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主婦からパリコレデザイナーへ①



日本の心を海外へ

「NOBU」では、和の心を表現するデザインを創っています。

私の作品は静かです。
「ネイル=装飾」というだけのイメージを変えたい。
単にアートを見せるのではなく、その先にある世界を見せたい。

目に見えない余白に思いを馳せる、表には出さない気配に心を寄せる、そんな日本の伝統文化の根底にある心が今の時代に必要だと考えます。

日本は、島国で昔から自然と共に生きてきました。
太陽や山、石や木々まですべてのものには独自の精神があると考えられています。
実りや豊かさを与えてくれる自然ですが、災害など猛威を振るったときには、人間はたちうちできません。
勝ち負けや損得ではなく、力を合わせて、与え合って共存する、そんな調和して生きる大切さを、伝えたいと考えています。

物質的な豊かさから、心の豊かさへ。

効率や合理性を超えたところに、人の輝きは見え、心は震えるのだと思うのです。

それを日本のネイルアートは伝えられると信じています。



作品は自叙伝

ネイルデザイナーになり2年。
国内で始まったネイルのランウェイですが、ついにパリコレで作品を発表させていただきました。


パリコレにて


初めてランウェイをした2年前は、自分の作品が世に出ることが信じられないほど嬉しかった。
大事に握りしめてきた内側で熱く燃えていた想い、それを両手を広げて世界中に開放した感覚でした。とにかく、それをできた喜びに震えました。

また、モデルさんが自分の作品をつけてくれることが夢のような経験でした。デザイナーなのに、モデルさんをお客様を接客するように謙って接してしまい、いつもの習慣から切り替えるのに苦労したのを覚えています。

作品は、私の自叙伝のようなものです。

その時の嘘のない自分の感情を表現しています。
どれもその時の私の表現です。
デザイナーになってからはまだ2年ですが、作品にはきっとこれまでの人生(もしかして未来も)入った、今の瞬間私そのものです。

私が心震えることを創り、表現しています。
その震えが作品にこもり、伝わればと嬉しいです。


好きな言葉があります。

「真実は幻想を超える」
「情熱は常識を変える」

どうしてやり続けられるの?
やめたくなる時はないの?

なんて聞かれることがあります。

確かに、確約のない未来に全てのエネルギーをかけることは、普通に考えると怖いことかもしれません。

でもきっと、新しい道を進む人はいつもその時代の当たり前を超えてきたのではないかと思うのです。





物語のある作品を

パリで驚いたことがありました。
モデルに作品をつけて街で撮影をした時、和文化を表現した作品なのに、パリの街にとても似合って溶け込み、輝いたことです。

芸術や哲学が息づき、意志と気高さの歴史の流れの中にある街で、作品は、パリでの物語を奏でました。世界中の芸術家がパリを目指し、憧れる意味が、街の中にいるとよくわかりました。

ムーラン・ルージュで撮影した「扇」は、愛と欲望の中、気高く強く生きた女性たちが、本当に愛する人への想いや心の内の涙…本心が顔に出てしまいそうな時にそっと隠したかもしれない、そんなシーンになりました。
これは、日本舞踊で目に見えない感情を扇を使って表現する舞にも繋がりを感じるものでした。


「扇 Ougi」パリ ムーラン・ルージュ にて



「落ち葉でも一つ一つ懸命に生きている」という古今和歌集の和歌を表現したデザイン「紅葉」は、世界中から夢を求めた若い音楽家や絵描きが住んだ街、モンマルトルによく似合いました。愁いの中に強さと希望が光り、才能のある若い歌人の苦悩する気持ちとリンクしていて、感動的でした。

「紅葉」パリ モンマルトルにて


誤解のないようにしたいのですが、私は海外に「日本」そのものを広めたいわけではありません。
私たちの「日本」は素晴らしいでしょう!と押し付けたいわけではないのです。
海外の方の気持ちになって、その文化の中で受け入れられる形で、心の部分を伝えることを目指しています。

ですので、パリコレでパリの人の気持ちに届くことをイメージして作った作品が、こうやって街に溶け込んだ経験は大変嬉しいことでした。

私は作品の構想を練る時、“どこで発表するか”場所をとても重視しています。
その場で、ネイルをつけた人はどう見えるのかをイメージします。

どんな場所なのか、歴史や成り立ち、文化などを調べます。
そこから深く心に感じたことを取り入れたり、モチーフを入れたデザインにすることもあります。

これは、爪だけでなく場所も含めトータルで表現したいということもありますし、やはり私が大切にする調和の表現なのかもしれません。

相手も、私も、きっと世の中も嬉しくなる。
己の我を突き通すよりも、広く遠く広がると信じています。

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