動物愛護と動物福祉

「動物福祉学」より

人が動物をかわいがる気持ちを持つことが動物愛護ということになる。すなわち、動物愛護では、人が主体となっている点が特徴的であると言えよう。
一方、動物福祉とは動物の状態のことであり、動物の状態を科学により客観的に定量する。すなわち、動物愛護とは異なり、動物福祉では、動物が主体となっていることが分かる。

日本の動物愛護管理法の最初の第一章、第二条には、動物への修飾語は「命ある」となっている。
一方、動物福祉については、EUのアムステルダム条約では、動物への修飾語は「意識ある(Sentient being)となっている。
日本人は安楽死に強い抵抗感があるのに対して、イギリス人は動物の苦しみに強く反応することが分かる。さらに、近年精力的に展開された「ペットの殺処分ゼロ」運動も、殺生禁止に由来する動物愛護の思想が現れたものであると言えよう。これらのことから、動物愛護は動物の「命」や殺生に、動物福祉は動物の「意識」や状態に重きが置かれていると考えることができる。