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ベースボール・ファッション〜ストッキング編〜

 筆者、のぼ〜る広報が野球で使われる用具を紹介しそこから分かることを紐解くことで、プロ野球選手における"おしゃれ"とはなんなのかを追求していく、題して「ベースボール・ファッション」。
 第七回は、着こなし方に派閥が存在する、ストッキングです。

女性がよく履くストッキングとはもはや別物

 皆さんは「ストッキング」と言われたら、まずよく女性が履く、薄くて長いあの黒いやつを思い浮かべるかもしれません。

世間一般的にいうストッキング。より脚を綺麗に魅せるなどの効果があるようですね。

 しかし、それは野球の「ストッキング」とは名前こそ同じものの、もはや別物です。

慶應大学野球部のストッキング。靴下のような素材感で、先端が輪っかのようになっているのが分かります。

 薄い生地であった生活用のストッキングとは違い、野球のストッキングはほとんど靴下に近いものになっています。
 しかし、靴下などとも違うのが、先端の形。本来であれば穴が無い作りになっていますが、野球のストッキングは逆から見れば底の抜けた袋のようになっています。
 この記事を読む前に、野球のストッキングは世間的なストッキングとも、靴下とも、似て非なるものだということを念頭においていただけると嬉しいです(ここからの「ストッキング」は野球のストッキングを指します)。

ストッキングじゃなく靴下ではダメなの?

 踵部分と爪先部分が無い状態の履き物であるストッキング。野球をユニフォームなどを着てプレーしたことのない方はなぜ靴下ではダメなのだろうと思うと考えられます。実際、筆者もユニフォームを着て野球をしたことが無いので、いまいち意味が分かっていませんでした。
 そもそも、ストッキングは靴下の上から履くもの。これは一般的なストッキングとは異なる点ですね。
 靴下の上から履くなら余計無くても良さそうですが、やはりストッキングを履くのにも理由があるようです。主に挙げられるのは3つ。

 ①怪我を防止するため。
 ②足の動きをサポートするため。
 ③野球黎明期の名残。

 まず①について。野球は基本的には接触プレーの少ないスポーツですが、盗塁時や着塁時のスライディングでは、走者と野手が激しく触れ合うことがあります。
 走者は膝からスライディングすることが多いため、野手も走者をアウトにしようと低い体制で待ち構えるため、両者とも膝下を怪我しやすいんですね。
 そのため、靴下だけを履いているとすぐ擦り切れてしまい、擦り傷や切り傷が出来やすくなります。さらにスパイクの刃が足に当たることも少なくないため、そのような危険から膝下を守るためにも、靴下の上から2枚履きするそうです。

 続いて②。野球は守備中や走塁中、打球に合わせて動きがあるので、唐突に足の筋肉を使うことになります。そのため、競技中にはよく肉離れが発症します。
 しかし、ストッキングを履くことによって足の締め付けを強くし、怪我から守られると同時に、サポート性が上がり、より質の高いプレーをすることができるようになります。

 さらに③。アメリカでベースボールが誕生した頃、当時はユニフォームの染色技術などが現代よりも発展しておらず、どこも同じようなユニフォームを着てプレーしていました。そんな時に、チームを区別する際に用いられたのが、靴下の色。
 靴下の色をチームカラーにすることで、チームを判別していたんですね。メジャーリーグに「レッドソックス」や「ホワイトソックス」が存在するのも、その頃の影響があったみたいです。
 そして、色付きの靴下は直接履くと汗によって色落ちしてしまうため、1枚噛ませる必要がありました。そういう時代の名残があり、今でも2枚履きしてプレーするようになったんですね。

ストッキングの着こなし方

 そして、今回ストッキングを取り上げる上で最も重要なのが、その着こなし方。
 ストッキングは履いた後にユニフォームの下に隠すか、ユニフォームの上から履くかの二択で大きく分かれます。

 まず、ストッキングをユニフォームの上から履く「オールドスタイル」。

DeNA・今永昇太選手。青いストッキングをユニフォームの上から履いているのが見て取れます。

 オールドスタイルは名前の通り古くからある着こなし方で、黎明期から今日に至るまで着用されています。
 さらにこのオールドスタイルの中でも分類することができ、

 ①膝下までストッキングを出す「ショートスタイル」
 ②ショートスタイルより10センチほど短くストッキングを出す「レギュラースタイル」

 という風に分けられます。上の今永選手は①のショートスタイルですね。

 また、もう1つ大別されているのが、ストッキングをユニフォームの中にしまう「ストレートスタイル」。

楽天・阿部寿樹選手。本来見えるはずの燕脂色のソックスがユニフォームの中に隠れているのが分かります。

 このストレートスタイルは1990年代から流行り始めたまだ歴の浅い着こなし方ですが、ストッキングの締め付けが緩くなったり、汚れにくくなるなど、オールドスタイルには無いメリットが評価され、こちらもかなりの人気を誇っております。
 また、このストレートスタイルも、その中でさらに3種類に分けられます。

 ①ユニフォームの裾部分をゴムで絞る「ロングスタイル」
 ②ユニフォームの裾部分をゴムで絞らない「ストレートスタイル」
 ③ユニフォームの裾部分が下にいくにつれ広がっている「フレアスタイル」

 こちらはユニフォームの裾部分の様子で種類分けをするようです。阿部寿選手のストッキングは、②のストレートスタイルですね。このスタイルは、ストレートスタイルの中でも正統派とされることが多いそうです。
 "あえて見せないおしゃれ"というのも、なんだか粋ですね(それぞれのイラストについては、パリーグの公式サイトが出しているので、そちらを見ていただけるとより理解が深まると思います。最後にリンクを貼っておきます)。

おしゃれな選手とストッキングの組み合わせ3選

 それでは、筆者が独断と偏見で選んだ、おしゃれな選手とストッキングの組み合わせを紹介していきます。

1 荻野貴司選手×ショートスタイル

ロッテ・荻野貴司選手。ショートスタイルがもたらす引き締まったイメージが、俊足感を醸し出しています。

 1組目は、ロッテ・荻野選手とショートスタイル。やはり俊足の選手といえば、ショートスタイルですよね。ストッキングを出すことでより引き締まった感じを出し、相手に「足が速そうだな」と思わせることができます。
 その中でも、荻野選手のロッテの縦縞のユニフォームと黒のストッキングのコントラストは素晴らしいと筆者は考えます。白と黒で色が統一されているからこその美しさですよね。

2 岸孝之選手×ストレートスタイル

楽天・岸孝之選手。岸孝選手はすらっとした高身長の選手なので、ユニフォームを伸ばしていた方がよりスタイルが良く見えますね。

 2組目は、楽天・岸孝選手とストレートスタイル。ストレートスタイルはユニフォームを出す着こなし方なのでより身長を長く見せる効果があるように感じますが、筆者的にはその効果を岸孝選手が最も受けている気がします。
 もともと身長180センチと上背のある岸孝選手ですが、細い足と腕からストッキングとアンダーシャツが伸びていることで、よりすらっとして見えます。いわゆるジーンズと同じような効果なんですかね。

3 牧秀悟選手×フレアスタイル

DeNA・牧選手。ダボっとした感じを見せることで脚を大きく見せ、強打者感が増しています。

 3組目は、DeNA・牧秀悟選手とフレアスタイル。フレアスタイルは裾野が広がっているため足の後ろまで完全にユニフォームがかかります。するとより脚が大きく太く見え、力強さが増します。
 またスパイクも前半分しか見えなくなり、全てが覆われたような見た目になります。ユニフォームで全てを隠すというのも、また1つのおしゃれですね。

ストッキングから紐解いた"おしゃれ"

 さて、今回はストッキングについて紐解いてきました。普段主に女性が履くストッキングとは大きく異なる野球のストッキング。踵部分と爪先部分がなくなっており、履く時は引っ掛けるようにして履くみたいですね。
 またストッキングをユニフォームの外に出すか、中にしまうかでも大きく見え方が異なり、それぞれに違った良さがありました。
 以上より、筆者は、

プロ野球におけるおしゃれとは、相手に持たせたいイメージによって、伸びるベクトルが変わってくる

 と思いました。
 ストッキングは球場観戦の際でも分かりやすいポイントだと思いますので、是非選手の足にも注目してみてください。またいつもとは違った世界が広がっているかもしれません。
 最後までお読みいただきありがとうございました。

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