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《卒業記念インタビュー Part2》 「本気で挑戦する人の母校」は自分らしく挑戦できる場所 【週刊新陽 #49】

1週間前に実施した卒業式当日、「本気で挑戦する人の母校」という新陽高校のスローガンが書かれたボードが玄関に置かれ、記念写真スポットとなっていました。

卒業記念インタビュー第2弾は、このボードを書いてくれた特進コースの池内太陽さん。

2016年に始まった『本気で挑戦』ボードですが、コロナ禍の2年間新調されていませんでした。ある日、書道の先生で書道部顧問でもある長澤正美先生に「今年、ボードを新しく制作してもいいですか?書かせてあげたい生徒がいるんです。」と相談されました。それが太陽さんです。

彼は、1年生の時に全国高等学校総合文化祭(いわゆる全国大会)に北海道代表として選抜されるという快挙を成し遂げ、全道高等学校書道展の北海道高等学校文化連盟賞には何度も選ばれた逸材。

卒業式の前日、長澤先生と一緒に話を聞かせてもらいました。

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自分らしく過ごそうとした3年間


-- 『本気で挑戦』ボードの制作ありがとうございました!いよいよ明日は卒業式ですが、新陽での生活はどうでしたか。

充実した、平凡じゃない3年間を過ごすことができました。新陽に入ってよかったと思っています。

実は、もともと新陽は第一志望ではなかったんですけど・・・兵庫県神戸市で生まれ育って、中学3年の夏に「北海道で暮らそう!」と父が言い出して家族で引っ越してきたんです。そのため札幌の高校のことは全く知らなかったのですが、受験情報誌で調べていたときに新陽が目に止まり、オープンスクールに参加しました。

先輩たちの雰囲気も良くて書道部もあって、自分らしく学校生活を楽しめそう、という印象でした。小中学校のときは平凡な生活を送っていたので、高校ではもう少し個性的に過ごしたいと思っていました。

親は公立に行って欲しいと言っていたので第一志望は公立高校でしたが、結局新陽に来たことは、自分にとってよかったです。


-- その中心にあったのは、やはり書道ですか?

3年間頑張ったのは、書道と英語です。

書道では全国大会にも出ることができたり、英語はGTEC(ベネッセの英語4技能検定)で校内順位の上位に入れたり、自分がやりたいことに熱心に取り組んで結果を出すことができたのは、すごく自信になりました。

将来は書家としてやっていくのが理想ですが、現実的に考えた時、書道ひとすじでいくのはたぶん難しい。書道で食べていける人は、ほんのひと握りです。

だから、英語の教員をしながら書道を続けたいと考えています。小学校1年生の時の担任の先生が好きだったので以前から教員という仕事にも関心があり、理想と現実を一番いい形で両方叶えるにはこれだ、と思いました。

そのために大学は大東文化大学を選びました。英語の教員の免許が取れて、書道部も活発だからです。実は「平成」や「令和」の元号発表のときの書は、大東文化大の卒業生が揮毫していて、国内だけでなく世界的にもレベルが高いことで有名です。

書道で想いを表現する


-- 書道の先生をしながら書家でいる、のではないのですね。書道と英語、一見つながりがなさそうですが。

将来は、海外で書家としてやっていきたいと思っています。

高度経済成長期以降に強まった日本というブランドが、衰退している気がするんです。一方でマンガやアニメ、ニンジャやサムライなど、いろいろなところで広まっているジャパンカルチャーもある。そういう中で、書道はまだ浸透していないというか根付いていない気がしています。芸術分野としてもっと知られて欲しい。海外で日本の書道文化を広めるのが夢です。

いつか、海外の芸術と組み合わせたような作品も書いてみたいですね。武田双雲さんのように、カラフルな画材を使ったり絵画と書が融合した作品だったり、いろいろ挑戦してみたいです。

こうやって考えるようになったのは、北海道の書のスタイルに出会ったことも大きいと思います。表現の幅が広い北海道の書道は、自分に合っていたのかもしれません。

(補足)長澤先生によると、地域によって書道の雰囲気が違うのだそうです。神戸出身の太陽さんは関西風の書で育ちました。関西と北海道では使う道具も技法も違い、どちらかと言うときっちりとした関西の書に対して北海道は自由で大胆なイメージ。高校1年生で北海道代表として全国に選ばれた太陽さんですが、それはつまり中学生の時まで身につけた関西スタイルの書を封印し、3ヶ月あるかないかの間に新たなテクニックを手に入れながら自分を表現した、ということなのです。彼の研究熱心さと分析力、そして集中力がすごい、と長澤先生が褒めていらっしゃいました。

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(▲太陽さん2年生の時の作品「裴将軍詩」。中央校舎の4階に上がる踊り場に飾られています。)


-- 北海道のスタイルに変えることは難しくありませんでしたか?

作風は地域によって異なりますが、書道の基礎中の基礎は共通していると思っています。小学校2年生の時からずっと書道をやっていて、基礎ができていたから北海道のスタイルにも順応できたのかな、と思います。

長澤先生が話してくださった分析力ですが、意識的にやっているというより無意識でやってしまっている、という感じです。母が画家で、小さい頃からよく絵画を観察していたので、細かいところを見るのは癖のようなもの。

「どんなところでどんな書体が使われているのか」と観察したり、「どんな書体だと人に伝わりやすいのか」考えたり、時々面倒くさいと思うこともありますが(笑)、でも気づくと色々考えている自分がいます。


-- 太陽さんにとって、書道とはなんですか?

自分の想いを伝えるツール」だと思っています。だから、書の伝統も大切にしながら、自分の個性も出したい。個性とは、たとえば線の太さや濃さ、形などです。

全ての文字に、作品の中で役割があります。

『本気で挑戦』ボードのように、漢字もかな文字もあってストレートなメッセージはそのまま受け取られがちですが、そういうものこそ伝えたい意味や一つ一つの文字の役割を考えながら書くことが大切だと思っています。

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(▲今年の1年生が着たYOSAKOIソーランの法被の背中の「新陽」の文字も、太陽さん作です。)

挑戦する仲間たち、そして後輩たちへ。


-- 『本気で挑戦』ボードに込めた想いを教えてください。

実は、入学する前に「本気で挑戦する人の母校」というキャッチフレーズを最初に見た時、「何を言ってるんだろう?」という気持ちになりました。

でも新陽で学んでいるうちに、このメッセージに託された思いが分かってきた気がしました。だからこれまで書道部で制作されてきたこの書を「書いてみないか」と言われた時、すごく嬉しかったです。

新陽には本当に多様な生徒がいます。活発な生徒も多いし、みんな自分のタイミングでいろんなことに挑戦している。そういうみんなを体現するような、勢いのある作風にしたかった。他にない機会をいただいたことに感謝して、心を込めて書きました。

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(▲2016年から続く『本気で挑戦』ボード。書道部の生徒が書いているのは2017年から。入学式には新入生を迎え卒業式では卒業生を送る伝統のボードとなり、普段は校長室で大事に飾ってあります。)


-- 最後に、後輩たちへメッセージをお願いします!

大学受験や何かに挑戦する時など、高校生活の中では大きなハードルが何度かあります。そういう時、集中してやることも大事だけど、緊張と弛緩を両立できるといいのではないかと思います。

今の社会で生きていくには緊張も必要だとは思う。でも、気持ちを緩ませることも意識してほしい。ずっと緊張していると飲み込まれてしまうから。

例えば、実力考査に合わせて集中して勉強して、テストが終わったら緩めるなど、自分はそのタイミングをむしろ活用していた気もします。

書道について言えば、場所も取るので家の中でゆったり書くことは難しく、高校では、部活動の日に集中状態にもっていく感じでした。コロナ禍になってからは簡単ではありませんでしたが、登校する予定に合わせて先生たちが時間や場所を確保してくださったので、書き続けることができました。

それから、やっぱり新陽生には自分の個性を持っていてほしい。個性を大事にして欲しいです。

自分のペースで挑戦できるのが新陽。

『本気で挑戦する人の母校』というスローガンは、「本気で挑戦しなさい」ということではなくて、本気で挑戦したい時に挑戦できる、挑戦しようとすると応援してくれる先生や周りの仲間たちがいる、ということだと思っています。

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【編集後記】インタビュー中こちらをしっかり見ながら丁寧な口調で話してくれました。堅実で誠実な印象の内に秘めた熱い想いが、力強く大胆な書として現れているように感じました。実は、高校受験時には新陽が第一志望ではなかったという生徒も一定数います。でも卒業するときには「新陽で良かった」と言ってくれる生徒が多いのは、「自分のタイミングで自由に挑戦することができた」とか「挑戦を応援してくれる仲間や大人たちが周りにいた」からなのかな、と太陽さんの話を聴きながら考えていました。一人ひとりの個性を大切に、生徒が輝ける学校づくりをこれからも続けていきたいと思います。

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