見出し画像

バート・レイノルズ! 「ラスト・ムービースター」!The Last Movie Star

バート・レイノルズ人生最後の主演映画「ラスト・ムービースター」(17年)は、ハートウォーミングな小品であった。香港では公開されなかったため、WOWOW放送でやっとこさ鑑賞。

バート・レイノルズ扮するヴィック・エドワーズは、独り身の老人。ある日自宅へ映画祭からの招待状が届く。ロバート・デ・ニーロ、ジャック・ニコルソンやクリント・イーストウッドに続き、あなたに特別功労賞を送る、というのだ。チェビー・チェイス演じる友人に相談すると、「ナッシュビルの映画祭ならいったらどうだ」と言われ、招待を受けることにする。

空港へ着くと、迎えが来てない。遅れて一人の若い女が、空港へ飛び込んでくる。パンクなこの女リル(アリエル・ウィンター「ちいさなプリンセス ソフィア」の声優)は、ジーンズをちょん切ったのを履き、鼻にピアスをしている。「リムジンはどこだ?」と聞くが、乗せられたのは古ぼけた車。ホテルに案内されるが、そこは安モーテル。さっそく映画祭の会場へと連れて行かれたら、そこは酒場のパブだった。

主催者の映画オタク二人(クラーク・デューク「キック・アス」、エラー・コルトレーン「6才のボクが大人になるまで」)が熱烈に歓迎し、自分の映画の上映会を開いてくれるが、パブの奥の部屋で50名ほどで、プロジェクターで見るというお粗末なもの。

不機嫌になったヴィックは、カウンターで一人飲み始める。リルが来て、「デ・ニーロやなんかには声をかけたが、実際に来たアホはあなたが最初よ」と言われる。これは、ナッシュビル・インターナショナル・フィルム・フェスティバルと、勝手に名乗ってる、権威も何もない映画祭だったのだ。

コケにされた元ハリウッド・スターは、怒って次の日の回顧上映はキャンセルして、運転手のリルに空港へ向かうようにいう。だが、突然気が変わり、隣町のノックスビルへ連れて行けと命令する。

その理由は、そこが彼の生まれ故郷だからだ。彼は半日かけて自身の思い出の場所を廻り、最後はとある老人ホームへ行けというのだが...

Reference YouTube

前半は、騙し討ちのような、映画祭の主催者たちの、元ハリウッド・スターへの失礼な態度や行動に腹が立った。だが、映画が進むにつれ、あたかも、わがままな老人が自分の人生を反省し、変わっていくのと同じように、怒りが収まっていき、ラストは静かな感動に包まれた。この映画のコピー「人生のあらすじは、途中で変えられる」そのままに。

バート・レイノルズの全盛期に、映画館通いをしていた身には、杖をついて老いさらばえた彼の姿を見るのは、時の流れとはいえ、残酷だなと思った。こっちもそれだけ歳をとったのを忘れとるけど(苦笑)

思い出すままに書いても、「脱出」(70年)「ロンゲスト・ヤード」(74年)「トランザム7000」(77年)「グレートスタントマン」(78年)「キャノンボール」(81年)など、70年代を代表するアクション・スターだった。その後、低迷期があり、97年の「ブギーナイツ」で、また復活したバート・レイノルズ。

この映画の役ヴィックは、ほぼレイノルズ自身と言っていい。コスモポリタン誌で、男性ヌードを披露して、セックス・シンボルとなり「1000人の女とやった」というのも説得力がある。「有名になると向こうからくる」と。だが、今はバイアグラがないとどうにもならなくなってるという自虐・笑

スタントマンから、一夜にして大スターになる。ハリウッド・ドリームを掴んだ男だ。「ハリウッドは、一瞬にしてスターにするが、干すのも一瞬だ」これも低迷期があった彼だから、重みのあるセリフ。

出演した映画の選択を間違えた、“Wrong Choice“だと、自分のキャリアを嘆くことも、彼自身が、ジェームズ・ボンドやハン・ソロ役を断った事実があることを知ってるとうなずける。
だが、ここで、ファンたちが、「いやいやあなたの出た映画は名作揃いですよ、大好きですよ」と言うのは、脚本・監督のアダム・リフキンが本当に言いたかったことじゃなかろうか。

VFXを駆使して、「脱出」と「トランザム7000」のバート・レイノルズと、現在のバート・レイノルズを共演させるところも、ファンでなければ考えつかないこと。

前半バート・レイノルズの、わがままなダメっぷりから、後半はどんなに人々にリスペクトされていたか(実家を見に行った時や、ホテルの支配人の態度)を見せ、わからせてくれる。

ネタバレになるが、一生に一度だけ愛した妻をキャスリーン・ノーランに演じさせ、二人のTVドラマ「ガンスモーク」(64年)での共演シーンを、回顧上映の最後で見せることも、バート・レイノルズへの愛なのだ。

この映画は、かつて大好きで、今は落ちぶれた俳優に、人生最後に輝かせてあげたいという監督の「優しい気持ち」に満ちた作品となった。だから我々同時代を生きた者たちの心を揺らすのだ。

レイノルズのセリフ「第2幕の演技が悪くても、観客は忘れる、第3幕が良ければ」のように、人はいつでも生き直すことができる。そのことを当時82歳のラスト・ムービースターに教わる。そんな映画であった。

最後のバート・レイノルズの笑顔がイイね👍🏻/てなことで。

09-Sep-20 by nobu


最後までお読みいただきまして誠にありがとうございました!