見出し画像

16.エチオピア イルガチェフ ウォッシュド

好きなことの中にも嫌いなことはあるし、楽しいことの中にも面倒くさいこともあるし、やりたいことの中にもやりたくないことはある。0か100でも、白か黒でもなく、その間のグラデーションがあるだけ。浅煎りか深煎りか、あるいは中煎り、中深煎り、極深煎り、のような点ではなく、その間があるだけ。点ではなく間。中煎りと中深煎りの間を目指して、イルガチェフを焼く。気温17.0℃、春から初夏へ季節は巡る。強めの中火で焼き始める。テキトーにしない、適当にやる。7分10秒から1ハゼ、イメージ通りのスピード。バチッと大きく強い音から低く籠った音に変わっていく。10分くらいまで続く。1ハゼから2ハゼまでの間隔が短い、また1ハゼと2ハゼの時間どちらかが長いどちらかが短いと、出来は良くなかった、という経験則の元、火加減を中火に調整する。数少ない経験でも、自分だけの経験だから信じる。2ハゼは12分10秒あたりから始まる。ピチッという小さく弱い音。焼き止めは14分50秒。もう少し、ほんの少し、浅めに焼いてもよかったかもしれない。珈琲の味に、もしもはない。頭の中ではなく舌の上で感じるのだから。いや身体全体で感じるものと考えれば、頭の中で感じたものも味なのかもしれない。かもしれない。イルガチェフの華やかさはあまり感じられないけれど、やんわりとまるくほんのりあまい味わい。漢字的ではなくひらがな的なまるみ。季節と季節の間、公園の木陰で文庫本を読んでいるような味。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?