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『REBOX3』内容紹介

 2022年5月29日(日)、流通センターで開催の文学フリマ東京に「メルキド出版」(ブース番号:ア05~06)としてサークル参加します。
 新刊は、合同創作誌『マジカント4号 都市/革命』、新装版『RE:前衛アンソロジー』、サブカルチャー誌『REBOX3 特集:ウエルベック』の3点の予定です。
 今回は『REBOX3』をご紹介します。本誌は2021年5月に創刊しました。創刊号は大江健三郎『芽むしり仔撃ち』読書会の模様と書簡形式のリレーエッセイという書物特集でした。2号は「反映画」と銘打ち、時代の象徴として語られがちな「映画」に対して、アニメ作品を主に据えることで、時代と「映像」を鑑賞・分析しました。さらに映像にまつわる短篇とエッセイを収録して雑多な冊子になったと思います。
 そして本号ではフランスの現代作家ミシェル・ウエルベックの特集を組みました。サブカルチャー誌を掲げておきながら、本格小説のウエルベックとは筋違いではないかという向きもあるかもしれません。しかし創刊号では大江健三郎を取り上げて序文で明言したとおり「文学はサブカルチャー」なのです。ウエルベックは68年革命やヒッピーおよびカウンターカルチャーに数多く言及しております。それはどれも批判的な態度ではありますが、むしろそのアプローチこそサブカルチャーの神髄だと考えます。
 さて、本企画は本誌に序文と論考を掲載する前川卓氏によって立てられました。氏の企画の意図は序文をぜひ読んでいただきたいです。また本誌の中核をなす論考パートの監修は、メディチ後藤スカイ氏にご尽力願いました。この場を借りてご両人には謝辞を述べさせていただきます。
 つぎに冊子の内容を簡単にご紹介いたします。まずは論考と翻訳です(敬称略)。
 伊藤にしん『僕たちからよむウエルベック』は、テンポのよいエッセイ風論考となっております。何かと誤解をまねくウエルベックと日本の代表的な風俗作家村上龍を対置することで、フランスと日本ひいては普遍的人間について思弁的考察を重ねていきます。
 前川卓『ミシェル・ウエルベックという「犯人」 『地図と領土』における探偵の不在──少なくとも推理小説としては不出来な』は、ウエルベック『地図と領土』とアラン・ロブ=グリエ『消しゴム』に、探偵小説を軸とした比較検討を施し、両者の差異を見出そうとします。ここでも芸術と人間に関する深い洞察が展開されます。
 幸村燕『不在の現前──ミシェル・ウエルベックにおけるモチーフと構造〈乗り物から神まで〉』は、『闘争領域の拡大』の乗り物と『地図と領土』の植物から神およびボードレールのモデルニテへと論述します。
 メディチ後藤スカイ訳『サドーウエルベック、閨房からセックスショップへ』(リザ・シュタイナー著)は、本書から「アンチヒューマニズムの時代に」という章を抜粋し、日本語に翻訳したものになります。サドとウエルベックにニーチェを媒介させることで、大変刺激的な論考となっております。
 つぎに二次創作と創作をご紹介します。
 柊ひいる『Michel,ma belle ミシェル・ウエルベック新作原稿盗難事件の思い出』は、ライトノベルの筆致で軽快に進む物語が「犯罪事件」に急転していきます。
 石川音『匿名的人間について』は、とらえどころのない文体と厭世的な人物たちによる濃密な世界です。
 鯖『木の家』は、植木屋を営む中年男性と無軌道な若者たちのディスコミュニケーションを喜劇的に描きます。
 瀬希瑞世季子『花中』は、息をも吐かせぬ毒のエクリチュールで愛を知るまでの独白譚です。
 以上になります。ボリューム満点の内容となっております。
 では文学フリマ当日にブースでお会いしましょう。
 最後に書誌データを載せておきます。ご参考になさってください。

『REBOX3 特集:ウエルベック』
 A5判/210頁/500円

序文
前川卓

論考
伊藤にしん
僕たちからよむウエルベック

前川卓
ミシェル・ウエルベックという「犯人」
『地図と領土』における探偵の不在──少なくとも推理小説としては不出来な

幸村燕
不在の現前──ミシェル・ウエルベックにおけるモチーフと構造〈乗り物から神まで〉

翻訳
アンチヒューマニズムの時代に
リザ・シュタイナー著『サドーウエルベック、閨房からセックスショップへ』より抜粋
メディチ後藤スカイ訳

二次創作
柊ひいる
Michel,ma belle
ミシェル・ウエルベック新作原稿盗難事件の思い出

石川音
匿名的人間について

創作

木の家

瀬希瑞世季子
花中

装画・装幀
柿谷孟

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