見出し画像

主体性が発揮される場所 【週刊新陽 #34】

先月に発刊されたばかりの『選手主体の時短練習で花園へ・静岡聖光学院ラグビー部の部活改革』を読みました。

著者は、静岡聖光学院中学ラグビー部監督(高校ラグビー部前監督)の佐々木先生。北海道出身の英語の先生です。

メディアで取り上げられることもある静岡聖光ラグビー部の時短部活ですが、どうやって今のスタイルができたのか、なぜ生徒さんたちが主体的であるか、を知ることができました。(2019年のTEDxHamamatsuでのトークも素晴らしいのですが、この後さらに進化したというからすごい。)

昨今、部活動の見直しや部活改革という言葉をよく聞きますが、学校という学びの場において部活はどういう意味があるのかをあらためて考えたくなる一冊でした。

Kids Baseball Festival in SHINYO 開催!

11月20日(土)、新陽高校初(そしておそらく北海道初!)の男子・女子硬式野球部による小学生向け野球教室が開催されました。
※北海道で女子硬式野球部があるのは、駒大附属苫小牧高校と新陽の2校だけです。

新陽の生徒たちの、生徒たちによる、子どもたちのための企画です。

画像1

※イベント・申し込みは終了しています。

SNS等で呼びかけたり近隣の野球チームにお声がけしたりしたところ、なんと申込数が160名を超えました!

当初、定員100名設定としてはみたものの「50名集まったらいいねー」などと言っていた予想を遥かに超え、うれしい悲鳴となりました。

当日もほとんどキャンセルは無く、集まってくれた大勢の小学生の熱気で、冬空の下の札幌スタジアムの温度が少し上がったような気がしました。

画像10

イベントの最後に集合写真。
「野球は楽しいか!?」「イェーイ!!!」

自分のためから、誰かのためへ。

男子硬式野球部の顧問であり、新陽独自の分掌・CC(コミュニケーションセンター)で部活動を担当する小崎達也先生から、「子ども向けの野球教室をやってみたいんです。」と相談を受けたのは、10月後半。

聞くと、男子・女子硬式野球部主催で小学生のためのイベントを実施したい、企画から運営まで生徒主体でやります、とのこと。

実施までのスケジュールや当日のタイムテーブル、役割分担、注意事項までしっかり練られた要項が既に作成済みで、「いいね。やろう!」の一言でした。

そこから約3週間、野球部の生徒たちによる準備が進んでいきました。

何度もミーティングを重ね、当日が近づくにつれて気分が盛り上がるのと同時に、どんどん参加者が増えて緊張も高まっていったようです(笑)。

画像3

イベント2日前の11月18日、女子硬式野球部の公式Facebookにこんな投稿がありました。書いたのは、顧問の青山真里子先生です。

【kids baseball festivalまであと2日】
いよいよあと2日となったkids baseball festival
昨日、申し込みを締め切り、160名の小学生が参加してくださることに。
嬉しすぎる感情と同時に、しっかり楽しんでもらいたい!成長してもらいたい!という気持ちが強まっています。

そんな今日は男子野球部と一緒にシュミレーション。
『もっとこうしたらいい!』
『これが必要!』
『こうやって伝えたらわかりやすいよね』
などの会話が増えていました‼︎

この経験が、自分たちの技術アップにも繋がる。
とても大切なアウトプットの時間。
男子の価値観
女子の価値観
人それぞれ考え方があり
捉え方がある
互いに理解して
尊重し、高め合う
なんて素敵な部活動の時間だろうと
見守っていました。
主体性ってこういうことを言うのだと!
11/20が楽しみです

そして迎えた当日。

引退した3年生や、野球部の保護者の方々もサポートに駆けつけてくれました。「小学生に楽しんでもらいたい」という生徒たちの想いがみんなを動かしたのだと思います。

参加してくれた小学生は、野球経験者も未経験者もいて学年も様々でしたが、野球部の生徒たちは一人ひとりに寄り添って、コミュニケーションをとっていました。

画像5

じゃれあって和ませているかと思えば、真剣にフォームのアドバイスをしている姿もあり、とても頼もしかったです。

ひととおり小学生向けの指導が終わると、最後は新陽生によるパフォーマンス。小学生とその保護者の方々がスタンドから見守る中、公開練習しました。こんなに大勢の人に見られることなんて稀で、かなり気合が入ったに違いありません(笑)。

男子と女子が一緒に練習することも普段はないですし、今回体験した一つ一つのことが全て、生徒たちの貴重な体験となったことでしょう。

上着を脱ぎ、掛け声をかけながらグラウンドに散らばるみんなの背中が、一回り大きく感じました。

画像4

小学生たちに感想を聞くと、「たのしかった!」「高校生がわかりやすく教えてくれたので上手くなったと思います」「やさしくしてくれた!」など、大好評。

さらに、何人もの保護者の方から「すごくよかったです。また是非やってください!」というお声もいただきました。

この日の気温は7℃。夕方になりさらに気温が下がり体も冷えていたと思うのですが、生徒たちは疲れも見せず笑顔で小学生を見送ったあと、グラウンドの整備をする様子はなんだか嬉しそうでした。

画像7

そして、実は誰よりも嬉しそうだったのが顧問の先生たち。「あんなにやれるなんて。」「こんなに短期間で成長するものなのか。」と感動していました。

小崎先生に話を聞くと、とにかく今回は生徒たちに任せてみよう、と思ったそうです。とはいえ、考えれば考えるほど生徒たちからはやりたいことが出てきて収拾がつかなくなるし、試行錯誤しながら、正直なところ当日まで不安が残ったとのこと。

それでもやりきれたのはなぜか。それは、生徒たちが目的を見失わなかったから。そしてその目的が、自分のためではなくて誰かのためであることが大きかったのではないか、と小崎先生。

これまでは自分が楽しむことや自分の成長のことばかり考えがちだった生徒が「小学生がどう楽しめるか」を考えて主体的に動き、男子・女子野球部みんなで協力したことが、今回の成功の要因であり、生徒たちの成長に繋がったと思う、と。「この経験を経て、どう頑張るかがこれからきっと変わってくる、と楽しみにしているんです。」と話してくれました。

画像13


本気で勝ちたいからゲームを学び、ゲームで学ぶ。

キッズベースボールフェスティバルと同じ11月20日、第4回全国高校eスポーツ選手権・フォートナイト部門の全国予選決勝大会が開催されました。

新陽生も出場し、決勝大会への進出が決定しました!東北・北海道エリアからは唯一の決勝進出です。

決勝大会は、12月19日(日)。応援よろしくお願いします!


新陽のe-sports研究部は、現在の教頭であり理科教員である平中伸英先生が化学の授業中にした雑談をきっかけに、2018年、e-sportsに興味がある生徒たちによって発足しました。

主体性や実行力、考える力やチームワークなどの社会人基礎力と、ICT活用スキル(これも今や社会人基礎力の一部のような気もしますね)を学ぶことができる、ということで、現在では部活動だけではなく一部の授業でもeスポーツを行っていて、顧問の先生たちも常に研究しています。

画像13

ゲームを楽しむだけではなく、ゲーム (eスポーツ)を科学的に考え、理論を元に訓練し、結果を検証することを目的にしているのが新陽のe-sports部の特徴。・・・というか、平中先生によるとそれは当たり前のことで、やみくもにゲームをやっても勝てないのだそうです。

ちなみに私の持論として「本物に触れること、本物で学ぶことが大事」と思っているのですが、本格的なゲーミングパソコンが揃っていたり、一流のゲーマーや企業の方が指導に来てくれたり、生徒たちが真剣に取り組める環境が整っています。

画像9

eスポーツにも様々な種目があり、新陽のe-sports研究部はいくつかの種目でこれまでも全国大会に出場しています。

顧問の一人、三好拓人先生に強さの秘密を聞いてみると、こちらもやはり主体性がキーワードのような気がしました。

娯楽でやっている子もいるものの、試合に出る生徒たちは「いかにして勝つか」の作戦を立て、シミュレーションを繰り返すのだそうです。

自分でゴールを設定し、実際にやってみて結果を検証する、というPDCAを回すのですが、それ自体を顧問が指導しなくても自走できるようにするのがe-sports研究部のポリシー。

先生の役割は、あくまでもコーチングであり、答えは教えない(そもそもゲームに「たった一つの答え」はない)。

とは言っても、いきなり皆が自立するわけでも自力で仮説検証できるわけはないので、部活中など日常の他愛無い会話においても、生徒一人ひとりが自分で解を導けるように心掛けているとか。(まだまだです、と謙虚な三好先生に、強いチームの顧問らしくポーズを決めてもらいました・笑。)

画像9

ミーティングの設定からファシリテーションまで生徒に任せたり、生徒同士がフィードバックし合って切磋琢磨する仕組みを設計したり、新陽の探究学習でも度々見られる場面ではあるのですが、自分の好きなゲームで「勝ちたい」というモチベーションが、自然と主体性を発揮させるのだろうな、と思います。

【編集後記】
新陽では部活動の加入は自由です。つまり、生徒たちは自分がやりたい活動を自発的にやっています。だからこそ、目的を自分で決めて達成に向けて進む主体性を伸ばす場であってほしいと思っています。
そのために、「なんのための部活か」「どうなりたいのか(なってほしいのか)」を考えることも大切にしていきたいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?