自筆証書遺言
最近、自筆証書遺言に関する改正がされました。
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、遺言をする人が、遺言の全文、日付、氏名を自ら書き、押印をしたもののことを指します(民法968条1項)。
2019年(平成31年)1月13日に施行された改正法により、遺言の本文と一体とのものとして添付される相続財産の目録については、自書によらずにパソコンや第三者による代筆による作成や登記事項証明書、預貯金通帳のコピーを添付することなどによることも許されるようになりました(ただし、その目録の一枚一枚(両面ある場合にはその両面に)署名と押印が必要です。)。
民法968条に定められた形式を守らなければ自筆証書遺言として有効にはなりません。
たとえば、目録についてはパソコンで作成することも許されるようになりましたが、遺言の本文については、なおパソコンで作成することはできません。
自書が難しいようであれば、公正証書遺言などの別の方式を検討する必要があるでしょう。
自筆証書遺言の保管制度
自筆証書遺言は、自宅で保管されることが多く紛失したり、相続人が廃棄や隠匿、改ざんをしたりするおそれがありました。そこで、法務局で自筆証書遺言を保管する制度を作り、相続登記の促進も図ることも目的とした「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が制定され、2020年(令和2年)7月10日に施行されました。
法務省によれば、8月末現在で4940件の自筆証書遺言が保管されているそうです。
保管制度を利用する場合の遺言書の様式
民法の規定に従った形式に加えて、A4サイズの用紙に、余白を上部5mm以上、下部10mm以上、左部20mm以上、右部5mm以上空けたうえ、片面のみに記載し、各ページにページ番号を記載しなければならず、またホチキス等で綴じないようにしなければなりません(法務局における遺言書の保管等に関する省令9条)。縦書きでも横書きでもどちらでもよく、封筒に入れる必要もありません。
法務局への予約
保管を申請する法務局は1遺言者の住所地2遺言者の本籍地3遺言者が所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局になります。どこに保管の申請をするか決めたら、その法務局に手続の予約をする取扱いになっています。
保管の申請手続
所定の申請書に記載し、手数料として遺言書1通につき3900円の収入印紙、本籍の記載のある3か月以内の住民票の写し等、本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)を持参のうえ、予約した日時に遺言者本人が法務局に手続きに出向くこととされています。
手続終了後、遺言書の保管証が発行されます。
保管された遺言書は、画像データ化され、遺言者が死亡後、相続人等が全国どの法務局でも遺言書の閲覧請求や、遺言書の内容の証明書の請求をすることができます。
自筆証書遺言は、遺言を書いた人が死亡したのち、遅滞なく家庭裁判所に検認の手続を請求しなければなりませんが(民法1004条)、保管制度を利用した場合、検認の手続は不要です(法務局における遺言書の保管等に関する法律11条)。
自筆で遺言を作成する場合に、ちょっとした手間はかかりますが、利用することを考えてもよい手続きだと思います。
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