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短歌

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卵生説

卵生説

秘密だと誘いこまれた緑陰で利口な侭でいてはだめだよ

まといつく姿がふいに疎ましくおもわれた日のパレットナイフ

次兄から盗んだ蝶を迷わせる遊びに耽った第二理科室

苔桃でよごれた指をふくませていけないことをしたのだろうか

その胸ではばたくべきは死ではなく詩なのだからと泣いてくれたね

淋しいと訊かれるたびに星の名をつらねるようになってしまった

心など学びはじめたきみのため恋という語は破いてお

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道徳的な獣

道徳的な獣

醒めぎわにくすねた薔薇はためらわず傷つけてくれたのだけれど

血が蜜に見えるのは口移されたあまい裸錠のせいなのですか

蒼ざめた肌をあわせることもなく教師のように聴かせるワルツ

痩せぎすの月が息づく目の奥でまだしあわせを恐れているの

逆らってみたいとおもう心ごと胸の釦をただされている

火をねだるかすれた声にさいなまれても憎いとはつづれないまま

冬蝶をいたぶる指がいくたびも聖書の文句にたちど

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名刺代わりの短歌

名刺代わりの短歌

人間に戻りつつあるあなたにはもう跪けなくて 終息

膨らんだ影にかくまうこのひとも水蜜桃もいずれは腐る

火のままでふれてほしいと告げるべく花を抱えてゆく獣道

蝶などに身を変えるから罰さずにいられなかった夢の刑法

わたくしを世界と呼んだ妹はそのうつくしい治世を終えて

もろともに滅びることをゆるされて鳥や魚を逃がすゆうさり

愛でなく侮蔑であればおまえにも返せただろうばらいろの痣

雪のふる禁

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