みんなが安全安心に居られる学校づくり 【週刊新陽 #93】
北海道の冬休みは関東と比べるとだいぶ長いです。今年の新陽高校の冬休みは12月24日〜1月16日の24日間でした。
久しぶりに生徒たちが登校してきた17日(火)、札幌では今シーズン一番の冷え込みになりました!
今週末はさらに厳しい寒さになり、そして来週は"最強寒波"が来るとの予報。北海道に限らず全国で大雪が降るそうです。
皆さん、くれぐれもお気をつけください。
一人ひとりを尊重する教室のルール
さて昨年のnoteでご報告した通り、11月にオランダの小学校・中高一貫校を視察してきました。
そこで私が気になったもの。それは教室に貼ってあるルールです。
内容は「時間を守る」「静かにする」あるいは「互いに敬意を払う」など、日本の教室で目にするものとあまり変わりありません。でもよく見ると主語が生徒と教員になっていたり、子どもが自分たちで書いた紙だったり、日本の学校のそれとは少し違う感じもします。
各校の先生によると、ルールは学校や教員が一方的に押し付けるものではなく子どもと一緒に考えるものとのこと。
結果としてはだいたい同じような内容になるらしいのですが、大事なのはみんなで一緒に決めること。ルールというよりアグリーメント(合意)だと説明してくれた先生もいました。
もちろんオランダの子だっておしゃべりは好きだしゲームもします。視察中、授業中に注意されているのを何度となく見ましたが、先生は大きな声で叱ったりせず、チラッと視線を送ったり指でトントンと合図したり。
大抵の子どもはそこで気付いたり周りの子に促されてハッとしたりしますが、それでも直らない場合ははっきり注意され、授業の邪魔になるので教室から出て行くように言われている子もいました。このやりとりが成り立つのは、みんなで合意したルールがあるからでしょう。
先生と生徒、そして生徒同士、一緒に学ぶ共同体としてお互いをリスペクトするという原則に基づいていると感じました。
トイレにも選択肢を
新陽では現在、校舎の改修に向け準備を進めています。新陽ビジョン『人物多様性』を実現するインクルーシブでサステナブルな校舎になるように、アイデアを出しながら設計事務所の方々と意見交換しているところです。その流れで先日、他施設の視察に行ってきました。
様々な空間やデザイン、利用方法や使い勝手などヒントをたくさん得られたこの視察中に、意識的に見たものの一つがトイレ。
性別に関係なく誰でも利用できるオールジェンダートイレや様々なニーズに対応するバリアフリートイレなど、実験的なトイレが設置されていたり実証研究が行われたりしていました。多様性を認め合う共生社会へ向けて今まさに過渡期だと感じます。
海外では近年、公共施設を中心にオールジェンダートイレの導入が進んでいると聞きます。
実際、先日行ったオランダの学校にもオールジェンダートイレがありましたし、2019年に訪れたフィンランドの図書館では、ジェンダーに関する表示がそもそも無く「トイレ」と掲げられているドアを開けて中に入ると個室がたくさん並んでいました。
また国内では、国際基督教大学(ICU)が2020年9月にオールジェンダートイレを導入。その記事で、ICU学生部長の加藤恵津子教授の「全ての人が安心できる『選択肢があること』がとても重要」という言葉が印象的です。
プライバシーの問題や宗教など、「全ての人が安心できる」ために考慮すべき切り口はジェンダー以外にも様々。ICUでは全てのトイレがオールジェンダートイレになったわけではなく、男女別のトイレも残っていて、それも含めて『選択肢がある』状態を作ったそうです。
以前、性の多様性についての授業の中で「LGBTQ+の生徒も安心安全に学べる学校とは」をテーマにアイデアを出し合ったところ、トイレについて生徒から様々な意見が出ました。
校舎改修をきっかけにハード・ソフト両面において様々な視点に立ち、全ての人が安全安心に過ごせる学校づくりに取り組んでいきたいと思います。
「居心地いい」環境はみんな違う
今回の視察で伺ったドルトン東京学園に面白い空間がありました。半円のような形をしたカーペット張りの部屋で、壁は全面ホワイトボード、机や椅子はなくランダムにクッションが置いてあるだけ。
この部屋に3人の生徒さんがいたので話を聞いてみると、英語の授業中で課題に取り組んでいるとのこと。居心地がいいので、この部屋を先生に抑えてもらったそうです。
オランダ視察中に訪れた学校でも、いろいろな場所で思い思いに過ごす子どもたちの姿が多く見られました。机の形や椅子のデザインが揃っていないのも日本の学校とは違う点かもしれません。
あらためて、「居心地いい」環境は一人ひとり違うのだと感じます。だからこそ、空間に限らず、ツールやプログラム、誰と学ぶかといったコミュニティに至るまで、学習環境に選択肢があることが、ビジョン『人物多様性』の実現に欠かせないと考えています。
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