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18.ブラジル ラゴア ボイヤ

春と夏の間、微風の吹く縁側で寝ていた昼下がり、強い陽射しに起こされると、夏のはじまりはもうすぐそこまで来ている。気温28.2℃、半袖短パンで豆を焼く。ブラジルを中深煎りに。ピッキング、火加減、冷却、保存、最初から最後まで丁寧に。感覚だけに頼らないで数字を見なければならないし、感じながら考えなければならない。中火で焼き始め、8分30秒あたりで1ハゼが起きる。特徴的な音はなく、一般的というか普通の音が換気扇が回る音と交わる。12分40秒あたりから2ハゼが起きる。2ハゼの音もまた、特徴のない教科書で習った2ハゼの音。15分30秒で焼き止め、汗ばんだ右手で扇子を扇ぐ。首裏に滲んだ汗みたいに豆から油が滲む。香ばしく芳ばしい「深煎りブラジル」みたいな珈琲。それはそうだ。それはそうだけど、敢えて喩えるなら。ブラジルの季節は秋と冬の間だろうか、夏はもうすぐそこまで来ている。

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