隣の部屋から裁縫の音

あ、どうも☆たつのこ龍次郎と申します。会社員をやりながらライティングを学ぶ大阪在住のおっさんであります。(絶賛スランプ中)

前々回、ライティング道をつき進む人にはぜひ聴いて欲しいラジオ番組(Standfm)をご紹介しました。マジオススメだってばよ!

光漏れる寝室

小学生低学年くらい、わたしが子どもの頃の話です。ふた部屋しかない長屋に父と私のふたりで住んでいました。

ひと部屋は父の職場(紳士服テイラー)兼寝室、もうひと部屋がテレビを観たり食事する生活空間で、夜はわたしひとりの寝室になっていました。

夜になると畳の上に布団を広げて、父の職場側の襖に頭を向けて寝ていたため、電気を消すと隙間から仕事部屋の光が漏れてきます。

記憶と音

小さいときから父と一緒に寝るということもなく、ひとりで寝るのが当たり前でした。

寂しくて人恋しくて、見えるワケもない向こうの部屋をこっそりと襖の隙間から覗き込んだり、父の部屋から聴こえる音に耳を澄ましたり……よくしていました。

いまやコロナ禍‬で見る機会も激減してしまったけれど、当時の紳士服は贅沢品の極みながらも注文が多くてよく徹夜もしていましたね。

‪紳士服(背広)はクライアントの身体をピタリ採寸して布と芯地とボタンやカフスを糸で縫い上げていきます。

特に襟元から胸にあたる部分の表布と芯地と裏布を合わせた部分は、ひたすらに糸で縫い込まれます。(高級仕立て)

それなりに厚みのある生地を針で通すと「プツッ」という音が鳴り、そのまま糸のついた針を引き抜くときに糸と生地が擦れて「シゥーーーーーッ」と鳴ります。

終わりあるリピート

プロともなると機械のように正確なリズムを刻みます。

プツッ シゥーーーーーッ
プツッ シゥーーーーーッ
プツッ シゥーーーーーッ
プツッ シゥーーーーーッ

黙々と縫い込み続ける父が、隣の部屋にいました。

部分的には単純な作業ながら、このひと縫いが紳士服になっていく過程として必要なもの。

そしてあの立派な紳士服(背広)になっていく……

書きながら今ふと頭によぎったことばで締めたいと思います。途中で気付いた方はよろしければご唱和ください☆


縫い込めば そのひと針が服となる
 迷わず縫えよ 縫えば分かるさ

行くぞっ! いち にぃ さん 

ダァーーーーー!!!!!!

photo by charlesdeluvio (from Unsplash)

【ふりかえれば私がいる】
(←あとがき、とストレートに言わなくて意味不明になって迷子なう)

あのときはなんとも思ってなかった……いや、正確にはなんとも思わないようにしていたんだと思います。

書いていて自分の気持ちと亡き父の記憶があの音とともに蘇りました。

書くってホントタイムマシーンですね。



【おまけコーナー】
前見ごろ、後ろ見ごろという言葉があります。
襟元から前面にあたる部分、または背面の部分をそう呼ぶようです。

あ、そういえば今は梅見ごろですね。(・ω<) テヘペロ

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