
完全に怪しい。
しかも、私が約束があると言っても聞く耳を持たない。
今の私だったら冷たい目をしてその場を去るが、
その時はなんだか怖くて逃げられなかった。
今、今、今すぐに。今じゃないと悪い事が起きる、人生が悪い方に向かう。
詐欺の常套手段、「焦らせる」だ。
完全におかしいわ。
私は一生懸命、約束があるので、友達を待たせているのでと何度も何度も言うが、
今、今、今じゃないと!
仕方ない。私は「後でまた連絡します」と携帯の電話番号を渡して去ろうとした。
「こちらの番号が分かるように、一旦かけますね」
所謂ワン切りをしようと言うのだ。
偽物の電話番号を渡していたらと思うと恐ろしい。
逃げようとしていることがバレバレだ。なお引きとめにあっただろう。
私はその場を去り、
長らく待たせてしまった友人に謝罪し、事情を説明した。
その後は、その人達に出会わないように夜までカラオケに籠った。
何度か着信があったがスルーし、もう居なくなったであろう時間に着信拒否設定をしてカラオケを出た。
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この人達について行くと、「先生」なる人物に手相を見てもらい、お金を取られる。
その後、なんらかのセミナー受講を迫られる、という話だ。
あの真面目そうな二人は、どんなきっかけで詐欺に手を染めたんだろう。
それとも先生なる人物に本気で心酔していて、嘘をついてでも先生に会って欲しいのだろうか。
もしくは、勧誘すると徳を積むみたいな「宗教」という名の人類最大の拠り所、人類最大の詐欺に身を投じているのか。
その数ヶ月後。
別の駅で2回も「手相を…」に出会ったが、冷たい目をしてスルーした。
大勢の人間がいる中で選ばれる私は、恐らく不幸そうなオーラを放ち、詐欺、マルチ、宗教にハマりそうに見えたのだと思う。
結局、彼らが詐欺集団なのかはたまた宗教勧誘なのかは分からずじまいだ。
それにしても、マルチや宗教勧誘は何故初めからそれだと言わないのか。自信無いのがバレバレじゃないか。胸を張れよ。
皆さんも、お気を付けて。
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