見出し画像

防災訓練〜いざという時のために頭も心も準備する 【週刊新陽 #126】

日本初のブラックアウトが起きた北海道胆振東部地震(2018年9月6日)から5年。

死者・行方不明者は10万人を超え全壊・全焼した民家は約29万棟という甚大な被害をもたらした関東大震災(1923年9月1日)から100年。

何年経ったかは本来は関係ないのだとは思いますが、人間は忘れていく生き物。災害の経験と教訓を伝え続け防災・減災に活かすためにも、5年や100年という区切りのようなタイミングで改めて過去から学ぶことは大切だと思います。

9月8日(金)、新陽高校では今年2回目の防災訓練を行いました。


型を身につけ実践に活かす

前回6月の防災訓練は、理科室からの火災を想定した流れで行い、避難場所は雨のため体育館でした。

今回は道内を震源とする地震の5分後に校内で火災が発生したという設定。お天気に恵まれたので、校庭への避難を実行することができました。

コロナ禍でここ数年なかなか実践的な訓練はできなかったものの、それでも動画教材を使ったり、リモートでのシミュレーション訓練を行ったりしてきました。でもやっぱり、授業中に地震が起きたらどうするか、その後、火災が起きたらどこにどうやって逃げるか、「いざ」という時に実行できるように、実際にやってみることが大切だと思っています。

だから、訓練の目的は「避難の『型』を実施し覚えること」としました。

防災訓練はなんのため

この目的のもと、今回掲げた目標は2つ。

1つ目は、安全に全員が逃げること。
そして2つ目は、全員の安全を正確且つ迅速に確認すること。

まず安全に全員が逃げるには、避難経路や避難方法を知っておくこと、そして騒がず慌てず冷静に対応できるようになっている必要があります。それぞれが「自分の命は自分で守る」という意識で行動することが重要です。

とは言え、どんなに想定したり練習したりしていても「まさか」は起こります。2011年の東日本大震災では「想定外」の事が相次いだと言われていますが、特に甚大な被害を受けた東北の被災地の方々からお話を聞くと、実は「日頃から災害を想定して訓練をしていた」地域こそ被害が最小限に留まったり多くの方が助かったりしたのだそうです。

まさかの時に一人ひとりが冷静に考えて行動し自分の命を守ることが何よりも大切で、そのための知識と心の準備を日頃からしておくこと。それが防災訓練の目的だと思います。

また、教職員側で言うと、全員の安全を確認するシステムを作っておくことも欠かせません。在籍している生徒の把握は難しくありませんが、その日登校している生徒が誰か、早退した生徒はいないか、正確に確認できる仕組みをデジタルとアナログ両方で可能にしておかなければなりません。

もしかすると、災害が起きたタイミングで、たまたまトイレや保健室に行っていて教室にいない生徒がいるかもしれないので、そういった生徒の逃げ遅れを防ぐと同時に不明者の有無を明らかにするのも防災訓練のポイントです。

さらに、新陽は連携先の企業の方や視察のお客様などがいらっしゃることも多いので、生徒や教職員はもちろん、外部の方の安全を守ることも考えておかなくては、と思いました。(今回、防災訓練の時間帯にインターンの大学生と連携企業の方がいらっしゃったので、一緒に参加していただきました。)

秋の空のもと、校庭へ避難
「焦らず急ぐ」

まちなかサバイバル

自然災害が多いと言われる日本。子どもの頃から防災の意識を育むと同時に、自然環境や社会が変わる中で防災知識もアップデートしていく必要があると思っています。そして、そういう感覚を持っている若者が多いと最近感じます。

この週末、「防災」をテーマに活動する高校生が札幌にいます。

活動の場は、札幌都心の公共的空間の未来をつくる実証実験と、市内高校生の探究課題の実践報告を兼ねたSAPPORO PLACEMAKING(創造的な居場所づくり)。大通公園とサッポロファクトリー、二条市場で開催します。

市立高校の生徒さんたちを中心とした『まちなかサバイバルスクール』と称したチームは、サッポロファクトリー(サッポロ不動産開発株式会社)の全面協力のもと「学ぶぼうさい」「食べるぼうさい」「作るぼうさい」をテーマにブースを展開。

高校生が大人を巻き込み本気で取り組むまちなか防災、楽しみです!

〜『まちなかサバイバルスクール』のコンセプト〜

たのしくたいけん

災害は、ある日突然やってきます。ふだんからモノを備えておく必要があります。それだけでなく、備えたモノを使ってみたり、被災時の思いがけない出来事にどう対処するか、訓練しておくことが重要です。”ぼうさい”への本当の心の備えを、ゲームなどで、たのしく、たいけんする機会をつくります。

しぜんとのかかわり
札幌は、まちなかのすぐちかくに、豊かな自然があるまちです。山や川、海や森、そしてそこに暮らすたくさんの動物たち、木々などの植物、畑や果樹園の作物もたくさんあります。この札幌の魅力のひとつである、しぜんとのかかわりは、まちなかにいるとなかなか感じられませんが、しぜんとかかわるなかで得られる”ぼうさい”の知識や能力はたくさんあります。

ひととのかかわり
この企画は、札幌に暮らす高校生たちが企画しました。高校生たちが、大人たちや企業とかかわり、札幌ファクトリーを訪れるたくさんのひとたちとかかわるために、高校生同士かかわり合いながら、アイデアをねってきました。ひととのかかわりは、”ぼうさい”のチカラになります。高校生が考える、災害時にも生き抜く力を学ぶプログラムは、小さいお子さんから大人まで楽しめるプログラムになっています。

【編集後記】
防災訓練の後のある日、1年生の教室を覗くと芥川龍之介の短編作品『ピアノ』を扱った国語の授業を行なっていました。『ピアノ』は、関東大震災後の横浜・山の手の荒廃した街の中で壊れたピアノを主人公が発見するところから始まる物語です。新陽の生徒からすると時代も地域も全く違う世界の物語で、「全然わかんない!」などと言いながらもなんとか情景を想像し、そこにあるメッセージを拾おうとしている姿が印象的でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?