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船室を覗くと…人!?【南極観測船ふじ】

人類は好奇心と探究心の塊である。

宇宙の法則や生命の進化、ミクロの世界、果ては雑誌袋とじの中身まで暴こうとするから驚きである。かつて南極調査に乗り出た人々もその一人ではなかっただろうか…。

今回は愛知県名古屋市に展示されている『南極観測船ふじ』について紹介しよう。南極の探究を続けた人々は、どういった生活を送っていたのだろうか…。私も、そうした探究心に駆られて、ここに赴いたのだろう。

見分けのつかない人形に思わずビクリ!

名古屋の玄関口:名古屋駅より地下鉄で30分。名古屋の海の玄関口:名古屋港駅に到着する。筆者の訪れた時期が冬季ということも相まって、空気が澄んでて美味しく感じた。これが港の空気…潮の香りが鼻を微かにかすみ、吹き付ける海風が耳を取り抜けるのが分かった。

そんな詩的な気分を堪能していた矢先、眼前に巨大な船舶が現れた。今回の目的地:『南極観測船ふじ』(以下『ふじ』)である!

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名古屋港に鎮座する南極観測船ふじ。橙色のボディが青空のもとに映える。

「か、かっこいい~!!」

先ほどまでのナイーブタイムはどこへやら、観測船のドデカボディの虜となってしまった。やはり男たるもの、豊満な女体とメカニックには目を奪われてしまうのである。さて、ここで南極観測船ふじについて少々説明を行うとしよう。ふじは1965年(昭和40年)から18年間活躍した2代目の南極観測船で、本格的な砕氷艦としては日本で最初だった。現在は、名古屋港にて当時の船体をそのまま保存しているとのことで、南極の博物館として展示されている。

桟橋を渡って船内に入場すると、大きな厨房で働く人々が目に入ってきた。

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おぉ~、今でも観測船の厨房が使われてるのか!レストランとして有効活用しているとは感心感心。

しかし次の瞬間、この認識が間違いだと気づくことになる。

なんと、厨房で働いていたのは全て精巧なマネキン人形であった!!

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厨房のマネキン人形。目がイっててちょっと怖い…。手つきがプロである。

この『ふじ』の見どころは、船内に配置されたマネキン人形たちである。その精巧さはもちろんの事、船内がほぼ当時のまま保存されているため、臨場感あふれる展示となっているのが特徴である。まるで、観測船が現役の時の様子を、そのまま生き写したかのような船内となっている。少し怖いくらい再現されているが、見ごたえは十分である!

配管と熱気、そしてマネキンたちの船内

館内を進むと、船室に所狭しとマネキンが鎮座されている。

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マネキンがリアルなだけでなく、船室内の「生活感」を再現したデティールも見事である。くずかごや使い古しのタオル、脱ぎ捨てた衣類等、船員たちの生活がそのまま抜き取られたかのような展示がされているのだ。そうした風景を格子窓のドア越しから覗くと、まるで船員たちの日常にお邪魔している不思議な気分を味わうことができる。

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理髪室前を映した写真。無機質な配管と、カラフルなサインポールのコントラストが見事である。

また、船室の様子だけでなく、船内の通路も妙にリアリティを感じた。配管が張り巡らされる中、通路には熱気が立ち込めていた。おそらく、訪れた季節が冬であったことから、船内のヒーターが原因だと思われるが、それが船内でせわしなく作業をする船員たちの熱気という錯覚を生み出したのである。

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整髪中の船員の様子。七三分けの時代である。

生活感の痕跡

『ふじ』船内にはマネキン等によって船員らの生活を忠実に再現した空間が広がっており、当時の生活を覗くような体験をすることが出来た。実はこれ以外にも、船員らの痕跡を確認できるモノがある。それが船内のベッドに残された寄せ書きである。

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ベッド裏にあった船員らの寄せ書き。愛が伝わるぜ…。

おそらく、ふじが観測船として引退する際に残された寄せ書きである。船員たちが今までの思いを込めて書いていることが分かる。これも観測船で生活した人たちに想いをはせる痕跡の一つとなったわけである。『ふじ』には他にも、南極調査に関する映像展示であったり、資料展示があったが、一番のインパクトを残したのは、この寄せ書きとマネキンたちであった。小さい子が来ると、泣いてしまうくらいリアルな展示空間が、『ふじ』に広がっていたが、そのリアリティによって、私たちはかつてあった観測船員らの生活を垣間見ることができ、想いをはせるのかもしれない。

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探求心に駆られて『ふじ』に訪れた私であったが、退館後はしんみりとした気持ちになった。探求の果てに待っていたものは、神秘や怪異、驚異といった類のものではなく、そこで生きた人々のリアルであったからである。出会ってもいない船員たちと、会話したかのような不思議な気分となったのである。

人類は好奇心と探求心の塊だ。そして、想いをはせて触れ合うのもまた、人類の特徴といったところだろうか。

そんなことを思いつつ、私は港を後にして、味噌カツを食べ、コンビニのエロ本を買い、帰路のバスで就寝した。三大欲求もまた、人類の原動力といったところだろうk、、

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