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アイデアをカタチにする難しさと大切さを知った生徒の話 【週刊新陽 #125】

全国の中高生が学校の枠を超えてチームを組み、アイデア創造に挑戦する4泊5日のプログラム「MONO-COTO INNOVAT!ON」。

スポンサー企業から出されたテーマに対してデザイン思考を活用しながら革新的なアイデア作りに挑戦するのですが、アイデアを考えて終わりではなく、プロトタイプをつくってアイデアの価値検証まで取り組むのが特徴。最終日にプレゼン審査があり優勝チームを決定します。

今年は500名を超える申し込みがあり、予選を通過した80名の中高生が7月31日〜8月4日に都内で開催されたプログラムに参加したそうです。

北海道からただ一人、本選に参加した新陽高校・探究コース3年生の柏木優虎(かしわぎ ゆとら)さんに話を聞かせてもらいました。


一人で参加した4泊5日

-- MONO-COTO INNOVATIONに参加しようと思ったのはなぜですか?

学校で参加募集の案内を見つけて、デザイン思考が体験できるコンテストであることに興味が湧きました。探究コースの授業でもデザイン思考は学んでいましたが、外部のプログラムで実際に挑戦してみたかったんです。

どんなイベントだろう?と思っていたら、東京の友達がMONO-COTOを立ち上げたCURIO SCHOOLを知っていて「何年も続いているイベントだし、面白そうだよ!」と背中を押してもらいエントリーしました。たくさん応募があったと聞いたので、その中から選ばれて嬉しかったです。

-- 北海道からは1人だったと聞きました。

そうなんです。知り合いもいなくて、たった一人で北海道から参加することに不安はありました。

チームメンバーは事前に分かっていて、中2から高3まで学年に幅があるチームで自分が一番年上だったので、最初は大人っぽく振る舞おうと少しクールぶっていたのですが、初日の夜にあっという間にキャラ崩壊というか地が出てしまって(笑)。でも、そのせいか年齢関係なくみんながフラットに遠慮せず意見を言い合えるチームになれたと思います。

一度しっかりダメ出しされて

-- 5日間のプログラムで一番の思い出はなんですか?

中間発表でズタボロにされたことですね・・・。

今年のテーマは2つあって、そのうち「本屋の再定義(テーマスポンサー:丸善ジュンク堂書店)」に僕たちのチームは取り組みました。

わりとすぐに「本好き同士をマッチングするアプリ」というアイデアが浮かんだので、アプリを実際に作ってみました。ただ、開発にこだわりすぎて作ることに夢中になり、MONO-COTOで言われ続けたのは「まずは試せ!」なのに、中間発表までにほとんどテストしていなかったんです。

メンターの方々からのフィードバックでは「試した?なんで試さなかったの?」「完璧を求めすぎなんじゃない?」と、アイデアを評価していただく以前の問題でした。

-- なかなかハードな経験ですね・・・ズタボロになって、その後どうしたんですか?

チームの皆でだいぶ落ち込みましたが、落ちるところまで落ちるとあとは上がるしかないというか・・・その後は吹っ切れて、せっかくの機会なんだからやるしかない!全力でやって楽しもう!という雰囲気に。

そして、「そもそも、本屋の再定義ってなんだろう?」とゼロから見直すことにしました。

企業の方やCURIO SCHOOLの方などたくさんの大人が協力してくれたおかげで、プロトタイプ(試作品)を作っては試してもらい、いただいたフィードバックを受けて作り直す、というプロセスを何度も繰り返すことができました。

実は、中間アイデアのときはフィードバックやアドバイスをいただいても「そうは言っても・・・」とできない理由をつい考えてしまっていたんです。それが最終アイデアに向けて、いつの間にか「じゃあ、こうするのはどうだろう?」「とりあえず、ご意見踏まえてやってみます!」というマインドになっていた気がします。

最終プレゼンでは「インサイト(洞察=ユーザー自身も気付いていない真の課題)は?」と突っ込まれ、詰めきれてなかったことに気付くなど、まだまだ足りない部分はありましたが、それでも失敗から学んだり、やるだけのことをやったりと、とても良い経験になったと思っています!

チームのメンバーと(柏木くん提供)

-- この経験を経て、自分の変化はありましたか?

まず、人の意見を聞く姿勢が変わりました。アドバイスを受ける時もインサイトを見つけるにも、まずはもらった言葉をそのまま受け取ること、そして些細な一言を拾うことが大事だと知りました。

また、デザイン思考はさっそく役に立っています。MONO-COTOのあと別のビジネスコンテストに参加した際、仲間に「実際にやってみよう!」と提案したんです。最初は「ほんとにやるの?」と驚かれましたが、ユーザーインタビューで情報を集めたり、プロトタイプを作ってフィードバックをもらったりしながらアイデアを磨いたりしてみたところ、「たしかにやってみて分かることがある」「説得力が違う気がする」と反応があり、審査員の方からも具体的で実現可能性が見えると高評価をいただきました。

MONO-COTOは、アラムナイ(参加したことがある人たち)のコミュニティがあるので、これからも学び続けたいと思います。

MONO-COTO INNOVAT!ON2023集合写真(柏木くん提供)

一歩踏み出せない人へ

-- 柏木くんのような経験をしてみたいけれど、一歩が踏み出せないという後輩へアドバイスありますか。

新陽には、こういうプログラムに参加する機会が実はたくさんあります。校内にポスターが貼ってあったり、Googleクラスルームで流れてきたり。自分でアンテナを張っていないとただ流れていってしまうけど、見てみると興味があるものがあるはず。

友達を誘うとか、同じテーマに興味がありそうな仲間を見つけて、まずは行ってみてほしいと思います。

あと、新陽の先生たちはどんな意見も受け止めて、良いところを見つけて褒めてくれることが多いのですが、ダメ出しされてボコボコにされる経験もしてみるといいんじゃないか、と。これは後輩よりも、先生に対するメッセージかもしれません(笑)。

-- 最後に、これからの予定や、やってみたいことを教えてください。

将来は起業して、社会のニーズを拾い課題を解決することで社会に貢献したいと思っています。まずは卒業したら大学進学してビジネスデザインなどを学び、もっと社会を知りながら自分の方向性を絞っていきたいです。

今は、以前参加したビジコンで出した除雪ボランティアのアイデアが通って、他の高校生や札幌学院大学の方と一緒に実現に向けて予定しています。

10月にシンポジウムがあるので、それに向けて頑張っていますが、MONO-COTOで学んだ、試してみること、些細な一言を拾うこと、などを大切にやっていきたいと思っています。なにかやってみたい人、少しでも興味を持ってくれた人に、ぜひ参加してほしいので、校長先生、PRよろしくお願いします!

シンポジウムについて職員室で
先生たちにPRする柏木くん

【編集後記】
実は、MONO-COTO INNOVATIONと私自身のつながりは2017年に遡ります。当時、PwCコンサルティングに所属していた私は、テーマ出題企業のメンバーとしてMONO-COTOに参加。その時は、まさか自分が数年後に高校の校長になるとは露程も思わず、中高生が熱中してアイデア創造する姿や最後の瞬間までアイデア磨きにこだわる姿、一所懸命やったからこそ悔しくて涙する姿に感動し、中高生やスタッフの皆さんに刺激されたのを覚えています。

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