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何かを選んで、全てを捨てるーー『Trek to Yomi』で武士道を感じろ

大きな過ちを犯したことがあるだろうか

 蘇ってでも、成し遂げたいこころざしがあるだろうか。怒りの感情に従い、全てを壊した諸悪の根源をほふことが望みだろうか。それとも、愛する人と偕老同穴かいろうどうけつを全うできれば、それでいいだろうか。信念、復讐、愛どれかを選び、それ以外を捨てなければならないなら、どのみちを進むだろう

今回は、そんな1人の武士の話


『Trek to Yomi』は海外産和風ゲーム

 『Trekトレック toトゥ Yomiヨミ』は2022年5月5日PS4/5、Xbox、Steamでリリースされた2.5D剣戟けんげきアクションゲーム。日本語訳はそのまま「黄泉よみへの旅路」。3Dと2Dを融合したような作りで、探索パートは3D戦闘パートは2Dといった感じに役割が分割されたような形で進行される。この3Dと2Dはプレイ中に自然と移り変わっていくのでさほど気にならないし、違和感もほぼない

剣 × 戟……カップリング?

 プレイヤーは主人公である大輝ひろきを操作し、敵である賊と死闘を繰り広げて行く。「だいき」じゃないよ。物語は少年時代から始まり、師匠である三十郎さんじゅうろうからの指導途中に村が賊に襲撃されることになる。大きな犠牲を出しながらも賊を追い払ってから時は流れ、大人になった大輝は持ち前の正義感を発揮し、賊に襲われていると聞いた近隣の村へと走り出す。ここから、大輝の運命の歯車に軋みが生じてくる。本作のストーリーは胸が苦しくなるような要素もあり、駆け抜ける村の風景には痛ましい描写も多いので、苦手な人は注意してもらいたい

大人になった大輝

 ちなみに、サブスクで『七人の侍』が観られるのはU-NEXTだけっぽい。アマプラとかではレンタルだったり別サービスに登録したりしなきゃいけなさそう。



海外産とは思えない、日本の白黒映画のような世界観

 少しでもその表現を見たことがあれば食いつくであろう、いわゆる「白黒映画」のようなビジュアル。『Ghostゴースト ofオブ Tsushiツシマma』でも「黒澤モード」として白黒映画のようなビジュアルにできる機能はあったが、デフォルト設定で白黒というのはあまり見ない気がする。「白黒映画」自体は正直観たことないですが、すごく魅力的なことはちゃんと伝わった

本当に映画のワンシーンのよう

 カメラワークもシネマティックで、普通のアクションを「魅せる」ようなワンシーンに昇華してくれる。光と影の使い方が素晴らしく、特に障子を挟んでの剣戟は非常に格好良かった

屋内での斬り合い

 本作はポーランドのゲーム会社「Flying Wild Hog」とゲーム開発者「Leonard Menchiari氏」が共同で開発している。Leonard Menchiariがセルジオ・レオーネ監督の西部劇に触れ、それらが黒澤映画から影響を受けていると知って観始めたとのこと。その経験が十分に発揮され、本作は日本人以外が作っているとは思えないほどの雰囲気と世界観が形成されている。セリフの言い回しや登場人物の挙動を見ていると、本当に信じられない。



パリィを基本とした戦闘システム

 最近のアクションゲームでは割と多い「パリィ」というシステム。私が個人的に知ったのは『ロマンシング サガ2』の「パリイ」だが、当時は全く意味が分からなかった。
 閑話休題。パリィは「受け流す」というような意味合いで、敵の攻撃に対してタイミングよくボタンを押すことで攻撃の回避しつつ反撃をするようなものが大半である。本作もご多分に漏れずそのようなシステムで、基本としては「待ち」が非常に有利に働くようになっている

立ち合い

 パリィは相手の行動パターンや挙動を覚えないと難しいイメージがあるかもしれないが、本作は「時代劇」がベースになっているため、良くも悪くも複雑な行動パターンは少ない。全てではないが、敵が攻撃する際にスローになってパリィのタイミングを示唆してくれることもあるため、慣れてない人でも気持ちよく剣戟を楽しむことができる。強敵でも、パリィをミスしなければノーダメージで完封することも難しくない。

初めての死合い


特色のある難易度設定たち

 本作の難易度は歌舞伎簡単」「武士道普通」「浪人難しいに加えて、1度クリアすると「剣聖激ムズ」が追加され、4つの難易度が用意されている。私は「歌舞伎」「浪人」「剣聖」をそれぞれ1回ずつクリアしている

最初は「歌舞伎」推奨

 「歌舞伎」は最低難易度ということもあって比較的簡単で、ある程度アクションゲームの経験があれば難なくクリアできるのではないかと思う。ちょっとボス戦が難しいかもですが。

 「浪人」は一気に難易度が上がる。「武士道」を飛ばしてるせいもあるけども。被ダメージが歌舞伎の倍となる感じで、敵のHPも2倍程になる。そのため、1度パリィに失敗してダメージを食らうとかなりキツい状況になるが、小刻みにセーブポイントが用意されていることと死んでも再開が早いため、リトライに対するストレスは少なめになっているのがありがたい。道中の雑魚との連戦は後半の特定の技を習得するまでは神経をすり減らすことが多く、しっかりとパリィができないと平気で連敗する。アクションに慣れている人でも、結構苦戦する難易度で面白かった

 「剣聖」はいわゆる「オワタ式」と言われるようなもので、プレイヤーも敵も基本的に「一撃必殺」となる。そのため、浪人よりも簡単に雑魚戦を終えられるため、道中の進行スピードは速い。ただ、ボス戦は流石に一撃必殺ではないため、かなり緊張感がある。あ、こっちは一撃必殺されるからね。ただ、行動パターン自体は他の難易度と変わらないことと、HPが歌舞伎と同様になるため、浪人を超えたプレイヤーなら意外と簡単に感じるかもしれない。一撃食らったらゲームオーバーとなるので、ヒリヒリ感が味わえて面白い

 上記のように「歌舞伎」ではストーリーをメインとして楽しみ、「浪人」では剣戟アクションをしっかりと楽しみ、「剣聖」では雑魚戦での無双感とボス戦の緊張感を楽しむことができる



収集物のテキストも凝っている

 チャプターごとに「収集物」が隠されており、そのチャプターに沿った収集物がキチンと設定されている。さらにその収集物にはそれぞれ、世界観を表す「フレーバーテキスト」が用意されており、その収集物が置いてあった場所や登場すらしない持ち主の様子などがわかるようになっている。隙のない世界観の構築っぷり。

収集物を全部集めると1つになったりと、仕掛けもある


不便な面も多い

 アクションゲームとしては目を見張るものがあるが、それ以外のシステム的な部分は不親切というか不便というか、「惜しいな」という感想を抱いてしまう部分も多い。以下は、私が思った残念ポイントとなる。

チャプターセレクトなし

 本作では複数のチャプターに分かれているが、クリア後はチャプターを選んで収集ややり直しなどはできない。そのため、途中で収集物を取り逃した場合、1から進めなければならない。やり直したいチャプターを選んで再開できるようにしてくれたら嬉しかった。

セーブデータの引継ぎなし

 1度クリアすると、セーブデータが消える。多くの作品で「クリア後は最終チェックポイントのセーブが残る」というような仕様があるが、本作では採用されていない。「収集物のテキスト、あとで読も~」と思ってたら跡形もなかった。2周目の際にはすべて0の状態からになるので、見たかったら収集物をまた集める必要がある。こりゃしんどい

プレイヤー強化アイテムの収集状況が把握できない

 トロフィー獲得のためもあり、プレイヤーを強化する「アップグレード」や「技能書」といったアイテムを収集していたが、「収集物」と違って状況が分かりにくい。百歩譲って、技能書は習得した「技」が見れるのでいいが、体力や気力、投擲とうてき物の所持数上限などは何が最大でどこまで取得していたのかが把握しづらい。攻略ページを見ながら進めてはいたが、2周目で全取得できなくて、3周目はかなりヒヤヒヤした。



比較的シンプルな剣戟アクションで、サクッとできて、難易度ごとに楽しみも違って、満足度も高くて、面白くて、やったほうがいい名作

 基本としては1対1となるシチュエーションが多く、パリィをして反撃をする、というのを繰り返して敵を倒してくだけになるが、シンプルで面白い。もっとリッチで、駆け引きがあるようなものを期待していると残念かもしれないが、私は十分楽しめた。初見最低難易度でのクリア時間は5~6時間程度となっており、あまり時間がない人でも毎日少しずつ進めれば1週間もあればクリアできると思う。前述しているが、各難易度ごとに魅力があり、高難易度はアクションゲーム好きでも納得できる難しさに仕上がっていて良い海外の方の感覚と古き良き日本の時代劇が上手く融合していることと、程よいボリューム感で非常に満足度が高かった。気になった方は、是非プレイを。

最初に書いていますが、
痛ましい描写も多いため、苦手な方はお気を付けください。

 最後にインタビュー記事を1つ貼っておく。製作寄りのもので、クリア後に興味があれば目を通してみると良いかもしれない

 それでは。

 おわり。

取得率0.4%でした。



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