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「探索、発見、学習」で開発チームを自律した組織に変化させたい

ここのところ、プロダクト開発をやるためのチーム作りに悩んでいて、「自律的にプロダクティビティ高く、かつ楽しく働けるってなんだろうな」とか答えの無い深淵を覗いたりしています。

『ユニコーン企業のひみつ』という本を読んで共感した部分や、学べた部分がいくつもあったので、忘れないように言語化してみようと思います。

『ユニコーン企業のひみつ』はエンタープライズ企業とユニコーン企業、テック企業でのプロダクトの開発の手法や目的、組織の作り方や文化などの違いを書いた本です。

読んでいて懐疑的に感じる部分もあるよ

読んでいて私は少し「おや」と思った場面がありました。具体的にはこんなポイントです。

  • ちょっとエンタープライズ企業を落としすぎている

  • ユニコーン企業という主語は大きい、あくまでSpotifyでの話

1つ目の「エンタープライズ企業」という名詞は本書の中では代名詞として扱われています。エンタープライズ企業を落としている印象を感じてしまうのはユニコーン企業との対比として用いられているためです。文中でもこう書かれています。

我らが勤め先、巨大で、動きが鈍く、変化の遅い企業のことだ。こうした企業はユニコーン企業とは対象的だ。なぜなら、エンタープライズ企業は最も改善しがいのある存在だからである。

『ユニコーン企業のひみつ』 お目にかかれて光栄です

2つ目について。全体を通じてSpotify流の話を主軸に語られています。「他のユニコーン企業はどうした」と感じてしまいます。ここに関しても「これはあくまでも一例だ」という意図で注意喚起されています。
GAFAなどの(元)ユニコーン企業の事例もいくつか書かれていますが基本的にはSpotifyの事例をベースにされています。大切なのは事例ではなく考え方やコンテキストだという事です。

もちろん「銀の弾丸」は存在しない。複雑な問題への簡単な答えなんてものもない。他所でやっているからといって、そのままコピーしてはだめだ。

『ユニコーン企業のひみつ』 10.7 コンテキストも合わせて取り入れる

めちゃめちゃ学びが多かった

私はここで書かれているようなテック企業で従業員として働いたり、スタートアップの立ち上げも経験してきました。渦中にいたので半分ぐらいは知っているつもりで読みはじめました。しかし思ったより解像度が低いものや気づいていないもの、言語化出来ていないものをいくつも発見できました。
たくさんの学びがあり、今後のエンジニア人生に役に立つ本だと思っています。
具体的にはこういったトピックです。

  • 権限を与えて信頼する

  • 探索、発見、学習を重視する

  • 期日や予算ではなく、ミッションを強く共有する

  • 自律した小さいチームとサーバントリーダー

  • カンパニーベット

ここでそれぞれを詳しく説明はしません。是非本書を手にとって読んでみてください。今回は私が実践した経験を組み合わせて1つだけ紹介します。

探索、発見、学習

「探索、発見、学習」は本書の中でひたすら繰り返し登場します。不確実な目標を実現するために必要なのは計画ではなく、探索、発見、学習である。目標に向けて探索、発見、学習が繰り返していける状態でないと、ワクワクして働けない。などなど。言語化されたことでパッと光が差しました。

「自律、権限、信頼」というキーワードも多く登場します。経営やマネジメント側からの視点だと「自律、権限、信頼」を駆使することで従業員が目標に向かって「探索、発見、学習」をスムーズに繰り返していく事が出来る。と私は理解しました。

私は今まで開発のチームをリード、マネジメントを担当する経験が何度かありました。チームが自律してリーダーやマネージャーに依存しない形で自走するためにはどうしたらいいのかを試行錯誤してきました。
本書を読んで気づきました。「探索、発見、学習」こそがチームに必要なのだと。私は成果主義になりすぎてしまい、解像度の低い状態から目標をメンバーに委譲出来ず「信頼」が出来ていなかったのだと思います。「自分が解像度を上げてチームに渡す」というやり方に慣れすぎてしまい「探索、発見、学習」の機会を奪ってしまっていました。より高い目標を目指せるチームになれていませんでした。

今回私は本書のコンテキストと似通った考え方でチームを変化させることが出来ました。道半ばではありますが。

はたしてどう変化するのか

上述したとおり「銀の弾丸」はありません。今置かれている環境をベースに「変えられるもの」「変えられないもの」をピックアップし、本書に書かれている物事の意図やコンテキストを理解し、変化を起こしていくしかなさそうです。私の場合は現状の環境を要素ごとに書き出してみました。

  • チームの人数

  • 持っている業務の種類

  • 目標の種類

  • チームの理想的な姿

他にもいくつかありますが、主だったのはこれらです。変化するべき所がぼんやり見えてきました。つまりこんな所です

  • 人数は小規模チームの方が「探索、発見、学習」がしやすい

  • 業務の種類は限定したほうが「探索、発見、学習」が深まりそう

  • 目標はチームごとに共有出来るほうが「探索、発見、学習」が共有できそう

  • 「探索、発見、学習」が細かく循環していれば日々強いチームになれそう

ここまで書いてふと気づきました。また全て自分が決める悪い手法になってしまっていると。ここから先はチームに話をして一緒に探索をしてみようと思い付きました。

チーム全員でチームの姿を「探索、発見、学習」

実際にはもう少し「こうするのはどうでしょう?」ぐらいまで解像度を上げてチーム全員で話をしてみました。解像度はチームのメンバーの特性やキャラクターに合わせて変化するのがいいと思います。
話をする時に私が意識したのは「全員が納得感を持って前に進める」「すべて決めた通りにするのではなく余白を持つ」という事でした。

結果は上々でした。まだまだ変化の途中ですが、「探索、発見、学習」のサイクルが生まれやすくなってきた実感があります。

私が感動したエピソードを1つ。
私のチームはスクラム的な開発手法を行っています。各スプリントの振り返り(スプリントレトロスペクティブ的なアレ)の時に個々のタスクに関する話ではなく、「チームのスクラムをどうしたらよいか」「どうなるとやりやすいか」というチーム視点での発言や相談が活発に行われていました。以前は個々の任されたタスクの範囲の話がほとんどで、チームの事を考えるのは私の役割が大きい状態でした。
これは驚くべき変化でした。きっとこれからも良い変化が起き続けるのではないかと感じています。

なぜ変化が起きたのか

まだまだどうなるかは分からないので、振り返り切れてはいません。現時点でこうではないかと思っている事を書き出してみます。

  • 全員で納得感を持って決めた事なのでコンテキストの理解度が高い

  • 余白を残しつつ相談して決めたので、当事者意識が高い

  • 意図を細かく話したので、既に権限を持っていて信頼していることを感じてもらえた(んだといいなあ)

簡単に言うとこういった形だと感じています。ここで言いたいのは「俺すごいぜ!」って話でも「うちのチームすごいぜ!」って話でもありません。

変化の素材がたくさん詰まっている良著

実は本を読んでから取り組んだ訳ではありませんでした。「変化を起こそうとしている」真っ最中で私は本書を手に取りました。変化がある程度落ち着いてから本を読み「これじゃん!もっと早く読めば良かった。」とショックを受けました。

変化を起こしたい人や、起こそうとしている人は是非一度読んでみてください。ヒントがあるかもしれません。
ページ数も少なく語りかけるような文体で書かれているため軽く読めるのでオススメです。

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