見出し画像

ルヴァンカップ決勝までのメモ

2019年10月13日から26日までの14日間のメモを書いておく。この期間、ずっとワクワクしドキドキした話だ。長いと思う。


2019年10月13日 14時50分

札幌ドームでは家本政明主審が長い笛を鳴らした。1-0で北海道コンサドーレ札幌がガンバ大阪を下し、札幌が決勝戦なるものに初めて進むことが決定した合図だった。

画像1

この試合では、勝利のチャントである「すすきのへいこう」は優勝した時のために歌われなかった。個人的には「埼スタへいこう」と歌いたかったが、優勝した時のためにとっておくなんていい演出じゃないか。決勝戦の地ですすきのへいこうを歌うことはどれだけ嬉しいんだろうか、とワクワクしていた。

ワクワクしてきた

埼スタで行われるルヴァンカップ決勝の入場券はすでにクラブの先行予約で確保済みだ。そして、航空券も確保してあった。仕事の用事も絡めて木曜日に上京するスケジュール。

画像2

決勝に行けるワクワク状態だから、発券が可能になった10月16日に友人たちの分も含めた4枚のチケットをセブンイレブンで発券してもらって来た。

もちろん、その週末の金曜日、10月18日の夜は札幌ドームでJ1リーグのセレッソ大阪戦でもワクワクは続く。ただし、リーグ戦で上位を狙うためには勝ちたい試合だったが0-1での敗戦だった。いつもは負けると悔しいはずなのに妙にそわそわしていた。試合後の反省会(という名の飲み会をするためにいつもサッカーを観ているようなものかもしれない)では、セレッソ大阪に負けた悔しさよりも、次の週に埼玉で開催される試合のことでワクワクしていた。でも、いまはこれはその後のことの伏線にも思えてくる…なんだかのぼせ上がっていたのかもね。

敗戦後も

負けた翌日からはルヴァンカップのことでドキドキしっぱなしだった。北海道のローカル番組でもルヴァンカップで盛り上がってるし、全国放送のスポーツ番組でも北海道コンサドーレ札幌が取り上げられていた。どれを見てもワクワクするばかりだった。

しかたない、初めての決勝だ。そう、私たちはファイナリストとして10月26日に埼玉スタジアムに行くのだ。埼玉スタジアムの北側スタンドで北海道コンサドーレ札幌を応援し、ルヴァンカップで優勝するのだ!ということを考えながら仕事をし酒を飲んだ。テレビを消していても、ルヴァンカップで盛り上がる札幌サポーターのつぶやきを見ると盛り上がった。facebook でもどこでもルヴァンカップのことで盛り上がっていた。

まさに寝ても覚めてもルヴァンカップ。言ってみれば、初恋のあの感じなのだろう。人生で一度きりの「初めて観るルヴァンカップ、いや初めて体験する優勝」だ。そりゃ盛り上がるのだ。だから、ドキドキしっぱなしだった。

さぁ、埼玉へいこう!

札幌から羽田は割愛する。なにせ仕事も絡めたので余裕で行ける。だから、話はいきなり東京メトロ南北線の車中になる。

何度か遠征で埼玉スタジアムに行ったことがあるが、いつもであれば、東京メトロ南北線に乗り、赤羽あたりを過ぎると浦和レッズのレプリカだらけになり、南北線から埼玉スタジアム線と名前を変えるころには、肩身の狭い思いをしながら赤黒縦縞のレプリカを着ることになるのだが、あの埼玉スタジアム2○○2に向かう東京メトロ南北線の雰囲気が違った。そう、雰囲気が違う。

画像4

今回ばかりは札幌市営地下鉄東豊線のような状態だった。水色のレプリカを着た人もいたが、赤色は強い。もう完全にホーム状態だ。初めての決勝戦だからだとは思うが、みんな力の入り方が違う。札幌ドームへ行く道と違うのは浦和美園駅で降りたということだけだ。

いざ決戦場へ

川崎フロンターレを蹴散らしてやるんだという根拠のない想いを抱き、浦和美園駅に降り立ち、晴天のもとスタジアムまで歩くと、またしてもファイナリストであることを自覚させるナイスな演出。

画像4

そうだよ、ファイナルなんだよ!と思った瞬間、2週間に渡りワクワク・ドキドキしてきた、この気持ちは今日で終わるんだなぁ…とシミジミした。宴はいつかは終わる。

北側の入り口では並ぶことはやめた。オヤジは並ぶの嫌なのだ。座ってビールを美味しくいただく。すると、UHBやSTVのアナウンサーがいた。スタジアムDJのグッチーさんも歩いてきた。河合竜二さんも歩いてた。ビールを飲みながら最高の気分を満喫していた。

スタジアム内に入り場所を確保。

画像5

ゴール裏の空いてる席に座り、またビールを飲み始める。真夏のような日差しもいい気分だった。

試合開始

画像6

試合の内容はどこにでも書いてあるけど、私も簡単に書いておくことにする。菅ちゃんのシュートすげーぞ!そして、なぜこの時間帯に取られちゃうのだ!おい!あれはハンドじゃねーのか…からの、福森〜深井のセットプレイで同点。すげー死闘。ここまでで90分。

でも、実際に見てると川崎のゴールがもっと決まってなかったのが不思議なぐらいだった。ゴールポストに助けられた。下手したら去年の等々力の悪夢があってもおかしくなかったが、2-2のまま延長戦に入る。

延長戦

画像7

VARも実感できた。福森のFK最高だった。よし、これで優勝できるという雰囲気だった。このまま試合が終わってくれれば、ルヴァンカップは津軽海峡を渡ることができる。

駒大苫小牧が甲子園で初優勝をした時、私は大阪で用事があり、伊丹空港から新千歳空港に駒大苫小牧の選手たち、そして真紅の優勝旗と一緒に津軽海峡を渡った。あの時の機内でCAさんが「ただいま津軽海峡上空です、夏の全国甲子園大会の深紅の優勝旗が、歴史上初めてこの飛行機で皆さんと一緒に津軽海峡を渡ります。優勝した選手たちに感謝します」というアナウンスをし、機内は拍手喝采だった。なんだか胸が熱くなったことを覚えてる。

今回ももしかしたら、初めてルヴァンカップが飛行機に乗り、歴史上初めて津軽海峡を渡るかもしれない。そう考えると胸も熱くなる。

閑話休題

延長後半になりまたもセットプレイで得点を決められてしまう。嗚呼、セットプレイ…

PK

画像8

どうなるんだろう…と思いながら、PKをやるのはどうやら川崎側になったらしい。そしてPK戦が始まった。

終わった。

もうPKの時のことはあまり覚えてない。どういう気分でいればいいのか自分でもわからなかった。PKで負けるということはこういうことなのか…と思った。

画像9

準優勝だった。

あのワクワク・ドキドキもここでなくなった感じがする。

負け続けていた時とは違う気持ち

正直に言って悔しい。でも、その悔しさや悲しさをごまかしながら、人はさまざまなものに順応していく。心を揺さぶられ続けることはとてもつらい。できれば平穏に生きていきたい。だから、ちょっとだけ自分の気持ちをごまかして、社会に適応していく。

今回も悔しさを他の感情に変換させようと思っていた。川崎おめでとう!と言れば、選手にありがとうと言れば、いい人になれるかもしれない。でも、なんだかしっくりこない。悔しさをどうやって他に変換するか思いつかない。

正直に書いておく。あそこで川崎フロンターレの優勝をみたこと、コンサドーレ札幌を応援し掴みかかった優勝が目の前で崩れ去っていったこと。そこに残った感情は悔しいという感情なのだ。あれは本当に悔しかった。

でもね、決勝に至るまでのあの「ドキドキ」とか「ワクワク」は本当に楽しかった。これも事実だ。こんなワクワクが味わえるなんて、強豪クラブが羨ましいと思った。だからこそ、悔しかったんだろう。もっともっと前にいこう。もっともっと応援しよう。

負けを承知で挑むから楽しいということもあるのかもしれない。札幌は弱小チームだった。エレベータークラブだった。だからこそ、応援してきた。だから、この決勝は悔しかった。
あの時に私の感情を表すのは根本敬の名言「でも、やるんだよ!」という言葉だった。

ある意味さ、負け戦を承知で何かその大きなものに挑んでるっているようなさ、ものは感じていたわけね
カウンターカルチャーでもサブカルでも何でも良いんだけれども自分たち周辺の人間たちが、それこそナリワイにしている悪趣味の連中にしても何にしても、どっか世間的な意味での成功者には成りにくいと思う 将来はもしかしたら本当に食えなくなったりとか、野垂れ死にするかもしれないけれども、でも、生きてる限りはやっぱりね、自分にはそれをやり続けるしかないんだっていうで、挫けそうになる時に「でもやるんだよ!」って言葉に支えられるんですよ、みんな
そういう人達によって、日本のね、それこそサブカルチャーは成り立ってるわけですから

『ニッポン戦後サブカルチャー史Ⅲ』 サブカルチャーが迎えた「世紀末」(根本敬)

コンサドーレは悪趣味でもなんでもないし、のたれ死ぬまでやる必要はないのかもしれないけど、サッカーチームを応援するということは理不尽なことが多い。理不尽だから悔しい。だからこそ、「でもやるんだよ!」なのじゃないかと感じてる。

これからも進もう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?