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14.タンザニア・フルーツマウンテン

焼く、挽く、淹れる、飲む、同じようにみえることの繰り返し。毎日同じようなことではあるけど、毎日少しずつ違うことの繰り返し。繰り返しを繰り返す。季節が変わり、時代が変わり、世界が変わっても、或いは変わらなくても、繰り返す。今日も焼く。前回深煎りに焼いたタンザニア・フルーツマウンテンを中煎りに。名前から連想するに、恐らく果実味が特徴的な豆なのだと思う。味と香りに果実味をもたらせたらいいのだけど。気温14.5℃と焙煎するにはもってこいの一日の朝、中火で焼き始める。季節の変わり目、焼けるスピード感がいまいち掴めていないので、前回同様慎重に焼きたい。1ハゼは8分10秒あたりから始まる。ケニアを焼いた時と同じような重く低い音が、焼き始めてから10分あたりまで響き続ける。しばらく間がある。14分30秒あたりから2ハゼが始まる。中煎りは焼き止めの見極めが難しいので、慎重に網を振る。焼き止めは16分ちょうど。迷ったときに自身の腕より、キリの良いタイミングに頼ってしまう。今信頼できるものは、それくらいしかないから。でもきっといつか、自分の腕を信じられるはずだとも思うから。中火でゆっくり焼いたことで、焼きムラは少なくなったけれど、香りも味も弱く、輪郭がぼんやりしている。寝起きで頭も働かないので、とりあえずテレビでもつけようかと思ったけど、リモコンが見当たらないからもう一度布団に潜る、みたいな珈琲。頭の片隅にも残らないような日常の一幕だけど、日常をつくるかけがえのないワンシーン。

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