人間のような、人間では無い者たちの物語『NieR:Automata』
人間のために、人間ではないモノを殲滅する、人間ではない者たちの物語。彼らのたどり着く先に、光はあるのか。
これは呪いか。それとも罰か。
wh[A]t's 『NieR:Automata』?
『NieR:Automata』は2017年2月23日にPS4専用ソフトとして発売したアクションRPG。後にSteamでも配信を開始した。2018年6月26日にはXbox oneで「BECOME AS GODS Edition」、2019年2月21日にはPS4で「Game of the YoRHa Edition」というDLCや各種特典が収録された特別版がリリースされている。現在はセールで半額ほどになっていたり、サブスクサービス「Xbox Game Pass」でも対象になっているので、気軽にプレイをしてもらいたい。
本作はPS3/Xbox360で発売されていた『ニーア レプリカント/ニーアゲシュタルト』の続編にあたるが、前作をプレイしていなくても問題なく楽しめるので安心して欲しい。ただ、前作をプレイしていたほうがニヤリとできるテキストや演出が散りばめられているので、プレイすることをおすすめする。2021年4月22日には、バージョンアップ版と呼ばれる『ニーア レプリカント ver.1.22474487139...』が発売予定となっているので、本作をクリアした後でも良いのでプレイしてもらいたい。
The [B]attle to Reclaim the Earth
舞台は『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』の時代から数千年後、異星人の侵略によって人類が月へと追われた世界。地球の奪還を目指す人類側が製造したアンドロイド兵士と、異星人が製造した兵器・機械生命体による戦いが描かれていく。その戦いの中で、アンドロイド、機械生命体、人類の秘密が徐々に明らかになっていく。
上記で書いた概要のとおり、本作の登場キャラのほとんどは人間ではない。主人公である2Bや9Sは人間のようだがアンドロイドである。また、敵となる機械生命体も名前の通り人間ではない。基本的には本部からの指示や目的に忠実で従順な彼らだが、感情を持たないわけではない。人間のように話し、人間のようにお互いを思いやり、人間のように涙を流す。機械であることを忘れてしまうほど人間のような存在たちに、プレイヤーは不思議な感情を抱くことになる。特に、愚直で真っ直ぐな機械生命体の言葉は心に来るものがあった。
Recommend [C]learing multiple times
シリーズとしてはお馴染みかもしれないが、「ニーア」は周回プレイしてこそ輝く作品。できれば、最低でも3周はして欲しいところ。エンディングは20種類を超えるエンディングが用意されているが、メインのエンディングはそのうち5つだ。それだけでも味わっていただきたい。「動画で見るだけ」では味わうことができない、実際にプレイするからこそ溢れる感情を体験して欲しい。
私のプレイ時間は1周目が18時間、2周目が12時間、3周目が8時間だった。たぶんかなり遅いので、メインシナリオをサクサクと進めて行けば半分くらいの時間でクリアできるのではないだろうか。一応参考までに。
Spee[D]y, stylish and great action
本作の魅力の1つはスタイリッシュなアクションだろう。最序盤の大ボスとの戦闘までに、このアクションのスピード感と快適さの虜になってしまった。回避を連打しておけばある程度敵の攻撃を避けることができるし、攻撃もなんとなくボタンを連打すればOK。サブウェポンでもあるポッドの攻撃は弾数制限もなく、とりあえず戦闘中は押しっぱなしにしておけばいい。エフェクトもキレイで、アクションが得意でなくても手軽にかっこいいアクションをキメることができる。
基本的には3Dアクションとなるが、横スクロールアクションになったり、見下ろし型のシューティングになったりとバラエティに富んでいる。シューティング要素は割とテクニックが求められて、苦手な人にとっては辛いかもしれない。ちなみに、私はゲーム最序盤であるシューティングでゲームオーバーになったが、なんとか最後までクリアすることができた。
アクションが苦手でも安心して欲しい。本作では難易度を最低のEASYにすると「オート機能」が解禁される。この機能をONにすることで、戦闘時に自動的に敵を倒してくれるのだ。敵が無限湧きするようなポイントで放置しておけば自動的にアイテム、お金、経験値稼ぎが余裕でできる。まぁ、そんなことする必要は全く無いのですが……。
アクションで困ったのは敵のロックオンのやりにくさだろうか。ロックオンしたい敵にロックオンが上手く出来ず、変えようとするにも操作が若干複雑でやきもきしてしまう。とりあえず斬りまくって倒してしまえばいいか、とゴリ押しで解決した。
あと、動物がやらたらと強い。
Insidious, dark, and painful sc[E]nario
個人的には、シナリオ部分がかなり刺さった。前作から「ヨコオタロウ」という男の描く世界にはかなりやられているので、もうかなり最高でした。サブクエストを含めて、ダークでブラックな話が多く、ゾワッとするような怖さのものが多いので、それらが好きなら間違いなくハマるだろう。
機械である登場キャラクターの放つ言葉や行動が純粋でありすぎるが故の不気味さだったり、胸に来るものがあり、大いに感動した。
ただ、人によっては物足りなさがあるようだった。世界観を共有する別作品『ドラッグオンドラグーン』シリーズの方がなかなかイカれてるようなので、そちらと比べるとパンチが弱いのかもしれない。私はプレイしたことがないシリーズなので、いつか自力で「新宿END」を見てみたいものだ。ちなみに、初代『ドラッグオンドラグーン』の最終エンディングでもある「新宿END」から続いていった世界が『ニーアレプリカント/ゲシュタルト』の世界となるので、根源たる作品と言っても過言ではないだろう。
[F]etishistic character design
荒廃した街並みや砂漠になった団地など、フィールドの美しさに目が奪われることも多いが、やはり登場キャラクターのデザインが素晴らしい。世界的にも人気が出るのもうなずける。シンプルで、美しい。クールで、かっこいい。他のゲームでのコラボで見かけた人も多いかもしれないが、2Bや9Sといったキャラクターの造形が素晴らしく、目を引くものがある。
目元を隠し、黒い服に身を包み、ミステリアスな雰囲気を纏いながらも機敏な動きで敵を華麗に倒していく美女と美少年。こんなん卑怯よ。人気が出るに決まっている。それに加えてあの関係性だもの。これは勝てない。
スマブラへの参加まだか。
Balance between worldview and [G]ameplay
主人公が「アンドロイド兵士」である、という特徴を最大限に活かしたのがプラグイン・チップによるキャラクターの強化システムだろう。チップを付け替えることで、自分の好みにカスタマイズしたキャラクターを操作することが可能となる。チップにはそれぞれコストが設定されており、上限を超えないように上手く付け替えなければならない。
このプラグイン・チップの面白さは、単純なキャラクターの強化だけではない部分だ。他のゲームでは当たり前のように表示される体力ゲージや敵に与えたダメージ量の表示、ミニマップなどのHUD(Head-Up Display)もプラグイン・チップによって表示/非表示の制御している。チップを外すことで画面をスッキリさせることができるのだ。私は、終盤は雰囲気を重視してその辺りの表示をするチップは全て外して、ゲームにより入り込めるようにしていた。
基本的に「おすすめ」で自動的にチップをセットしてから「カスタマイズ」するだけで大抵は問題ない。攻撃特化にするか防御特化にするかはプレイヤーの自由だ。あ、くれぐれもOSチップは外さないようにね。約束だぞ。
Too muc[H] beautiful music
前作から引き続き岡部啓一さんが代表取締役を務めるMONACAによる「ニーア」の音楽はどれも素晴らしく、思わず聴き惚れてしまうシーンも多い。全体的にはキレイな曲が多く、コーラスが入った印象的な音楽となっている。これは、ディレクターであるヨコオタロウから「全ての楽曲に声を入れて欲しい」というリクエストがあったらしい。それに応えた作曲陣も、指示をしたヨコオタロウも大正解だ。最高すぎる。
個人的には『複製サレタ街』がかなり好きで、この曲が流れる場所に入った瞬間に流れる洗練されたピアノの音と眼の前に広がる新たなマップの景色がとてもハマっていて、完璧なシチュエーションすぎて吐きそうになるくらいでした。また、ハッキングモードに移行した際に、自然とBGMが8bit風に変化する演出もニクイ。ぜひともプレイして、音楽も味わっていただきたい。
[I]dou ga Meccha Taihen
移動速度自体はそこまで遅くはないものの、マップが比較的広いこともあり、地味に移動が大変。高低差のあるマップが多く、迷子になることもしばしば。中盤からはセーブポイント同士を行き来できる転送機能が追加されるが、場所が決まっているため、そこからまた移動しなければならない。
本作の収集要素としてアイテムを集めたり、低確率で出現する敵を見つけたりするのに何度も同じ場所を行き来しなければならない。終盤は移動が大半を占めるので、段々と移動が嫌になってくる。もっと楽に移動が出来たり、ローディングが短いと嬉しかった(贅沢)。
Seriously? [J]ust buy trophies with money
本作で一番驚いたのがトロフィーを買えることだ。PlayStation4の機能として「トロフィー」というものがあり、ゲーム内で条件を満たすことでトロフィー獲得できるシステム。PSのゲームを普通にやっていれば獲得をしたことがない人が居ないレベルなシステムだが、1つのゲームで全てのトロフィーを集めるのはなかなかに重い作業である。楽に獲得できるならなぁ、という思いを叶えたのが「トロフィーを買う」というシステムだ。しかもこれ、現実のお金を使って買うのではなく、ゲーム中のお金を使って買うのだから驚く。しかも、お金稼ぎはかなり楽にできるので、普通にプレイして獲得するよりも数百倍簡単にコンプリートすることができる。
これは条件を満たさないとそもそも買うことができないので、そこまで行くのが簡単ではないのだが、買えるようになったのなら後もうちょっとでコンプリートが可能になる。2021年3月現在、プラチナトロフィーの獲得率は「9.1%」となっており、他のゲームと比べると非常に高い数値となっている。やはりこの「買えるトロフィー」のおかげだろうか。私はトロフィーを集めるのが好きなので、なんだか複雑な気分になった。決して否定や不満の気持ちがあるわけではない。はい。
A long, long, F**[K]ing journey of collecting materials
既に書いていますが、やり込む中で大変だったのが、武器やポッドを強化するために必要な素材の収集だ。多くの素材はショップで買うことが可能なので、お金があればさほど問題はないのだが、一部の素材はフィールドにランダムに配置される採集ポイントかサブクエストのクリア報酬でしか取得することが出来ない。そのため、終盤は同じ場所をずっとぐるぐると移動を繰り返す必要がある。もっと入手方法を楽にして欲しかった……。
また、同様にレア敵の出現率が異常に低かった。敵キャラクターの情報を取得するために倒す必要があるのだが、出現場所が決まっているので、出てくるまで何度も行き来しないといけないのが辛かった。
The cooooo[L]est masterpiece by YOKO TARO
マイナスな面もいくつかあるが、それを上回るプラスが多すぎる作品。最高の一作だった。特に前作をプレイしている人だからこそドキッとする場面もあるので、かなりシビれた。シリアスだったり、コミカルだったりと演出に幅があり、遊び心のある魅せ方に飽きることはなかった。最後の最後の演出は、流石ニーアと思わせてくれる、最高のものだった。ストーリーの進行上、難易度はEASYでも問題ないので、こだわりが無ければEASYをおすすめする。
個人的に思う本作の注目ポイントは「無機質で純粋な不気味さ」と「無機質で純粋な懸命さ」だろうか。序盤には機械生命体が人間の性行為を真似るようなシーンがあり、不気味さを非常に感じた。中盤では、とあるエリアにいる王を守るために機械生命体が侵入者である2Bや9Sに立ち向かう姿に胸を打たれた。どちらも『ニーアオートマタ』らしさを感じさせるシーンで印象に残っている。
2021年3月現在、4周年を迎え、DL販売本数が550万本を超えるという大ヒットになったのは、『進撃の巨人』や『魔法少女まどか☆マギカ』『鬼滅の刃』といったダークな雰囲気な作品が世間的にも受け入れられている状況もあり、『ニーアオートマタ』はその広がった間口に上手く入り込めたというところもあるのかなと感じた。
かなり好みが分かれる作品ではあるが、刺さる人には刺さる作品。少しダーク気質な作品が好きなら、プレイして損はない名作だと思う。
本当に……本当にありがとうございました。
それでは。
おわり。
あなたが私をサポートすると、私はあなたからサポートされることができます。