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あれは、ニャーコ!

2020年5月7日。

引っ越して約1年。

前の家の近くを何度歩いても、

全然ニャーコを見かけない。

もう会えないのか…

諦めかけていた矢先。

仕事から帰って駐車場に車を停めて、

ふと前を見ると、

ノシノシ歩く猫さんの姿。

ノシノシ、ノシノシ…

あれは…

あれは、

ニャーコじゃない!?

鞄から携帯を取り出すと、

慌てて車から降りた。

少し片足を引きずってる。

あの歩き方。

体の模様。

間違いなくニャーコだ。

追いかけてる間にも、

後ろ姿がどんどん小さくなる。

待って!

待って、ニャーコ!

叫びたいけど声にならない。

どんどん離れて、

ニャーコは、

どこかの家の庭に消えてしまった。

あの後ろ姿は間違いなくニャーコだ。

会えなくなった頃のように少し片足を引きずって…

体は汚れていたけど、

あのたくましい歩き方は変わっていなかった。

ニャーコはニャーコらしく生きていてくれた。



突然目の前に現れたニャーコ。


ニャーコに再会する少し前、

私はある絵葉書を買って部屋に飾っていた。

細川陽平さんという自閉症の画家の方が描いた猫ちゃんの絵。

職場からの帰り道にある陽平さんのギャラリー。

気になりながらも入れずにいたけれど、

ある日の帰り道、思い切って入ってみた。



ギャラリーにいたのは陽平さんのお母さん。

陽平さんの絵に囲まれながら、お母さんといろんな話をして…

気づけば外はもう真っ暗。

帰り際、視線を感じて立ち止まる。

振り返ると猫ちゃんの絵が目に入った。

その絵の前で足を止めた私に、

「その猫は陽平の猫です。マロンと言います。」

陽平さんのお母さんが言う。

「マロンちゃん、私を見てるような気がします。」

「そう言われる方、多いんですよ。」


この絵が欲しいと思ったけど、

その時私の財布の中身は200円。

ギャラリーに寄る前に、

財布にあるだけのお金を使ってスーパーで買い物したばかりだった。


もう一度ギャラリーを見渡す。

同じ絵の絵葉書が目に入った。

「葉書はおいくらですか?」

「200円です。」

「良かったです!今日ちょうど200円しか持ってなくて…。」

ラッキー!葉書なら買える。

葉書が買えて喜んでいると、

「これもどうぞ。」

陽平さんのお母さんは、マロンちゃんの顔が描かれたキーホルダーをくれた。

「マロンは縁起のいい猫なんですよ。きっといいことありますよ。」

来て良かった…

あったかい気持ちを抱えて家に帰った。


買った絵葉書は部屋のよく見える場所に飾り、その日から毎日見ていた。

「マロンちゃん、ニャーコはどこにいるのかねぇ…。」

もらったキーホルダーは職場のデスクの前にぶら下げて、

やっぱりいつも見ていた。

思いがけずニャーコに会えたのは、その日からひと月ほど経った頃のこと。

マロンちゃんが会わせてくれた?

わからないけど…


どうかまた会えますように。

今日も毎日ニャーコを想っている。



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