『アッシュと魔法の筆』で廃れた港町を救い出す話
これは「ストリートアート」に溺れた少年の話。……ではない。不思議な筆を使った、地元復興大作戦という感じだろうか。一人の少年が、自分で描いた「かいぶつ」と共に「アート」で町を救う、小さな物語だ。
『アッシュと魔法の筆』ってどんな筆?
『アッシュと魔法の筆』は2019年10月10日にPlayStation4用ソフトとして発売されたアクションアドベンチャーゲーム。2021年2月現在、PS4/PS5でしかプレイができない。
プレイヤーは主人公のアッシュを操作しながら、壁に絵を描き、町に光を取り戻しながら港町を明るくするというのが目的。絵を描くアクションはコントローラーのモーションセンサー機能を使用し、物理的にも身体を動かしながらプレイをするシステムになっている。これはオプションでスティックでの操作に切り替えることができるので心配しないでも大丈夫だ。本編とは別に、PSVR専用のモードが用意されており、また違ったゲーム体験ができるようだ。私はPSVRを持っていないので、今回はVRモードについては記載しない。
「フォトモード」も実装されており、ムービーシーン以外はいつでも起動ができる。少し操作性が微妙だが、カメラの位置調整がかなり気持ち良い位置に動かせるので良かった。映える作品なので、フォトモードは実装して正解の機能だった。
とてもキレイに撮れた
クリアまでは6~8時間程度。トロフィーコンプリートまでは10時間程度なので、結構サクッとクリアできる。気軽にプレイすると良いと思う。PSVRが無いと取得できないトロフィーもあるので、気にする人はご注意を。
ちなみに、海外では『Concrete Genie(コンクリート ジーニー)』というタイトルで販売されている。日本語版の「かいぶつ」が「Genie(精霊)」にあたる。訳すと「壁に描かれた精霊」というような意味になるのだろうか。 SEGAの『ジェットセットラジオ』から影響を受けているらしい。
「かいぶつ」とは、大胆な訳し方だ
アッシュの小さな救いの冒険の始まり
主人公のアッシュは絵が大好きな少年。両親から「近づくな」と言われても、自分が生まれ育った町である「デンスカ」を見捨てない、地元愛が溢れる男でもある。そんなアッシュはいじめられっ子。いじめっ子集団にスケッチブックを破り捨てられ、廃墟となった灯台に無理やり行かされるところから物語は始まる。柔らかなグラフィックな割りに、胸糞悪い感じの演出なので、ちょっと目を背けたくなるような雰囲気はあるかもしれない。
灯台にはアッシュがスケッチブックに描いていた"かいぶつ"「ルナ」が壁に誕生しており、アッシュのスケッチブックと絵筆に不思議な力を与えてくれる。壁に絵を描き、ランプが灯り、灯台の光が復活するのを目の当たりにしたアッシュは、自身の得た不思議な力を使って、廃れた港町「デンスカ」を取り戻していくために立ち上がる。
/ぴかー\
気持ち良いペインティングアクション
ゲームの最初から最後まで壁に絵を描くことでストーリーが進んでいくのだが、描くたびにキラキラとした効果音が鳴るのが気持ち良い。町に散らばったスケッチブックのページを集めることで描けるデザインが増えていく。そのデザインのみで描くだけなので、絵を描く自由度はそこまで大きくはないのが残念。逆に言うと、特に絵心がなくとも良さげな作品を作り出すことも十分可能となっている。
デザインを配置するセンスが試される
また、町中を駆け回るアクションは親切で、比較的雑な動きをしても良い感じに補正してくれるため、下手な動きをすることは少ない。海に落ちたり、高いところから落ちるといわゆるゲームオーバーになるが、即時に復帰できるので特にストレスは無い。書いておいてなんだが、ゲームオーバーって表現は違うかもしれない。むしろ、ゲームオーバーなんて無いな。うん。
無理やり描いたぶたさん
無邪気な「かいぶつ」たちとの交流
特定の場所では「かいぶつ」を描くことが可能となる。「かいぶつ」もある程度決まったデザインをベースに、パーツをくっつけて完成させていくものだ。デザインによる性能の差は全く無いので、好きなように描くと良い。角を10本付けようが、尻尾を9本にしようが、体中を☆マークで埋めようが自由だ。自らのセンスで生み出した「かいぶつ」たちと協力しながら進んでいくが、意外と愛着が湧くものだった。しばしば「これを描いて」とねだって来るが、二つ返事でOKして描いてあげてしまう魅力がある。
おらっ! これが良いんだろ!
良くも悪くもディズニーチックな作品
正直、ディズニー作品をそう多く観たことは無いのですが、どことなくそんな印象を感じた。ディズニー? ピクサー? まぁ、そのあたりの映像作品を指します。映像の作り方やいじめっ子のバックボーン、最終的に行き着く主人公との関係など、お国柄なのか、なんだか都合の良い展開で、「おい、アッシュ、それでええんか」と思ってしまった。人によってはストーリーに関してはあまり良い評価はできないだろうな、という感じだった。
ザ・いじめっ子という感じの5人組
前半と後半でギャップのあるゲーム性
前半は町中のランプに光を灯しながら壁に絵を描くような感じで、おまけとしてアクション要素があるレベルだったのが、後半ではアクションがメインと言わんばかりの展開となる。個人的にはアクションゲームが好きなので、「お、いいじゃん!」と思ったが、アドベンチャーをメインとして始めたプレイヤーにとっては思ったのと違うような印象を受けるかもしれない。
筆を握って、戦闘モード
終盤は敵との戦闘があるが、もともと「戦闘アクション」を想定していないかのようなシステムであるため、3Dアクションに慣れていないと苦戦すると思う。「ロックオン」にあたるシステムがないので、背後に飛んだ敵を右スティックで一生懸命追うしか無いのが辛い。
前半にはしょぼいステルスアクションみたいなものがあったりと、なんだか半端なような作りが残念。これなら、最初から戦闘を想定したアクションのシステムにするか、前半の雰囲気のまま最後まで突っ走って欲しかった。
戦いの結末はーー。
美しいアートワークとアクションの両面性を秘めた雰囲気重視のゲーム
美しい映像美と世界観。小さな町だが動き回れるアクション。雰囲気ゲーと呼ばれる種類に入るのかなと思う。謎解きやアクションの難易度は特別高くはなく、クリアまでの時間も長くない。音楽は特別印象に残るものはないが、全体的にキレイで、要所要所に差し込まれるタイミングが非常に良い。若干マップが広いが、ファストトラベルが無く、移動が面倒な部分もあるが、多くの人がクリアまでプレイできる作品だと思う。キャラクターや「かいぶつ」のデザインや表現は海外向けのものとなるので、日本人的には慣れないかもしれない。2021年2月のフリープレイ対象となっているので、機会があればプレイしてもらいたい。
最後に一言、カニでかくね?
DEKAI
それでは。
おわり。
VRトロフィーは無理でした
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