「要配慮個人情報」とは~中小企業と個人情報保護法3

 「個人情報」の中には、特に取扱いに慎重を期さなければならない情報として「要配慮個人情報」があります。

「要配慮個人情報」とは

 どのような個人情報が「要配慮個人情報」に該当するか、個人情報保護法2条3項は

 この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種信条社会的身分病歴犯罪の経歴犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。

と定めています。

 また、個人情報保護法施行令2条(=政令)には、

 法第2条第3項の政令で定める記述等は、次に掲げる事項のいずれかを内容とする記述等(本人の病歴又は犯罪の経歴に該当するものを除く。)とする。
一 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の個人情報保護委員会規則で定める心身の機能の障害があること。
二 本人に対して医師その他医療に関連する職務に従事する者(次号において「医師等」という。)により行われた疾病の予防及び早期発見のための健康診断その他の検査(同号において「健康診断等」という。)の結果
三 健康診断等の結果に基づき、又は疾病、負傷その他の心身の変化を理由として、本人に対して医師等により心身の状態の改善のための指導又は診療若しくは調剤が行われたこと。
四 本人を被疑者又は被告人として、逮捕、捜索、差押え、勾留、公訴の提起その他の刑事事件に関する手続が行われたこと。
五 本人を少年法第3条第1項に規定する少年又はその疑いのある者として、調査、観護の措置、審判、保護処分その他の少年の保護事件に関する手続が行われたこと。

と定められており、さらに1号の「個人情報委員会規則で定める心身の機能の障害」は、個人情報の保護に関する法律施行規則5条に

 令第2条第1号の個人情報保護委員会規則で定める心身の機能の障害は、次に掲げる障害とする。
一 身体障害者福祉法別表に掲げる身体上の障害
二 知的障害者福祉法にいう知的障害
三 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律にいう精神障害(発達障害者支援法第二条第一項に規定する発達障害を含み、前号に掲げるものを除く。)
四 治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第4条第1項の政令で定めるものによる障害の程度が同項の厚生労働大臣が定める程度であるもの

とされています。

個人情報保護委員会 ガイドライン https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/2009_guidelines_tsusoku/#a2-3

「要配慮個人情報」の取り扱い

 「要配慮個人情報」に該当する個人情報の場合には、原則として本人の事前の同意がなければ取得してはならないとされており、取得の段階からハードルが高くなっています(17条2項)。

 例外的に事前の同意なく取得できる場合は、

 個人情報保護法17条2項
一 法令に基づく場合
二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
五 当該要配慮個人情報が、本人、国の機関、地方公共団体、第76条第1項各号に掲げる者その他個人情報保護委員会規則で定める者により公開されている場合
六 その他前各号に掲げる場合に準ずるものとして政令で定める場合
個人情報の保護に関する法律施行令7条
法第17条第2項第6号の政令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一 本人を目視し、又は撮影することにより、その外形上明らかな要配慮個人情報を取得する場合
二 法第23条第5項各号に掲げる場合において、個人データである要配慮個人情報の提供を受けるとき

 となっています。

 また、第三者提供にあたっていわゆるオプトアウト(第三者への提供を利用目的とすること等をあらかじめ本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置くとともに、個人情報保護委員会に届け出ることで、あらかじめ本人の同意を得ずに、個人情報を第三者に提供すること。23条2項)も認められていません。


新型コロナウイルスに感染したという情報は?

 新型コロナウイルスに感染したという事実は、「病歴」に該当すると考えられるので、「要配慮個人情報」に該当します。

 したがって、経営者(会社)が従業員から新型コロナウイルスに感染した事実を取得する際には、素直に考えると「要配慮個人情報」なので、事前の同意が必要ということになります。

 しかし、「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。」「公衆衛生の向上・・・のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。」に該当するとして、事前の同意なく取得するということができるとも考えます。

 参考 個人情報保護委員会  https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/covid-19/


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