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17.インドネシア マンデリン トラジャ

雨が降る。アスファルト、屋根、雑草、サドル、土、雨水に濡れたものたちの湿ったにおいを覆い尽くすような珈琲の香りが、あのアパートの一室から漂っている。天気は雨、気温16.5℃、焙煎日和、マンデリンを深く焼く。1ハゼが終わるまでは強めの中火、1ハゼ終わりから中火に落として、焼く。ちょうど8分で1ハゼ、パキッというはっきり小気味いい音が鳴る。9分50秒あたりまで続く。ここで中火に落とす。12分10秒あたりから、2ハゼ。火を落とした分、もう少し遅めに2ハゼが来るかと思っていたので、少し早め。最初はピチッという弱めの音、徐々にピキッというクルミが割れたような音に変わっていく。もう少し深く、もう少し深く、と踏み込んでいく。歩みを進めることと止まることの瀬戸際、少し歩き過ぎたかもしれない。味わいは、どっしりした苦味の中にマンデリンらしさ。街灯のない夜道、月明かりだけを頼りに自分だけの場所を目指して歩き続けている、珈琲。一歩ずつたしかに歩いている。

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