ははとむすめ



「すきでこの世に生まれたわけじゃない」

そう私が言ってから、母とは5年近く絶縁状態になっている。

高校生くらいまでは、ほぼ毎日母とその日会ったことを話していた。好きな人ができた、今日先生がむかついた、そんな他愛のないことだけど、唯一話をまともに聞いてくれる相手だった。だからと言って友達のような関係ではなく、私は母を尊敬していたし、母もわたしを一人の娘として自分のことよりも大事にしていたように思う。

父と母が離婚した原因は、具体的な理由が一つあるわけではなくて、複合的なものだと今は思っている。

父は他に好きな人ができて、また母は自分の趣味に没頭していた。ただ、理由はそれだけでなくて、家の中に流れる空気だったり、朝の何気ないあいさつだったり、温めきれてないおかずの味だったり、そういったものがすべて作用して離婚したのだと思う。

当時の私は成人したばかりで、何よりも揺るがないと思っていた家族が、あっさりとガラガラ音を立てて崩壊していく様が受け入れられなかった。母が父のせいにばかりして、「自分は悪くない」と言って私に泣きついてきたのが腹立たしかったのだ。

そんな私も24歳になった。毎日彼氏のぬくもりを感じて眠ることは何よりも安らぎだし、いずれ彼との子供も欲しいと思っている。ただ私は、家族という概念は永遠のものじゃないということを知っている。それでも子供を愛し育てることに何故か疑問はない。矛盾しているとは思いつつも、周囲で結婚・出産の話題が増えてきた今、自分は母と娘の中間地点に立っているのだと思うと少し納得がいく。娘でなければ娘の気持ちが分からないように、母にならないと母の気持ちは分からない。いつか私は母のことを受け入れることができるのだろうか。

寒くなってくるとついついコタツで寝てしまい、次の日の朝猛烈な後悔に襲われる。そういう時に母のことをよく思い出す。母は夕食後、テレビを見ていたかと思うと、知らない間に毛布を被り丸くなって寝ていた。お風呂に入りなよと言ってもなかなか入ってくれず、困ったものだった。わたしも最近は仕事から帰ってフラフラになりながらご飯を作って食べ、気がつくと寝てしまっている。そうか、母は疲れていたのかと、朝目が覚めてこたつの電源を切りガチガチになった身体をさすりながら、そんなことを考えてしまう。

母も今日、1mくらいの距離しかない布団への歩みも諦め、リビングの冷たい床で小さな体を丸めながら寝ているのだろうか。それとも、少しでもわたしのことを思い出して、何か思ったりするのだろうか。どちらにせよ、わたしは今日コタツで寝ないようにしようと思う。



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以前別のブログで公開していたが、ブログを消してnoteにまとめようと思ったので、こちらに移植した。少し前の話で、母とは結婚を機に連絡をとるようになった。けど溝が埋まることは一生ないのだと思う。

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