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ニューブレイカー2024〜塹江敦哉〜

 今シーズン新たに殻を破った選手を紹介する企画、「ニューブレイカー2024」。第五回は、横投げで7分咲きから満開になった広島の速球派サウスポーです。

名前:塹江敦哉(ほりえあつや)

 彼の名前が塹江敦哉選手。全国におよそ30人ほどしかいないという超激レア苗字の持ち主でもあります。塹江選手は左投左打の投手で、香川県高松市出身、1997年2月21日生まれの27歳です。
 県立高松北高校では一年秋からエースと4番を務めるようになると、高二夏ではチームを香川県ベスト4に導きましたが、最後の夏では惜しくも3回戦敗退となってしまいます。左投の高校生ながら150キロを計測するストレートが高く評価され、2014年ドラフトで広島から3位指名をうけ入団します。
 当初は先発起用されるなどスターターでの活躍が期待されていましたが、速いストレートを武器にするため、やがて主戦場は試合終盤のイニングに。プロ入り後はなかなか活躍しきれない日々が続きましたが、2020年には120試合制ながら52試合に登板する飛躍のシーズンに。翌年も51試合に登板するなどチームの柱として成長していきますが、防御率は両年共に4点台。いまいち安定感に欠けており圧倒的なセットアッパーとなることはできずにいます。
 しかしそんな中、今季はサイドスローに転向するとこれが功を奏し9月11日時点で47試合に登板。投球回は35回と少ないものの防御率は1.29とキャリアハイ。変則的なフォームから安定感のある成績を残すようになりました。

強み:横でも150キロの直球

 塹江選手最大の武器は、左打者の背中から大きく曲がってくるスライダーではなく、サイドスローからでも常時150キロ台を計測するほどのスピードを持つストレートです。今季は未だに最速147キロ以下だった試合がなく、試合によっては155キロを計測することもしばしば。左投手ながら右打者を内角で差し込むことができるのは強みですね。
 また精密機械ばりのコントロールを持っているわけではなく、荒れ球に近い制球力なのも、打者にとっては的を絞りづらくなっているようです。
 これは、ストレートの被打率が.247なのに対し見逃し率も.215と全球種で1番高いことからもわかります。打者は意表をつかれ手が出ないというシーンをテレビでもかなり見かけました。
 また、塹江選手のストレートはシュート成分がかなり多く、平均的な投手であれば2〜30センチほどシュートするのに対し、塹江選手は約50センチと倍です。これにチームのチーフアナリスト・飯田哲矢氏は

 逆に動かない方が構えたところに行く。シュートしない方がいいっていう考えもあるが?
「そうですね。なんかよくシュートさせちゃダメって聞くと思うんですけど、塹江投手の場合は人並みのシュートじゃないので、もう限界までいってほしいっていうのがあります」

広島家族。RCC  2024年3月27日 12:46配信の記事より一部抜粋。

 とコメント。右打者の内角にフロントドアで投げ込むことができるので、このシュート回転は塹江選手独自の武器ですね。

課題:年間通してのスタミナ

 ここまで素晴らしい安定感で広島のブルペン陣を支えている塹江選手ですが、登板が多くなった月の翌月など、疲労が溜まる時期に少しずつ成績を落としています。例えば、3、4月は11試合を無失点で切り抜けたものの、5月は10試合で防御率3.52。そして今月も防御率3.86と、少しピリッとしない成績となっています。
 これまでの塹江選手の成績を鑑みれば悪くても3点台に抑えているあたりさすがなのですが、これからセットアッパーとして年間通しての活躍が求められたときに、フルシーズンで同じクオリティーの成績を残すことが重要になってきます。試合で投げる短期的なスタミナではなく長期的なスタミナがこれからは必要になってきそうです。

得意打者

 中日・福永裕基選手田中幹也選手は3打数無安打に、特に阪神・近本光司選手に対しては7打席の対戦で6打数無安打と無類の好相性を発揮しています。やはり左打者が多めですね。
 左のサイドスローは左打にとっては厳しそうです。

苦手打者

 DeNA・佐野恵太選手とは、7打席の対戦で7打数4安打と5割越えの打率を残されています。やはりDeNAの主軸。左打者とはいえ打ってきますね。
 他にも巨人・吉川尚輝選手や丸佳浩選手などの左打者にも2本のヒットを許しています。

塹江選手のプレー動画

 変則的な二段モーションで、相手打者はタイミングがとても取りづらそうです。クイックも決して遅いわけではなく、モーションがなんだかカクカクしていますよね。あの投げ方から150キロ超えのストレートを投げ込まれたら、確かに並大抵の打者では打ち崩すことはできなさそうです。
 またスライダーも、曲がり始めのタイミングや曲がり方というのは完璧ではありませんが、ストレートが速い分相手の腰を砕くのには十分なようですね。

一口情報:コーヒー

 塹江選手の趣味はコーヒーなんだそうです。もともとスターバックスに行くのが好きだった左腕ですが、コロナで外出があまりできなくなった時に自宅で焙煎を始めたところハマってしまい、2021年の春のキャンプではコーヒーミルを使い手動で豆を挽いていたそうです。
 しかし好きなコーヒー系飲料の種類はカフェラテで、コーヒーもブラックよりアメリカーノ派な塹江選手でした。

まとめ

 今回は、広島・塹江選手を紹介しました。サイドスローによって開きかけていた蕾が満開になりついに覚醒した左腕。今季すでにプロ10年目の中堅選手ですが、もう10年一軍で腕を振れるような選手になってほしいですね。
 最後までお読みいただきありがとうございました。

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