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不便と羞恥心

父親の恋愛模様は、その後も韓国人女性など数人いたみたいだけど、最終的に再婚することになった継母までは誰かを紹介されることはなかった。
子どもを傷つける行為をしていることに気付いたのか、祖父母達に諭されたのか分からないけど。

〝様方〟

板橋で生活していた頃のことを少し。
 古い木造の小さな家も嫌だったけど、とにかく恥ずかしかったのは学校の連絡網の住所と電話番号に〝○○様方〟と書かれていたこと。
 今なら自宅固定電話が無くて親の携帯電話表記も多いし、そもそも住所は非公開なわけだけど、当時は全て公開されていて、学校からの急な連絡はいわゆる〝家電(いえでん)〟に連絡が来ていた。
 例えば、運動会の日に朝から小雨で、今日はやるの?やらないの?とか、明日の遠足の持ち物にプリントミスがありました!とか。

先生は事情を知っているからそこには触れずスムーズだけど、友達からだとややこしくなる。  
 大家さん宅に電話がかかってくると、娘さんかが呼びに来る。娘さんは気を遣って、電話口では何も言わず、小走りに家まで来てくれるけど、高齢のお母さんだと、大家さん宅の玄関から大声で呼ぶ。電話の向こうには丸聞こえだ。

だから電話に出ると、今の〝大事な連絡内容〟より先に『電話出るの遅くない?』とか『なんで自分の家なのに亜里奈ちゃんの苗字を〝さん〟付けで呼んだの?』と聞かれる。
学校に着いたら着いたで、『どうして○○様方なの?様方ってどういう意味?○○って誰の苗字?』『え?亜里奈ちゃんちって電話無いのー?!ねーねーみんなー!亜里奈ちゃんち電話無いんだって!!!』と情報が伝わる。
イベントで楽しい一日のはずが、それだけで台無しだった。

薬局の公衆電話

かかってくるのも面倒だったけど、電話をかけたい時が不便で仕方なかった。
友達と約束したい時や、おばあちゃんの家に連絡したい時。
 とりあえず10円を小銭入れに沢山入れて、電話番号をしっかりメモして薬局前にある公衆電話に向かう。
朝早かったり、寒かったり、雨だったり、、家から出たくないのにな、といつも思っていた。

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