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6.コロンビア・スプレモ

コロンビア・スプレモ2回目の焙煎を。珈琲の街で灯され静かに燃え続ける炎を消したくなくて、盛岡珈琲紀行から帰ったそのままの身体で豆を焼いた。疲れていても焼かねばならないと思った、頭より先に心が。だから焼いた。長く腕を振れる気はしなかったから、強火にして焼き始めた。聞き馴染みになったバチっという爆ぜる音は、焼き始めてから約8分頃から。冬の寒さがもう遠く昔のことのように感じられるくらい春の暖かさが一気にやってきたせいか、温度が上がりやすい。火元の暑さに季節の変化を全身で感じながら、そしてゆっくり喉を通っていった珈琲たちに思いを馳せながら、腕を振る。右手は大きく豪快に、左手は小さく繊細に、焼きムラがないように。小さな音でありながら存在感を感じさせる2ハゼの音は、約15分頃から。今日も深く深く大海を潜っていく。色と音とそれから匂い、五感すべての感覚を研ぎ澄ませて、深く深く潜っていく。焼き終わりは、22分丁度。疲れた。コクはあまりないけれど、強すぎない苦味とふわっと出る甘味がよかった。うまいと思えばうまい。自分で焼いた豆なのだから嫌でもうまいと感じる。でももっとうまい珈琲をつくりたい。追い続けたい。追い越すとか追い越されるとか競争の話ではなく、追い究めたい。

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