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宮沢賢治 来道100年展 【週刊新陽 #160】

5月15日(水)から5月26日(日)まで、大通公園ではさっぽろライラックまつりが開催中。初夏の訪れを告げるイベントとして札幌の人たちにはお馴染みとのことで、特に週末はすごい人出でした。

そんな大通公園に宮沢賢治の詩碑を建てたい!、と活動している新陽高校の卒業生がいます。今週は、そんな先輩たちと一緒に在校生が行ったプロジェクトを紹介します。


宮沢賢治と北海道

『注文の多い料理店』『銀河鉄道の夜』『セロ弾きのゴーシュ』などの童話や『雨ニモマケズ』の詩など、多くの人が何かしらの宮沢賢治作品に出会ったことがあると思います。

でも、宮沢賢治が37年という短い生涯の中で、北海道を3回、訪れていたことを知っている方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。

今年は、賢治が花巻農学校の教師として修学旅行の引率で北海道を訪れた1924年(三度目に来道した年)から100年という節目。そこで実際に賢治が100年前に札幌市を訪れた5月20日・21日の同日に、札幌市役所にて『宮沢賢治 来道100年展〜賢治と北海道の軌跡を再び〜』が開催されました。

主催したのは「猫の事務所 札幌支部」と新陽高校の宮沢賢治プロジェクトチーム。「猫の事務所 札幌支部」は、在学中に宮沢賢治プロジェクト(宮沢賢治文学を研究する会)を進めていた新陽の探究コース卒業生による任意団体です。

※「猫の事務所 札幌支部」メンバーの在学中の活動は以下
2022年5月 高校生が考える宮沢賢治展@サツドラ北8条店
2022年8月 高校生が考える宮沢賢治展@札幌市役所市民ホール
2023年2月 高校生が考える賢治と北海道展@もりおか啄木・賢治青春館

今回の展示会の案内文にはこのように書かれていました。

展示の内容は、主に賢治直筆の複写原稿で、「修学旅行復命書」のほか、修学旅行中に書かれた心象スケッチ全作品、そして「札幌市」を展示いたします。
修学旅行中に書かれた心象スケッチがすべてそろった状態で展示されるのは北海道初となっております。また、絵本作家のあべ弘士氏が心象スケッチ「札幌市」の書き下ろしイラストを制作し、こちらも初公開となりますので、ぜひ足をお運びいただけますと幸いです。

これらの貴重な資料を提供くださったのは、宮沢賢治記念館、株式会社林風舎、佐藤国男さん、あべ弘士さん。また、東京書籍株式会社の協賛、札幌市・札幌市教育委員会・株式会社サツドラホールディングスの後援により、開催することができました。

世代を超えたプロジェクト

今回のイベントは、卒業生と在校生が一緒に取り組んだ初めての企画です。卒業してもプロジェクトを続けている先輩たちの活動に参加してみないか、と運営ボランティアスタッフを募集したところ1年生3名、2年生9名、3年生2名の計14名が手を挙げました。

参加理由は、「宮沢賢治の作品が好き」「宮沢賢治について知りたい」「何かボランティア活動に参加してみたいと思っていた」などそれぞれですが、みんなでこのイベントを成功させようと、先輩たちに教えてもらいながら4月から準備を行ってきました。

いよいよ迎えた当日、「見に来てくださる方がいるのか」「ちゃんと接客できるか」と不安そうな生徒もいましたが、北海道新聞やテレビ北海道などメディアが取り上げてくださった効果もあり、2日間大盛況。

1日目は107名、2日目は200名、2日間で計307名という多くの方に来場いただきました。なお100人目の記念すべき来場者は、なんと札幌慈恵女子高校(新陽高校の前身)の一期生の方でした!

初日の朝、展示準備をする生徒たち。
ワクワクとドキドキでいっぱいでした。

今回、卒業生と在校生を繋いでくれた髙橋励起先生は、ご自身も宮沢賢治文学を研究されています。

新陽での宮沢賢治プロジェクトの始まりは2018年。励起先生のもと、当時の有志生徒が中心となって副読本『青の旅路 宮沢賢治と北海道』を制作・出版しました。2021年からは現「猫の事務所 札幌支部」メンバーによる探究活動と展示会の開催を、励起先生がサポートしてきました。

そして今回、来道100年という節目に、当時の賢治さんと同じ高校教師であるご自分が展示会に関わる想いを書かれたnoteも素敵なので、ぜひお読みください。

先輩たちの詩碑建立への想いを説明する生徒
(写真提供:髙橋励起先生)

『出会いと原体験』を創る

展示会を終えた生徒たちの感想の一部を紹介します。

宮沢賢治の事を学びたいという思いから今回応募しましたが、それ以上の学びと経験でした。卒業生の先輩方には本当に様々な視点からアドバイスやお話をしていただき、これからの糧になりました。 来てくださったお客様からは凄く細かく賢治の事について教えていただき、今後触れてみたい作品がいくつも見つかりました。

(1年次生徒)

何年か前に岩手の宮沢賢治記念館に行ったことがあります。その時は賢治さんについてあまり興味がなく、知識もありませんでした。記念館に行ったことがあるのに何も知らないのももったいないと思い、このボランティアに応募しました。また、いろんな人との出会いも経験してみたいと思っていました。
やってみた感想は、「大変だったけど、楽しかった」です。来場者の方に話しかけると、集中していたようで少しいやがられてしまったりもして、話しかけるのが申し訳なくなりました。ですが、僕の知らない知識や考え方をもった人たちから色々なお話を聞いていると、生で人から話を聞けるって幸せだなと感じました。またその分野の人達と繋がりがを作れたことは自分にとって大きな学び、経験になりました。

(2年次生徒)

宮沢賢治をあまり知らなかったけれど、活動を通して少し詳しくなれました。北海道のことだったから話の内容がわかりやすかったし、貴重な作品や話を聞くことも出来て勉強になりました。賢治さんの書いた文章は、色の表現が多く使われていたから、文なのに鮮やかに感じて良かったです。

(2年次生徒)

小さい頃よく賢治さんの作品を読んでいたことから懐かしい気持ちになり、少しでも力になれたらと思い参加しました。応募した時はこんなに大きな意味のある展示会だと思っていなくて、不安もありましたが、先生や先輩方がとても明るくアットホームな雰囲気だったので、楽しむことが出来ました。生徒はあくまでもお手伝いという形だったのですが、当日も、先輩方が積極的にお客さんに関わらせてくれたり、賢治さんについて説明してくれたりと私たちの学びの機会を優先して動いてくださった場面が多々ありました。とてもありがたかったし、メンバーとして一層頑張ろうと思えました。今回の展示会を通して、人との関わり方やその意味みたいなものが少し分かった気がします。とても貴重な体験が出来て良かったし、また機会があれば挑戦してみたいなと思いました!

(3年次生徒)

こういったプロジェクトに参加した生徒たちは、必ずと言っていいほど次のことを考え始めます。

「もっと賢治さんについて知りたい」
「今度は子ども向けの展示会をやってみたい」
「自分で企画を一から作ってみたい」

会場で会ったある生徒は、「新陽にはたくさん機会があって、何に挑戦するかは自分次第だと思います。今回これに挑戦してみてよかった。」と話してくれました。

チャンスは自分で選ぶことができる、さらには自らそのチャンスを創ることができる、それが新陽の『出会いと原体験』だとあらためて生徒たちに教えてもらった気がします。

「卒業生と出会えたのが良かった。もっと先輩と関わる機会を作りたい!」と言う生徒も多かったのですが、先輩たちもそれは一緒だったようです。

後輩を見守り、さりげなく手助けしながら、自分自身もイベントを楽しんでいた5人の卒業生。彼らが在校生だった時とプロジェクトへの想いは変わらないまま、でもあの頃とは違う余裕も感じました。

2021年3月に新陽を卒業した軍司かりんさんは、今回のプロジェクトメンバーで最年長。今は就職して社会人となり、大学にも通いながら、様々な活動に挑戦し続けています。

宮沢賢治来道100年後~賢治と北海道の軌跡を再び~

14人の高校生と卒業生5名のイベント、無事1日目が終了し、久しぶりのイベント終了後の空気感に浸っています…笑
朝から優さん(前校長で現在の副理事長)、聡さん(現理事長)、赤司さん(現校長)も来てくださり、1日目終了の段階で来場者数は107名。
平日のこの時間に足を運んでくださった皆さんに感謝の気持ちと、明日もぜひまた多くの方が来てくださったら嬉しいなと願う気持ちでいっぱいです。
今回、当日のイベント運営のメインは高校生。
1-3年生14名が参加したい!と、ポスターの配布作業から始まり、今日は、展示会準備、受付、来場者対応、展示物の監視、宮澤賢治について学ぶ時間など積極的に行動してくれていました。
キャパに対してスタッフの人数が少し多かったので、時間のあるタイミングで、イベント運営の組み立てやボランティア活動のこと、それぞれが感じていることなど様々なことを話す中で、私自身3年間新陽高校で学んできたワクワク感は、色んなところに繋がるなと高校生と話していて改めて感じました。
卒業してもこうして関われることが本当に嬉しいですし、やっぱりもっとこういう活動がしたい。お仕事と大学と、好きな活動と、自分のやりたいワクワクを信じて、時間をうまく使って成長していきたい。
高校生の真っすぐな姿勢から何か眠っていた少し動きづらくなっていた何かが動いた感じがします。

2024.5.20 軍司かりんさんのFacebookより
来場者の方と語り合うかりんさん
(写真提供:髙橋励起先生)

後輩から見たら「すごくてかっこいい」かりん先輩も、実は悩んだり迷ったりするのですが、そんな姿がなおさら、後輩たちの背中を押してくれるのかもしれません。

【編集後記】
新陽の宮沢賢治プロジェクトはまだまだ続きます。今回の展示会を行なったメンバーが、「宮沢賢治来札100年!開拓紀念のニレの広場に宮沢賢治の心象スケッチ『札幌市』の詩碑を建てたい!!」と署名活動中です。オンラインフォームでも署名いただけます。ぜひご協力ください!

「猫の事務所 札幌支部」メンバー&髙橋励起先生と。

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