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9.インドネシア マンデリン G1

今回の焙煎はマンデリンを中深煎りに。前回同様、やはり欠点豆が多い。ピッキングの練習である。豆を見て、観て、視る。今は100gと少量だから選別しやすいけれど、当然量が多くなればなるほど、難しくなるわけで。時間をかけても丁寧に、おいしいものは丁寧な仕事から生まれることを知っているから。気温は12℃と高くはなかったので、強めの中火で焼き始める。1ハゼは9分頃から始まる。換気扇の音に勝る太く強い音が響く。ほんの数ミリ火に近づけ網を振る。しばらく振り続け、12分30秒あたりから、バチッという1ハゼの音からピチッという2ハゼの音に変わる。一番から二番へ間奏もなく流れていく曲のように。二番の演奏は、あっという間にクライマックスを迎える。14分40秒でザルに上げて、短く故に儚い一曲の余韻に浸る暇もなく、拍手を送るように扇子を扇ぐ。回り続ける換気扇の音と焼かれた豆の香りとほんの少しの達成感が残る。おいしいと言えばおいしいのだろう。しかし、伸び代の方が大きい。おいしいと言えばおいしいとおいしいと思っておいしいは全然違う。口で言うことと心で思うことは、想像以上に違うものだから。

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