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問題が見えた時こそ対話を。「中つ火」で高まる心理的安全性 【週刊新陽 #136】

今週前半、藻岩山を見ると山肌が白くなっていました。いよいよ冬です!

10月に焚き火を囲んだ『中つ火を囲む会(通称:中つ火)』。今月はいつものスタイルに戻り、職員室で対話しました。リクルートHITOLABの福田さんのファシリテーションで「自由」と「規律」がテーマです。

なお、この日は宮城県の公立高校3校から7名の先生が視察にいらっしゃっていたので中つ火にも参加いただきました。

「自由と規律」とは?

自由の尊重と規律の遵守

今回のテーマ、実は先週の公開授業研究会から繋がっています。11月14日(火)に、北海道大学大学院教育学研究院の守屋教授を講師にお迎えして行った「協同的な学び」の研究会で、あることが話題に出ました。

それは、新陽高校が大事にしている個性や自由の尊重と、誰もが安心して学ぶ場のために規律やマナーが守られる状態をどう両立するか。

守屋先生から投げかけられた言葉は、「自由を得て解放された新陽生が求めているのは、本物の学び、真正(オーセンティック)な学びではないでしょうか。授業中に気になる態度があるとすれば、それは生徒が授業に満足していないからかもしれません。」というものでした。

守屋先生曰く、「人は元来、学びたい生き物。だから学びたいことがあれば生徒は学ぶ。逆に言えば、落ち着かないのは学ぶことを欲しているのに満たされていない"飢餓状態"とも見ることができる」。規律を守らせることばかりに気を取られず、皆が学ぶ喜びを感じる授業づくりの本質と向き合ってみよう!というメッセージでした。

そこで、今回の中つ火では、「べき」論ではなくそれぞれの「こうありたい」をリフレクションし、授業規律などのルールや約束事について教員同士で目線合わせするための対話をしようと考えました。

他人の靴を履く

そこで今回取ったアプローチはロールプレイ

3〜4人のグループに分かれ、企業でよくありそうなケース(事例)として「職場のルールが形骸化している」という設定を使い、ルールを守っていない人、それを不満に思っている人、守らない部下を注意しない上司、という3人を演じます。

さすが、新陽の先生たちはノリが良い(笑)。すっかり役になりきって"心の声"まで呟いたり、ケースのシナリオにないその先のストーリーまで作ってしまったり、各グループのロールプレイは大いに盛り上がりました!

その後、それぞれ演じてどう感じたかを、意見・経験・感情・価値観のフレームワークを使ってリフレクション。

「価値観が違う人同士が自分の価値観で相手の行動を判断している。それをどう擦り合わせるか。」「3人それぞれの『まぁいいか』が積み重なって、諦めや怒りに変わっている。」など、色々な発見がありました。

後半は、舞台を「どこかの企業」から「新陽高校」に移します。

新陽で起きている事象を各グループで思い浮かべてケースとして置き換え、『不満を持っている側』と『不満を持たせてしまっている側』に分かれてロールプレイ。それを受けて「今の自分の立場で、事態をよくするためにできることは何か」対話を行いました。

取り上げられた問題、それをロールプレイして気付いたことや出来そうなアクションは、例えば以下のようなことです。

  • サンダル履き禁止守られない問題:その規則ができた理由を知ることが大切。ルールには理由がある

  • 教室の机の中に残されるゴミ問題:声がけだけでなく、物理的な解決や仕組みによる解決も検討する

  • 16:45に帰っていいのか問題:個々人の事情を知ることで印象は変わる

  • データ入力の締切過ぎる問題:実際に別の立場を体験(ロールプレイ)することで見えてくる景色がある

他人の靴を履く(put oneself in someone’s shoes = 誰かの立場になる)という英語の慣用句がありますが、まさにその通り、2度のロールプレイで役になり切って考えたり感じたりしたことで、単に想像するよりも気付きが深まったように感じます。

最後に、今日の感想をシェアしてチェックアウト。

福田さんから「自由も規律もある意味『手段』に過ぎない。何が目的なのか、ビジョンに基づき議論することが大切。」とメッセージがあり、今月の中つ火は終了しました。

価値観が近い人、遠い人

今月の中つ火は、対話のグループ分けに一工夫加えてみました。いくつかの質問に答えて行動傾向や価値観を診断するツールのようなものを使って、同じ分類になった人同士で集まって対話を行いました。

分類は4つ。
・「解決策を早く明確にしたい」現実タイプ
・「斬新なアイデアが欲しい」社交タイプ
・「無理のない解決をしたい」友好タイプ
・「完璧に計画を立てたい」理論タイプ

最初から最後までこのグループで対話してみたところ、いつも以上に会話が盛り上がっていたように感じました。価値観が近いと「何を言っても大丈夫。理解してもらえる」という安心感があって意見が言いやすいのかもしれません。

同時に、価値観が違うグループの意見に対して「そのタイプはそうなるよね!わかる!」といった感想があり、違うタイプと認識していることで、むしろ客観的に、異なる考え方を受け入れられるようにも見えました。

最後のチェックアウトタイム。職員室は
あたたかくて和やかな雰囲気でした。

【編集後記】
冒頭、「自由と規律とは?」と福田さんが社会科の先生に振ると(新陽の先生と宮城県の先生が答えてくれました)、「社会契約そのものが壮大なフィクション!」や「規律を作る人間が自由になる。生徒が作るという最近のルールメイキングの流れは、まさに生徒が自由になること」などの話がスラスラ出てきました。これは社会科でそのまま扱えるテーマであり、今回の対話、生徒同志や生徒と教員でやってみても面白そうだな、と思っています。

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