家族の思いを胸に、300人以上の震災避難町民をおむすびで繋いだ物語
プロローグ〜描きたい未来〜
浪江駅から歩くこと5分。心地良い日差しを感じながら、いよいよ『おむすび専門店"えん"』を開業する日がやってきた。
ドアを開けて店内に入ると、目の前にはおむすびを頬張るお客さまとほのかに香る海苔やお米の匂い。
おむすびとの出会いは、わたしにとって新しい人たちとの出逢い。
わたしはおにぎりではなく、"おむすび"と呼ぶ。お結び、縁結び。
そう、数えきれない多くの大切なものが失われた大震災でも、その後に生まれた、かけがえのない繋がりもたくさんある。