がんをやっつけろ!第5話「立ちはだかるラスボス」
第5ラウンド始まる
いよいよ最終ラウンド、ラスボス(オペ)との対決を迎えるわけだが、対決前にいろいろ検査が必要とかで4日前に入院した。
ヘッダー画像はこのTシャツのアップですね。
だからリングネーム「ブルーブルノブ」ってどうかな?ブ(武)がいっぱいでいいかなと。ん?弱そう?
さてその4日間てのが、実に平和で。
だって抗がん剤を落とされるわけじゃないし、レフェリー(医者)からのボディチェック(診察)があるわけでもないし、ただただ血液検査やら歯科検診やらのオペ前検査を受けてただけだったから。
あ、もちろん例のコーチトレーニングとウォーキング(第3話参照)は欠かさずやっていたけど、屁のカッパだし。
ちなみに歯科検診は1ラウンド目からずっと受けていたわけだが、なぜかというと、オペ中、人口呼吸器を口から肺に直接通すらしく、歯がグラついてると管を通す時に折れて気道に入ってしまうリスクがあるからだとか。
幸い、俺の歯は何の問題もなく、ていうか、今までも歯科検診を受けるたびに褒められてきた自慢の歯(虫歯がない。歯並びがいい。歯茎も丈夫など)なので、問題あるはずがないっていうか(照)
ということで、この4日間はひたすらパソコン(公演の事務作業)しながら、決戦の日に向けて闘志を燃やして、、、いたこともなく、淡々と過ごしていた。
そして頂上決戦へ
リングに上がる直前、コミッショナーから手渡されたトランクスを履く。
このストッキングは、決戦の帽子として履かなければならないそうだ。
あ、失礼、血栓の防止、でした。・・・強引すぎ?すいません。
血栓とは?
ドラマとかでは、オペ室にはストレッチャーに乗って運ばれていく、みたいな絵がよくあるが、俺自身はそんなことはなく、自分で歩いての入場だった。なんだか拍子抜け。苦笑
朝8時半ごろのこと。
ガウン(手術着)を着て、淡々と歩き、淡々と会場(オペ室)に入り、淡々とリングに上がった。(手術台に寝た)
もちろん頭の中では「世界の終わり / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT」が流れていた。
とにもかくにも会場(オペ室)は寒かった。
この会場にはチリひとつあってはならないとかで、常に大型の空調を回してるから、だとか。
でも背中で感じるリングマットはめっちゃ暖かかった。何のことはない。ヒーターが入ってるだけなんだが、極寒の暖炉みたいで気持ちよかった。
そしてすぐに麻酔科の先生、登場!
「医龍」でいうところの阿部サダヲさんのポジションですね。
間髪を入れず、たくさんのスタッフが俺の周りに集まって、手際よくたくさんの電極が付けられる。感覚的には2~3分程度の早さ。そして一気にたくさんの点滴が始まり、俺は身構える。(もちろん、麻酔科の先生が「ひとーつ、ふたーつ・・・」なんて言うはずもなくww)
「いよいよ試合がはじまるんだなー。これからどうな、、、、、」
(空白)
そして13時間後(21時半ごろ・・・らしい)
「中村さーん。中村さーん。手術、無事に終わりましたよー」と誰かがどこかで俺を呼んでいる。目覚める。
どうやら俺は相手のパンチで気を失っていたようだ。
この瞬間のことはハッキリ覚えている。
とにかく呼吸が苦しかったし、何が起きているのかすぐに理解できなかった。
要はオペ中は麻酔で眠っていて、かつ呼吸も止められていて、つまり人工呼吸器に頼っていた状態から自力での呼吸に強制的に変わった瞬間だったのだ。
気を失っていた状態から目を覚ました瞬間、、、あの時の感覚をなんて表現すればいいのか、めっちゃ難しい。
強引に例えるなら、「宇宙での無重力状態からいきなり地上の重力に叩きつけられた感じ」とでも言おうか。いきなり強烈な力で全身がベッドに押し付けられた感じだった。無重力、知らんけど。
とにかく一気に現実が襲ってきた。
地球の重力がこんなにも強く自分を縛るものだったとは!
苦しかったし、動けなかったし、声が出なかった。
レフェリー(先生)の声にただただ頷くしかできなかった。周りの声ははっきり聞こえた。つまり頭は非常にクリアだった。
さて、どんなオペだったかというと
俺が受けたオペについて少しだけ解説。
図解入り「胸部食道がんの手術」@小野薬品工業の解説ページ
簡単に言えば、食道を全摘出し、胃を喉まで持ち上げ、食事の通り道を再建するという手術だ。なんかこう書くと簡単そう?だが、ぶっちゃけ難易度の高い手術らしい。
というのも食道って周りに心臓だったり、大動脈だったり、肺だったり、生命を維持するのに極めて重要な臓器とくっついているので、それらを避けながらハサミを入れなければならないから。なのでこの手術は大体10時間コースが通常らしい。
いやあチームドラゴン、いやさチームブルーブルノブの皆さんには頭が上がらない。だって10時間も緊張を切らすことなく、手術してたわけでしょ。ホントすごいと思う。いやま、それが当たり前の世界なんだろうが、俺には想像もできないっていうか・・・
ちなみに俺が受けた手術は、ほぼ開腹がない。
え?お腹を切らずにどうやって食道を切るの?と疑問をお持ちの子供たち、「ふくくうきょうしゅじゅつ」って言葉を知ってるかな?
なんだか舌を噛みそうだね。
じゃあ3回、繰り返し言ってみようか。
「ふくくうきょうしゅじゅつ、ふくくうきょうしゅじゅつ、ふくくうきょうしゅじゅつ」
はい。よく言えました。
漢字で書くと「腹腔鏡手術」。要は腹を切らずに小さな穴をいくつも開け、カメラで中を覗きながら、細い管の先に付いてるハサミを使って行う手術だそうだ。
腹腔鏡(ふくくうきょう)手術とは?
ちなみに右脇腹から入れたハサミ(正式名称知らず)を食道まで届かせるわけだが、その途中に肺があって邪魔なので、手術中、右の肺を小さく萎ませてしまうそう。
肺を風船に例えるなら、2つの膨らんだ風船のうち右の肺だけ空気を抜いて小さくさせてしまうそうだ。そしてハサミを食道に届かせるという。この話を聞いたとき、医療技術のすごさと人体の不思議を思った。
せっかくなので腹腔鏡手術痕をお見せしようかなと思い、写真をアップします。ホント汚い身体ですいません。でもこれがリアルです。
こんな小さな穴からハサミを入れて食道を切除するんですぜ。すごくない?っていうかマジックかよ!
そして萎ませた右肺を再び元の大きさに膨らませなきゃいけないんだが、それはなんと自力でやらなければいけないのだ。そのための医療を病院側がすることはない。自分のチカラで?肺を?元に?戻す?
賢い子供たちはもうわかったね。
そう!これこそが「コーチトレーニング」(第3話参照)を続ける意味なのだ。あの地味でシュールなトレーニングは、術後、萎んだ肺を膨らませるために行うものだったのだ。なのでこのあと、俺は「コーチトレーニング」をまたやることに。
強烈なパンチの後遺症が・・・
とはいえ、いまは起きることもできないし、自分では何もできない状態。
ひとまずラスボスと拳を交えたあと、俺はICUに移動、そこで1日半過ごすことになる。そのときの体験記はまた数日後に。
タイトルにある通り、後遺症による自分史上最大苦痛な5日間、題して「おれの5日間戦争」のはじまりである。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
書いている医療行為およびそれに対する感想は俺自身が聞いたり、思ったことであり、もしかしたら正しくないかもしれないし、ほかでは当てはまらないかもしれないこと、あらかじめご容赦ください。
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